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zoom RSS 新しいポップ文化とカワイイ感覚〈序説〉(二)

<<   作成日時 : 2012/09/23 23:00   >>

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新しいポップ文化とカワイイ感覚〈序説〉

(二)

10年代のK-POPとカワイイ

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きゃりーぱみゅぱみゅの“PONPONPON”は11年の夏にリリースされ、スマッシュ・ヒットを記録している。これに対応するような動きを時期的な同調性を意識しつつK-POPのシーンを眺めてゆくと、やはりどこか新感覚なポップでおもしろい言葉の使い方がなされた楽曲が、昨年あたりからちらほらと頻出していたことにあらためて思い当たったりする。

まず、その歌詞に登場するフレージングのユニークすぎるおもしろさで際立っていたのが、ガールズ・デイ(Girl's Day)の“Twinkle Twinkle”である。この五人組のガールズ・グループが一躍ブレイクするきっかけを掴んだ大ヒット曲は、11年3月18日に配信シングル“Girl's Day Party #3”の収録曲としてリリースされている。原題は“반짝반짝”であり、読みは「パンチャパンチャ」。これを、日本語にすると「キラキラ」という意味になる。楽曲は、そのタイトル通りにキラキラと溌剌に弾ける王道のアイドル・ポップスであり、少し年上の男性に恋する女の子のドキドキと高まる胸の内が絶妙な切迫感をもって歌われてゆく。
そんなドキドキと切迫する恋する気持ちが非常によく伝わってくる、素晴らしく斬新な表現を聴くことができるのが、サビの前に繰り返し登場するパートである。ここで歌われる歌詞は、「하지마 하지마 마마마마마마마마/가지마 가지마 마마마마마마마마」(ハジマ ハジマ ママママママママ/カジマ カジマ ママママママママ)という語尾の「마」(マ)だけを伸ばすように繰り返す、ユニーク極まりない形態をもった言葉である。日本語にすると、「やめて やめてよぉぉぉぉぉぉぉぉ/行かないで 行かないでぇぇぇぇぇぇぇぇ」といった感じになるのだろうか。好きな人に近づいて欲しくないのか、近くにいて欲しいのか、どちらなのか全くわからない。ここでは、恋する乙女の揺れる胸の内が非常にコミカルかつ浮き足立つような少女マンガ風の歌詞/言葉で見事に表されている。
そして、これに続くサビの部分でも「슬쩍슬쩍」(スッジョクスッジョク)や「반짝반짝」(パンチャパンチャ)といった、「こっそりこっそり」や「キラキラ」という意味の繰り返しの言葉が効果的に盛り込まれている。これ以外のパートでも、この楽曲の歌詞には「어쩜어쩜 어떡하면」(オッチョンオッチョン)、「몰라몰라」(モッラモッラ)、「웃지마 웃지마」(ウッジマウッジマ)といった繰り返しの言葉が多用される。それぞれの意味は、「どうしてどうして」、「知らない知らない」、「笑わないで笑わないで」といった感じになる。これらはいずれも、恋に沸き立ちワクワクソワソワしてしまう気持ちの落ち着かなさを、実に明快に表現しているものといえるだろう。
ガールズ・デイの“Twinkle Twinkle”は、ポップでダンサブルな楽曲にノリのよい言葉の繰り返しフレーズを連発して組み込み、より楽曲の楽しさを倍増させた成功例のひとつといえる。王道感のある盛大にシンセのフレーズが轟くダンス・ポップな曲調に、とてもチャーミングで個性的な動作の振り付けが非常にマッチしていた点も、この楽曲に多くの人気が集まったひとつの要因でもあった。やはり子供たちが一緒になって真似して踊りたくなるような楽曲は、かつてのピンクレディなどの例を持ち出す間でもなく幅広い層に受け入れられるヒット作となりやすい。この楽曲以降のガールズ・デイは、そうした子供たちの間での人気を繋ぎ止めるようなよりポップで分かりやすいスタイルのアイドル歌謡曲路線へと突き進んでゆくことになる。

こうした言葉の意味よりも語の連なりの語感のよさやリズミカルなノリの楽しさを優先させた楽曲で思い浮かんでくるものは、まだまだある。11年1月4日にリリースされた六人組ガールズ・グループ、ダル・シャーベット(Dal★Shabet)のデビュー曲“Supa Dupa Diva”は、そのうちのひとつだ。00年代後半のK-POPの新しい潮流を生み出した革命的ヒット・メイカー、E-Tribeがプロデュースを手がけたこの楽曲は、ノリのよいエレクトロニック・ビートにのって跳ねるように歌い踊る六人の華やかな女の子の魅力を大いにアピールするようなキュートなダンス・ポップ曲であった。
この楽曲のサビの部分では、「Supa-pa Dupa-pa Supa Dupa LaLa/Diva-va Diva-va Supa-Boom/Supa-pa Dupa-pa Supa Dupa LaLa/Diva-va Diva-va Supa-Boom Boom Boom Boom」といったフレーズが繰り返し歌われている。楽曲中で最も重要なパートであるはずなのだが、ここでは歌詞の言葉の意味といったものは、ほとんど度外視されている。何か意味のあるようなことは何一つとして歌われていないといってもよいだろう。ただ何となくノリのよい言葉を語感よく積み重ね並べ立てているだけの、非常に感覚的で直感的なサビのフレーズなのである。ここまでくるともう、元気よく溌剌とリズミカルにダンスするための景気づけの掛け声のようですらある。
ただし、楽曲のサビのパートを意味不明な言葉や意味のないフレーズで構成する様式は、実はダンス系のアイドル・ポップスを得意としているE-Tribeの常套手段でもある。そこでは、楽曲のうちで最も盛り上がるべきパートで何かしら意味のあるようなことを歌うよりも、楽曲全体をよりグルーヴィなものにするためのイヤ・キャッチーなフレーズをサウンドの流れと融合させることのほうが優先されるのだ。
これは、音楽プロデューサーならではの立場から、かなり意図的に楽曲やサウンドの魅力を最大限に引き出す効果を狙って考案された戦略であるようにも思われる。こうした楽曲には、一度耳にしただけで頭の中にこびりつき、一緒に口ずさんで歌いながら踊り出したくなるような魅力が、確実にある。特に、その楽曲の中心であり、頭の中で何度もリフレインして止まらなくなるサビの部分には、かなり意図的に強烈なインパクトのあるフレーズが仕込まれる。それはもう、ただ聴くだけでなく、一緒にそのインパクトを楽しむための楽曲ともなる。歌とダンスを共有し、その音・音楽に対する共感・共鳴を楽しくおもしろいレヴェルへと開くことで、言葉の面でもサウンドの面でも新感覚をもつアイドル・ポップスは、さらに大きな可能性をもつフェイズへと突入してゆく。そして、そうした音と音楽を媒介とした新しい時代のグローバル・ティーンズの同世代間での繋がりが、様々な層からなる遠大なネットワーク上に蔓延してゆくことになるのである。
ダル・シャーベットは、デビュー曲“Supa Dupa Diva”を発表した時点から、その一聴するとムチャクチャなサビのパートの様式をもつ楽曲で、新しい世紀の新しい世代のための新しいポップ・ミュージックを歌い踊るアイドル・ガールズ・グループであることを高らかに宣言していたといってもよいだろう。

11年にデビューした新人ガールズ・グループといえば、E-Tribeが手がけたダル・シャーベットのデビュー(1月)に続いて、4月19日に七人組のエイ・ピンク(A Pink)が可憐にデビュー作“Seven Springs of A Pink”を発表している。この両グループはともにデビューからヒット曲を連発し、11年の新人アイドルの中では双璧をなすほどの高い人気を獲得することになる。
そんなエイ・ピンクであるが、最近のヒット曲のタイトルを見てゆくと「マイマイ」(“My My”)、「ホッシュホッシュ」(“Hush Hush”)、「ブビブー」(“Bubibu”)といった具合に、とても可愛らしい響きをもつ語の反復をサビの決めフレーズとしている楽曲ばかりなのである。これは、実に気になる傾向である。
エイ・ピンクは、清純で可愛らしい超正統派のアイドル路線を一貫して突っ走っているグループである。それぞれの個性を強く打ち出す今どきの強気なガールズ・グループが林立するただ中にあっては、逆に際立つ個性となるような、清廉かつ可憐な透明感のあるカラーを七人全体で意識的に作り出しているのだ。つまり、少々古風なほどのカワイイの要素を追求し、その本質的な揺るぎなきアイドル性によって支持されているのがエイ・ピンクなのである。そんな彼女たちの歌う楽曲であるから、とにかく上品な可愛らしさであれば何でもエイ・ピンク流儀に取り込んでしまおうという部分は確かにある。その結果としての表れが、“My My”や“Bubibu”といった一連の可愛らしい楽曲であったことは間違いないところであろう。そこには、実に分かりやすい可愛らしさがあり、直感的に感覚を共有できるような可愛い語の響きがあり、一緒に口ずさみながらダンスし楽曲の可愛さと一体化したくなるような魅力がある。エイ・ピンクの楽曲は、そこに盛り込まれた猛烈なカワイイ要素によって、周囲にもカワイイを伝染させるような威力をもっているのである。
そうした可愛らしさを第一にした楽曲のサビのパートでは、特に何かの状態を詳しく説明するように歌うよりも、キュートな響きをもつフレーズを可愛らしい歌声で繰り返しているだけのほうが、さらに楽曲の破壊力が高まるということもある。エイ・ピンクは、そうした王道のカワイイ路線を意図的に楽曲のフックに仕込むことにより言葉を越えたレヴェルの交流にまでカワイイを高めつつ突き進んでいる。究極のカワイイは、もはや理屈では追いつかないものであろうし、言葉で全て説明できるものですらない。そんなエイ・ピンクの可愛らしさが最大限ににじみ出す瞬間が、可愛らしいアイドル・ポップスの可愛らしい歌詞のサビのフレーズの響きに凝縮されているのである。

エイ・ピンクが発表してきた楽曲の中でも、そうした言葉遣いの可愛らしさが際立っていたヒット曲といえば、デビュー作の“Seven Springs of A Pink”に収録され、その後の6月30日にリミックス・ヴァージョンでシングル・カットされた“It Girl”が挙げられるだろうか。
ここではガールズ・デイの“Twinkle Twinkle”と同様に、反復して重ねられる言葉/語を発声することによって恋する乙女の揺れ動く感情を表現する技法が用いられている。“Twinkle Twinkle”のヒット以降もはやアイドル歌謡における常套句となりつつある「キラキラ」を意味する「반짝반짝」(パンチャパンチャ)は言う間でもなく、「知らない知らない」の「몰라 몰라」(モラモラ)や「ドキドキ」の“두근두근”(トゥグントゥグン)、さらには「すべすべ/ふわふわ」の“뽀송뽀송”(ポソンポソン)、くすぐったい状態を表す“간질간질”(カンジルカンジル)など、繰り返し言葉がとても可愛らしく曲中に繰り返し登場するのである。
そして、このような可愛いフレーズの中でも強烈なまでに必殺の破壊力を備えていたのが、サビのコーラスで登場する「부끄부끄」(プクプク)(意味は「照れ照れ」)や「내꺼 내꺼 내꺼」(ネコネコネコ)(意味は「私のもの私のもの私のもの」)であった。人形のようにキュートなお嬢さま系のガールズ・グループが、ほんわかしたレゲエ調のポップ・エレクトロ・サウンドの楽曲で「プクプク」「ネコネコ」と歌いながら可愛らしくダンスしていたら、それはもうほぼ反則技といってもよいくらいである。ほとんど言語のレヴェルを完全に超越したカワイイを最高の強度で表現しきった楽曲として、エイ・ピンクの“It Girl”は、日本におけるきゃりーぱみゅぱみゅの“PONPONPON”と同種のレボリューションを巻き起こしたといってよいだろう。新しい世紀の新しい世代のための新しいカワイイは、「ぽんぽん」「うぇいうぇい」や「プクプク」「ネコネコ」といった歌のフレーズとともに光速で伝播しローカル・シーンの枠を越えて拡大・拡散してゆくのである。

94ライン

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ガールズ・デイ、ダル・シャーベット、エイ・ピンクという、ここで取り上げてきた若手ガールズ・グループには、実はある共通する部分がある。それは、それぞれのグループの中心的なメンバーや最も可愛がられるマンネ(末っ子/最年少メンバー)に、94年生まれのメンバーが所属しているというということ。つまり、これらのグループは、韓国の歌謡界で注目を集める94lineと呼ばれる世代のメンバーを擁する、新しい世代のアイドル・グループの一大勢力の一角を担う存在となっているのである。
ガールズ・デイには、94年6月9日生まれの末っ子のイ・ヘリ(Lee Hye Ri)がいる。ヘリは、妹系の可愛らしいルックスで人気を集めるだけでなく、すでに音楽番組の司会なども経験しており歌とダンスだけでない多彩な才能の片鱗を垣間見せてくれている。
ダル・シャーベットでは、94年2月12日生まれのチョ・スビン(Cho Subin)が、この新しい世代に属す逸材である。スビンもまたグループの中では末っ子であるが、その高い身長(公称174センチ)とスタイルのよさからヴィジュアル面ではメンバー中でもトップの存在感をもち、比較的に安定した歌唱力ゆえに楽曲のパフォーマンスにおいてはセンター・パートをつとめることも多い。また、スビンの非常にユニークなキャラクターは、サブ・パーソナリティをつとめるラジオ番組やヴァラエティ番組への出演時にひと際光彩を放ち、その幅広い人気の一因ともなっている。
エイ・ピンクには、ふたりの94lineがいる。94年2月10日生まれのソン・ナウン(Son Na Eun)と9月22日生まれのホン・ユギョン(Hong Yoo Kyung)が、これに該当する。このふたりは、ともに高身長で非常にスタイルがよく、ルックス面でもヴィジュアル面でもグループの中心的な位置を占めている。どちらかというと前に出しゃばってくるようなことはあまりなく、大人しめで淑やかなタイプのふたりだが、清純なお嬢さま系アイドル・グループというコンセプトのエイ・ピンクにおいては決して欠くことのできない個性だといえるだろう。七人のメンバーのうちでも最もエイ・ピンクらしいエイ・ピンクのメンバーが、このナウンとユギョンなのだ。ちなみに、最近髪を短く切ったユギョンがキュートに英語の語りを入れるのが、エイ・ピンクの楽曲のひとつの定番のスタイルにもなりつつある。

この94年生まれのアイドルたちを韓国の歌謡界とそれを取り巻くメディアでは94lineと名付け、ある種の特別視をしているともいえる。なぜライン(Line)なのかというと、この年代のアイドルは中学や高校に通いながら芸能活動を行ってきている世代であり、普段は同級生やクラスメイトとして一緒に学校での時間を過ごすことも多く、所属するグループの枠を越えた横の密接な繋がり(ライン)があることに起因しているようだ。また、この学校に通いながら芸能活動を行っている94lineの面々には、アイドルになる以前からジュニア・モデルや子役などとして活動を行っていたものが多い。こうした部分も94lineの特徴のひとつであろう。まだ10代であるが、そこそこ芸歴は長く、芸能界での活動にも慣れ親しんでいるのだ。そして、そのようなモデルや子役やアイドルたちが、比較的に芸能活動と学業の両立がしやすい芸能や芸術関係の専門クラスのある高校を選択して通うことで、そこにクラスや学年の中での芸能仲間としての横の繋がりが生まれることにもなるのである。
この94lineと呼ばれる新しい世代のアイドルたちは、00年代後半以降の多くのガールズ・グループがひしめき合いほとんど飽和状態にある韓国歌謡界/アイドル界が、さらなる新しいタレントを求めてデビュー時期を全体的に低年齢化させていったことによって生み出された世代だともいえるだろう。今や中学生のメンバーを含む新人グループがデビューすることも、決して珍しいことではない。ただし、エイ・ピンクの末っ子、オ・ハヨン(Oh Ha Young)などは(96年7月19日生まれ)、デビュー時にはまだ14歳の中学生であったのだが、メンバー中でも最も身長が高くルックスも非常に大人びた美人であったりするから困ったものである。自分より5歳近く年上の大学生のお姉さんメンバーと一緒にいても全く違和感を感じさせないのだから驚きである。最近のガールズ・アイドル・グループのマンネは、まさに恐るべき子供たちばかりなのだ。

最も早い時期に注目を集めた94lineのメンバーは、KARAの末っ子、カン・ジヨン(Kang Ji-Young)であったと思われる。08年にグループの新加入メンバーとしてデビューした時点では、ジヨンはまだ14歳の中学生という幼さ(94年1月18日生まれ)であった。そして、その幼さゆえに10年に発表された“Mister”での客席やカメラに背を向けて腰を左右に揺らす振り付けが、メンバーの年齢にそぐわないものとして問題視されることにもなった。だが、こうしてメディア報道などで大きな話題となったことで、“Mister”の「お尻ダンス」は社会現象にまでなる大流行へと繋がっていったのである。新メンバーの加入とともに五人組グループとなった新生KARAは、ようやくコンスタントにヒット曲に恵まれるようになり遂に韓国歌謡界での大ブレイクを果たすことになる。
こうした00年代型の王道のアイドル・ポップ/アイドル歌謡路線を開拓するKARAや少女時代による活躍に力強く牽引されて、09年あたりから新韓流のK-POPブームに本格的に火がつきはじめる。すると、そのアイドル歌謡のステージに新規参入してくるガールズ・グループが続々と絶え間なく毎月/毎週のようにデビューを飾るという華々しい流れが、いつの間にか出来上がることにもなった。そして、この集中的にガールズ・グループが林立してゆく時期に、若き94lineのメンバーたちがその輪を大きく広げてゆく動きにもさらに拍車がかかっていったのである。
09年5月には、四人組ガールズ・グループ、2NE1の末っ子として、94年1月18日生まれのコン・ミンジ(Gong Min ji)がデビューしている。その翌月の6月には、五人組ガールズ・グループ、4ミニッツ(4minute)の末っ子として、94年8月30日生まれのクォン・ソヒョン(Kwon So Hyun)がデビュー。そして、その後の9月には、前述のf(x)がデビューしており、ここにはソルリ(Sulli)ことチョ・ジンリ(Choi Jin-Ri)(94年3月29日生まれ)と末っ子のクリスタル(Krystal)ことチョン・スジョン(Jung Soo Jung)(94年10月24日生まれ)というふたりの94lineのメンバーが所属している。さらに、翌10年の6月には、四人組ガールズ・グループ、miss Aの末っ子として、94年10月10日生まれのペ・スジ(Bae Su Ji)が15歳でデビューしている。

ここまで94年生まれのアイドルたちが次々と登場し活躍し始めると、やはりメディアとしてもこれは放ってはおけなくなるというものであろう。彼女たちに94lineという名前が冠せられ(もしくは、KARAのジヨンやf(x)のソルリの周辺の仲良しグループが自らそう名乗ったのであっただろうか?)、その一群の存在は一躍大きな注目を集めるようになってゆく。その決定打となったのは、やはり15歳とは思えぬ大人びた端正なルックスのスジの鮮烈なデビューであった。いわゆる、新韓流の第一世代(少女時代やKARAなどの先行グループ)に続いて、10年代という新しい時代のアイドル文化を切り拓いてゆくのが、この94lineのメンバーたちからなる黄金の世代であるという位置づけが、この頃からいつの間にかなされるようになってきていたのである。

この後にもガールズ・グループのデビュー・ラッシュは止まるところを知らずに継続し、前述のガールズ・デイ、ダル・シャーベット、エイ・ピンクといったそれぞれのグループに所属する94年生まれのメンバーが、この94lineの一群に新たに名を連ねることになった。ただ、それ以降にも94年生まれのアイドルたちは、まだまだ続々と増殖をしているのが現状である。
まず、11年にデビューしたガールズ・グループのCHI-CHIには、94年8月5日生まれのスイ(Sui)ことキム・ソリ(Kim Sori)がいる。元々、六人組としてデビューしたCHI-CHIにおいて、スイは美形の愛らしい末っ子というポジションであった。だが、その後にグループから三名のメンバーが脱退するとともに新たに二人のメンバーが加入するという編成の大きな変化があり、五人組グループとして再出発することになるのだが、この際にオリジナル・メンバーの中から新たにスイがリーダーに推挙されている。こうした動きによって、スイは現在のCHI-CHIにおいて末っ子でありながらもグループのリーダーをつとめるという、これまでにあまりなかったような役割を担っているのだ。94lineでグループのリーダーをつとめているのは、今のところスイだけであろう。それくらいに、このマンネは、どこにいてもまず目につくような華やかなルックスの持ち主であり、グループの顔となる中心的なメンバーなのである。

さらに最近では、既存のグループの新規加入メンバーとして94年生まれの黄金世代が登用されるケースも目立ち始めている。
12年5月、アフタースクール(After School)の六期メンバーとして、94年8月20日生まれのイ・カウン(Lee Ka Eun)が新加入している。これまでのグループの末っ子であったリジ(Lizzy)やイヨン(E-Young)よりもふたつも年下となるカウンの加入で、不動の絶対的リーダーであったカヒ(Kahi)が脱退した後のグループの若返りに一気に拍車がかかり始めた。だがしかし、身長170センチのモデル並みのスタイルと大人びた美しさをもつカウンは、そのあどけない笑顔を見るまでは全く10代の女の子には見えなかったりもする。ただ、こうしたデビュー時点での完成度の高さや元々もっているタレント・ポテンシャルの高さといった部分こそが、94lineが黄金世代といわれる所以でもあるのだろう。彼女たちは、初めて公の場に立った時点ですでにアイドルとしての大切な資質のひとつである人目を惹くような魅力を十二分に備えているのである。
7月には、T-araに新曲“Day By Day”のリリースに合わせて八人目のメンバーとして、94年4月19日生まれのイ・アルム(Lee Ah-Reum)が新加入している。これにより09年4月のデビュー以来ずっとT-araの末っ子であったオリジナル・メンバーのジヨン(Ji Yeon)が、ようやく自分よりも年下のメンバーを迎えたことになる。ただ、このアルムもまた、末っ子とは思えぬ存在感をグループ内でいきなり発揮しているのである。デビューと同時に“Day By Day”での活動に参加したアルムであるが、いきなり先輩のお姉さんたちと比較しても全く見劣りしない堂々たるパフォーマンスを見せてくれているのだ。そして、その安定した歌唱力の高さには早くも注目が集まっており、今後はソヨン(So Yeon)とともにツイン・リード・ヴォーカル体制で活躍してゆくことが期待されている。
ちなみに、T-araにはすでに近いうちに九人目のメンバーが加入することが決定している。その新メンバーというのが、早くも加入前から密かな話題となっている現在14歳のダニ(Dani)である。この新たなT-araの末っ子は、まだ中学生でありながら身長167センチというモデルを思わせるスタイルとルックスを兼ね備えた桁違いの美少女なのである。相当にポテンシャルの高い新メンバーのアルムとダニを迎えて九人組グループとなるT-araの、今後のさらなるスケール・アップした展開が今からとても楽しみだ。(※)

日本のアイドル歌謡の世界で、この94lineと同世代のメンバーもまた、これからの10年代の動きを牽引してゆくことになるであろうスター予備軍ばかりである。まず、ももいろクローバーZのリーダー、百田夏菜子が94年7月12日生まれで、スマイレージのリーダー、和田彩花が同年の8月1日生まれである。このふたつの次世代のアイドル・グループのリーダーが、K-POP界の94lineと同世代であるという事実は、とても興味深い。さらに挙げてゆくと、Berryz工房には4月4日生まれの最年少メンバーにしてセンター・ガールの菅谷梨沙子がおり、片や℃-uteには、2月5日生まれの中島早貴、4月12日生まれの鈴木愛理、6月21日生まれの岡井千聖と、グループの中核をなすメンバーにこの94年生まれの世代が揃っている。また、スマイレージのリーダー、あやちょと非常に仲のよい、モーニング娘。の10期メンバー、飯窪春菜は11月7日生まれの同年代である。そして、実は日本の94lineのメンバーの中で、様々な面から見て最も将来性がありそうに思えるのが、9nineの川島海荷(94年3月3日生まれ)だ。もしかするとアイドル歌手としては必ずしも大きな成功はしないかもしれないが、この川島海荷が相当に抜きん出たタレントに恵まれていることだけは間違いない。10年代の後半に、彼女がこの世代を代表する顔になっている可能性は大いにある。

補足
現時点での次期のアイドルの黄金世代は94lineと目されているが、もしかするとその次の大波のほうが94lineを遥かに凌ぐのではないかと思えてくるような節も、すでに微かにだがあったりする。その94lineの次の黄金世代となりそうなのが、T-araの新メンバーのダニに代表される現在14歳の98年生まれの世代なのである。ブラウン・アイド・ガールズ(Brown Eyed Girls)の新曲“真夏の夜の夢”のMVに出演している美少女(これが実はダニなのではないかという噂もあったが、今のところ出演者の名前は明らかにされていない)もまた現在14歳であるという。そして、KARAの後輩グループとなる五人組のピュリティ(Puretty)の末っ子、ジェウン(Jae Eun)も現在14歳である。このジェウンもアイドル・グループの一員としてデビューする以前から複数のテレビCMに出演しており、子役タレント/モデルとして知られた存在であるという。
そして、日本におけるこの世代の代表格といえば、東京女子流の新井ひとみ、モーニング娘。の工藤遥、スマイレージの田村芽実、さくら学院/BABYMETALの中元すず香あたりとなるであろうか。もうすでに、相当に将来が有望なすさまじい顔ぶれが揃いつつある。やはり、この出足の早さは、90年代後半からアイドルの低年齢化が進行している日本ならではの現象といえるであろう。だが、こうした動きに韓国の歌謡界/K-POPシーンも急速に追いつきつつあるのが現状である。

追記(※)
2012年7月30日、ファヨン(Hwa-Young)ことリュ・ファヨン(Ryu Hwa-Young)の所属事務所Core Contents Mediaとのタレント契約が解除となり、T-araから脱退することが発表された。
10年に新加入したファヨンが、T-araというグループにしっくりと馴染むことができず、そこに様々な人間関係の軋轢が生じてしまったことが契約解除と突然の脱退の原因であるようだ。もしかすると、これは、しっかりと固定されたリーダーが存在しないT-araに起こるべくして起こってしまった問題であるのかも知れない。何か問題が起こりそうな時にそれを規律をもって回避し、何か問題が起きた時には指導的な立場で調停する。そうした絶対的なリーダーがグループに欠如していたことが、今回のファヨンの悲劇を生んでしまったとも考えられる。
新たにアルムとダニを迎えて八人組のグループとして再出発することになるT-araであるが、同じような失敗を二度と繰り返さないためにも古参のメンバーがしっかりと新メンバーの面倒をみてサポートし、強いリーダーシップを発揮してグループを引っ張ってゆくメンバーが現れることが望まれる。こういった面では、ハロー!プロジェクトのモーニング娘。が結成時から自然派生的に伝統としてきている絶対的なリーダーの役割や新人教育係の制度などは、多くのアイドル・グループに手本とされて然るべきものなのではなかろうか。
このT-araのグループ内/メンバー間に起きた問題は、現在のアイドル・グループの在り方そのものに対しても大きな波紋を投げ掛けるものである。これだけ多くのグループがひしめき合っている状態では、その内外で様々な問題が起きたとしても決しておかしくはない。今回の件から、それぞれのアイドル・グループや芸能事務所は、おそらく大きな教訓を得たに違いない。それが、どのような形で活かされてゆくのか、今後の動きにもつぶさに注目してゆきたいところである。

新しいポップ文化とカワイイ感覚〈序説〉(一)
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