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zoom RSS The Heavens: The Heavens EP

<<   作成日時 : 2008/06/20 21:06   >>

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The Heavens: The Heavens EP
www.theheavensband.com

画像 リーズを拠点に活動するザ・ヘヴンズ(The Heavens)が、08年3月7日に発表した4曲入りのデビューEP。
 すでに音源の発表日からは多少の時間が経っているのだが、このタイム・ラグは、先日Phlow Magazineで紹介されているのを見て、つい最近になって、ようやくこのバンドの存在を知ることができたためである。そこに掲載されていたバンドの紹介文の小見出しは、「Good old Britrock」。つまり、古き良き英国ロック。そこに、90年代に空前のブームを巻き起こしたブリットポップの熱気が、生々しいロックン・ロールの息吹とともに戻ってきた、といった感じの論調の紹介文が続いていたと思う。普段ならば、今どきのヤングなロックなんて、どれもこれも似通ったものだろうと迷わずにスルーしてしまうところなのだが、その時だけは何かが違った。最近のロック・バンドというのは、意を決して手をのばしてみても、結局のところガッカリさせられてしまうことが圧倒的に多い。特に、英国出身のバンドには。だから、よほどのことがない限り手は出ないものなのだが、このヘヴンズには、どこか瞬間的に人をグッと惹きつけるような先天的な魅力が備わっていた、のかも知れない。気がつくと、Phlow Magazineの記事の中段部分に備え付けられていたプレイヤーで、このEPの収録曲をストリーミングで耳にしていたのである。そして、すぐさまその直感的な選択に寸分の狂いがなかったことを確信するにいたった。ヘヴンズのサウンドは、極めて個人的な古き良き英国ロックの嗜好のツボに、かなりバッチリとハマるものであったのだ。ツボにハマる音楽というのは、光速にも劣らぬほど瞬時にして琴線に響く。まさに、電光石火であった。
 ヘヴンズとは、ヴォーカルとギターを担当するリチャード・グリーン(Richard Green)を中心として結成されたグループのようである。そして、この“The Heavens EP”には、ドラムスにケリー・ハリソン(Kerry Harrison)、オルガンとキーボードにボブ・バーチ(Bob Birch)といったメンバーが参加している。だが、ベースの担当は曲によって、アンディ・ダガン(Andy Duggan)、ロバート・シンプソン(Robert Simpson)、そしてヴォーカルのグリーンと完全にまちまちであり、まだまだパーマネントなメンバーは基本的に確定されていないような印象がある(一曲のみにコーラスで参加しているデイヴィッド・オドネル(David O'Donnell)という人物のクレジットも確認できる)。いや、もしかするとヘヴンズとは、俗にいうバンドではなく、中心人物のグリーンを軸にしたユニット的な側面をもつプロジェクトなのかも知れない。もしくは、現時点ではまだ様々なタレントを曲のスタイルごとに適材適所的に起用し、バンドの完成形となるメンバー構成を模索している途上にあるということなのか。いずれにせよ、ヴォーカルのグリーンが納得できる人材が集結した時点で、ヘヴンズのパーソネルは、ひとまずは落ち着くことになるのであろう。ちなみに、現在のヘヴンズのライン・アップは、ヴォーカル兼ギターのグリーン、“The Heavens EP”ではベースを弾いていたシンプソンがギターとオルガンを兼任し、ベースにスティーヴ・ワード(Steve Ward)、ドラムスにデイヴ・フェアブラザー(Dave Fairbrother)という4人組となっているようだ。現時点では、08年7月4日にリーズのThe Brudenell Social Clubで行われるデビュー・ライヴに向けたリハーサルを重ねながら、地力と演奏力を兼ね備えたバンドの形態へと精製されてゆく真っ最中にあるようである。こうした前後の状況から察すると、この“The Heavens EP”とは、極めて初期のヘヴンズによるデモ作品と位置づけられるものといえるであろうか。
 リチャード・グリーンは、90年代後半からウルトラサウンド(Ultrasound)やザ・ソマティックス(The Somatics)というグループを率いて音楽活動を行ってきた華々しい経歴の持ち主であり、リーズのインディ・ロック・シーンでは出世頭的な、非常によく知られた存在であるらしい(ウルトラサウンドは、スウェード(Suede)を輩出したNudeよりアルバムを発表している)。そんなグリーンが新たなプロジェクトを立ち上げたとなれば、長年に渡ってレコーディングにリハーサルにと何かと懇意にしてきたであろう地元リーズのレコーディング・スタジオとしても、それを看過してしまうわけにはゆかないはず。そこでリーズのAttic Studioにおいて、プロデューサーのリッキー・スパングルス(Ricky Spangles)を迎えて、グリーン率いるヘヴンズは、デモ音源の録音を敢行した。それが、この“The Heavens EP”である。このレコーディング・セッションに参加しているオルガン奏者のボブ・バーチは、おそらく、リーズが生んだディープ・ファンク・シーンの雄、ザ・ニュー・マスターサウンズ(The New Mastersounds)のメンバーとして99年の結成以来、オルガン兼ピアノ奏者として大活躍をしてきたボブ・バーチその人であろう。このデモ録音のセッションにおいても、バーチの卓越した鍵盤さばきには、全くもって目を見張るものがある。どこまでも渋く、決して目立ちすぎることなく、確実にサウンドの背景で存在感のあるうねりをもって鳴り、バッチリとツボにハマったいい仕事をし続けている。バーチのオルガンが、ヘヴンズのグルーヴィなロック・サウンドに、いくぶんかのリッチな厚みとコクのある味わいを与えていることは間違いないところであろう。これが、ただのデモ録音音源だからといって、最初からなめてかかってはいけない。“The Heavens EP”を甘くみすぎていると、必ずやバーチの猛烈なオルガン演奏にガツンと吹っ飛ばされることになるであろう。
 たぶん、一番最初にストリーミングで聴いたヘヴンズの楽曲は、“The Heavens EP”の2曲目に収録されている“This Beautiful Machine”ではなかったかと記憶している。一連の音漁りを目的としたサイト巡回作業の中で、あちこち斜め読みをしながらチェックを繰り返している際に、本当に何気なく聴いてみただけだったので、完全に曲のタイトルなどは事前に気にも留めていなかったのである。第一印象は、ワン・サウザンド・ヴァイオリンズ(One Thousand Violins)のサウンドを大人っぽく成熟させて、そこにモダンなソウルの要素を隠し味的にまぶしたような感じか、といったものであった。思わぬ場面で唐突に脳裏に蘇ってきたワン・サウザンド・ヴァイオリンズのサウンドの記憶を懐かしみながら、しばらくヘヴンズの楽曲に聴き入っていると、どうにもこうにも、この新しいバンドの存在が気になって仕方がなくなってきた。あの素晴らしいワン・サウザンド・ヴァイオリンズを瞬時にして思い起こさせてくれるなんて、これはちょっとタダモノではないのではないか、と。そして、次の瞬間には、すでにリリースされているらしいヘヴンズの4曲入りEPのダウンロードを決意していた。そうして、あらためてジックリと聴いて吟味してみたヘヴンズが奏でるサウンドは、やはりなかなかにシッカリとした深みのある魅力をたたえたものであった。ドッシリと地に足をつけていながらも華麗に溌剌と弾ける、ちょっぴりオトナなポップ・センスと、最盛期のザ・マイティ・レモン・ドロップス(The Mighty Lemon Drops)あたりを彷彿とさせる瑞々しいメロディの奔流を満載した、最も良質な部類に属する正統派の英国ロック。60年代のブリティッシュ・インヴェージョンの時代から脈々と受け継がれる、適度な甘みとスッキリとしたキレをもつ英国ロックに特有の歯切れよく小気味よいメロディ感覚が、ヘヴンズの楽曲の中にもハッキリと感じ取れたのである。そしてまた、80年代のニュー・ウェイヴからネオ・アコースティック〜ネオ・サイケデリック、マッドチェスター、そして90年代のブリット・ポップ全盛時代へといたる流れの中で、リヴァプールやマンチェスターなどの英国北部の音楽都市から登場した数々のグレイトなバンドたちから、光り輝く部分を少しずつ寄せ集めてきて、巧妙にキラキラと煌めく音作りや雰囲気作りを行えている感じが、ヘヴンズには大いにあったりする。多くの先人たちによって開拓され蓄積されてきた伝統の英国ロックのサウンドに、とても巧みな処理を施し、非常に上質なヘヴンズ流儀の楽曲へとまとめあげているのだ。ヘヴンズは、そうした編集感覚に実に長けた器用なバンドである。厳密にいえば、そこには、取り立てて斬新さも目新しさもないかも知れない。しかし、長年に渡り培われてきた英国ロックのコクや深みが、そこからはそこはかとなく滲みだしているような気もする。さらにまた、このヘヴンズの音楽性に関しては、ソウル・ミュージックの要素の取り込み方にも、かなり優れたものを感じずにはいられない。80年代の英国の音楽では、音楽的な幅を求めてソウルやジャズなどの要素を取り込もうとする際に、恐ろしく不器用にモロにそのままの形でなぞってしまったり、元々の素姓を置いてけぼりにして薄味のブルー・アイド・ソウル路線に走ってしまったりと、対象との距離の置き方や音作りのさじ加減の部分で完全に足元を見失い、極端な形へと傾いてしまうケースが極めて多かった。だが、90年代のブリット・ポップ以降の英国ロックというのは、この点においては、驚くほどにスマートに洗練を遂げてきた(80年代後半に勃興したレア・グルーヴ・ムーヴメントからの影響も大きいのかも知れない)。伝統的な英国ロックのサウンドに、本当にうまいことサラリと渋いソウル感が忍ばされるようになったのである。こうした巧みなくすぐりには、人間の耳というのは実に弱い。ヘヴンズの楽曲は、こうした弱点の数々を決して逃すことなく的確に突いてくる。そんな全くもって抜け目のない音楽性をヘヴンズは有しているのである。
 “The Heavens EP”の1曲目は、“Second Day Blues”。タイトルはブルースとなっているが、実際にはトロトロのサイケデリックな味付けが心地よいミドル・テンポのグルーヴィなロッカ・バラッドである。哀愁のメロディと甘いコーラス・ワークに、圧倒的なまでの王道感が煌めく。楽曲の終盤では、往年のギター・ヒーローたちの魂が次々と降臨して炸裂している。2曲目の“This Beautiful Machine”は、まさにワン・サウザンド・ヴァイオリンズばりにバリバリの60年代リヴァイヴァル路線を一気にひた走る、疾走感満点なギター・ポップの秀曲。この曲のイントロ部分を聴いただけで、瞬殺気味にノック・アウトされてしまう人は決して少なくはないであろう。キラキラと煌めく、最強のキラー・チューンである。3曲目は、80年代のネオ・アコのスタイルを色濃く踏襲している、泣かせるメロディや泣かせるコーラスや泣かせるギター・プレイや泣かせる展開などの染み入るツボが目白押しの猛烈な胸キュン・ソング“If You're Lost For Somewhere Else To Be”。これは、ある意味、メロディアスなブリティッシュ・ビートの王道をゆくような楽曲である。思わず涙がちょちょぎれそうになるポイントが満載だ。4曲目の“Echo Serena”は、フガフガのファズ・ギターで幕を開ける、ややゴリゴリとしたノリも見受けられるウネウネなネオ・サイケデリック・チューン。揺らめくような浮遊感をたたえた抜群のメロディの応酬を、迫真のエキゾティシズムにあふれるパーカッションやギター・ソロが、サイケに彩りあげてゆく。これもまた間違いなく英国ロックのディープな系譜に属する流れを受け継いだ音である。全4曲、一応駄曲はひとつもない。どれもこれも鮮烈に炸裂する素晴らしい出来映えの楽曲ばかりだ。
 しかしまあ、ヘヴンズ(つまり、中心人物のリチャード・グリーン)による、古き良き英国ロック・サウンドの全てのおいしい部分だけを見つくろってきてひっくるめたかのようなリヴァイヴァル路線は、実に巧妙なものである。キッチリと伝統のスタイルを受け継ぎ、旨味成分のみを抽出してブレンドし、最上級のパリッとした英国ロックを鳴らしてみせる。サイケデリックな要素の思いきり堂に入った打ち出し方などからは、60年代以降の本当に様々なものをよく聴き込み、熱心に研究をしていることが明白なまでにうかがえる。また、その楽曲自体の成熟具合にも相当なものがある。細かな展開や構成の妙など、ほぼポップスとして一分もぬかりのないものに仕上げられているのだ。実際、グリーンは、90年代から活躍する実は長いキャリアをもつアーティストだから、それなりに音楽的に成熟しているのも当然といえば当然であろう。しかしながら、それにしても、このヘヴンズの楽曲群において確認できる成熟度には、すさまじいほどに格別なものが備わっていたりもするのである。だが、このままの勢いを維持して、今後もヘヴンズが快進撃を続けてゆけるかどうかは、まだハッキリとは見えてこない。“The Heavens EP”に収録された4曲だけで、輝かしい未来が一気にひらけてしまうほど、この世は天国のような場所ではないのである。ただ、ヘヴンズが最初に録音した4曲は、驚くほどに高品質なものであった。ここには疑問をはさむ余地は全くない。問題は、この極めて高度なレヴェルが、次からも安定してキープしてゆけるかどうかだ。それが継続できた時、初めてヘヴンズの評価は確定するはず。まあ、個人的には、大いに期待してゆきたいグループではある。なんとなく、より深く60年代の英国ロックやサイケデリック・ロックのリヴァイヴァルの方面へと没入してゆきそうな気配が、すでに濃厚に漂い出し始めていたりもするのだが。はてさて、このリーズが生んだ新たな星は、進路を誤らずに時代をとらえ、天高く昇りつめ、燦然と輝きを放つことができるであろうか。(08年)

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