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zoom RSS David D'or: Yad Anugah

<<   作成日時 : 2007/12/06 16:26   >>

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David D'or: Yad Anugah
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画像 イスラエルの国民的人気シンガーであるデイヴィッド・ドール(David D'or)。現在はジューイッシュ・ミュージック界を代表する大御所の音楽家として、ポップス、クラシック、フォークと幅広いスタイルの活動を行いスターの座に君臨しているドール。そんな彼が、92年にリリースしたダンス・シングルが“Yad Anugah”である。これは91年にイスラエルで発表されたデビュー・アルバム『David D'or』に収録されていた楽曲であり、古くからイスラエルの地で歌い継がれてきたトラディショナル・ソングであるという。国外向けに発表されたインターナショナル版のアルバムでは、この楽曲には“Tender Hand”という英題がつけられている。たぶん、おそらくそれそのものな、神や母などの大いなる者の手で優しく包み込まれる救済や癒しについて歌った楽曲なのであろう。朗々と女性歌手がヘブライ語で歌い上げるオリジナル・ヴァージョンは、歪んだエレクトリック・ギターや太いベースをフィーチュアしたバンド編成でのアレンジとなっているが、のったりとしたペースで刻まれるビートは、ほとんどトラッドの範疇をハミ出さず、伝統音楽の枠をブチ壊さない程度のもので、決してノリノリのダンス・サウンドとなっているわけではない。しかしながら、本シングルのジャケットに貼られているシールには、デカデカと「イスラエルで第1位になったダンス・ヒット」と謳われているし、本盤に収録されているオリジナル・ミックスの名称もOriginal Massivo Israeli Hit Mixとされている。イスラエルの人々は、この現在風にアレンジされた民謡でユッタリとダンスに興じたのであろうか。まあとにかく、この“Yad Anugah”(“Tender Hand”)が、若き日のドールの大ヒット曲/ダンス・ヒットであったことだけは間違いないようである。
 92年、UKのMagnetから“Yad Anugah”のリミックス盤がリリースされた。ここで、バンプという若い2人組のプロデューサー・ティームの手により、イスラエルのトラディショナル・ソングはいきなりプログレッシヴ・ハウスに大変身することになる。ユッタリとしたスパンでウネウネを繰り返すアシッド・ハウスをブレイクビーツと合体させ、タフで空間的な広がりのある完全レイヴ仕様のものへとリフォームを施されたサウンド。そこに細切れにサンプリングされた女性歌手の声がリズミカルに響き続け、オリジナルのヘブライ語のヴォーカルが享楽的なプログレッシヴ・ハウスのビートにのる。ただ、唯一の救いがあるとすれば、これがかなり初期のプログレッシヴ・ハウスで、ハードコアなブレイクビーツを基本とした単なるお祭り騒ぎを煽り立てるためだけに乱造されていたレイヴ・ミュージックとは、まだ微かながらも明確に線引きがなされていた時期の作品であったという点であろうか。かなりBPMは抑えめで、なかなかに上品な感じなども併せ持つダンス・リミックスに仕上がっている。もしかすると、このバンプによるリミックスが逆輸入の形でイスラエルの地に上陸し、ダンス・チャートで第1位を獲得したのではないだろうか。オリジナル版とは多少異なるタッチのプログレッシヴ・ハウスな“Yad Anugah”が大ヒットを記録してしまい、まだまだデビューしたての新人であったドールも、ちょっと複雑な心境だったかも知れない。
 そんな欧州やイスラエルでのヒットの噂を聞きつけて、USのレーベルも遅れをとるまいとモゾモゾと動き出すことになる。そして、92年、Big Beat傘下のTurnstyleより、さらなるリミックス盤が登場する。それが本盤である。ここで新たにリミキサーに起用されているのは、ネルソン“パラダイス”ローマン。90年代初頭のNYのアンダーグラウンドなディープ・ハウス・シーンを代表するプロデューサー/リミキサーのひとりであるローマン。この人選は、かなり渋い。はっきり言って、ド渋だ。ローマンのリミックスは、ドールによるオリジナル作品の音の素材を忠実にミックスし直して、ダンス〜クラブ・サウンドとして機能させるために太さや厚みなどが足りていない部分にアディショナルなプロダクションを付け加えた作品となっている。ドラムのビートを中心にリズムを強化し、ローマンの得意技である浮遊感のあるシンセのフレーズで、ミステリアスな中近東の風合いをトラックの周辺にモワレ状に漂わせる。オリジナル版のイスラエリアンなトラッドのビートにそのまま正統派ダンス・サウンドを上書きしたようなTender Mixと、トラックをNY風のモッサリとしたブレイクビーツに差し替えたSlap Mix。ここには、そんなローマンによる2タイプのリミックス・ヴァージョンが収録されている。ビートが異なるだけで、あまり両者の全体的なサウンドの雰囲気に大差はない。できることなら、ローマンによる完全なるNYスタイルのディープ・ハウスをバッチリとキメたリミックスも聴いてみたかったような気もするが…。
 07年、デイヴィッド・ドールは25周年を迎えた記念の年のWOMADのステージにピーター・ガブリエルやティナリウェンなどとともに出演し、ロンドンとシンガポールでパフォーマンスを行っている。そんなイスラエルの音楽界を代表するシンガーの若き日のダンス・シングル“Yad Anugah”。本人ももう、かつてUSの小さなレーベルからこんな盤が出ていたことなんて、忘れてしまっているかも知れない。たぶんすっかり忘れているだろう、きっと。15年もの年月があれば、遠い異国の地でリリースされた一枚のダンス・シングルのことぐらいキレイさっぱり忘れ去るなんてこと、恐ろしく容易いことに違いない。だが、本人が忘れていようが、そんなの関係ない。こっちは、時々引っ張り出してきてはターンテーブルに載せてゆくつもりだ。しかし、この“Yad Anugah”でヴォーカルを担当している女性歌手は、いったい誰なのであろうか。艶っぽくて伸びやかでハリがあり、非情に素晴らしい歌声であるのだが。

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