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zoom RSS Do you remember the 28th night of September (IV)

<<   作成日時 : 2011/11/01 05:00   >>

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11年の8月から9月にかけて、日本の音楽シーンではK-POPガールズ・グループによる注目のリリースが毎週のように続いていた。その一方で、やはり本国の韓国においても、相変わらず怒濤の如きリリース・ラッシュの状況は、当然のことのように継続されていたのである。

画像まず、8月29日に実力派美人デュオ、ダヴィチ(Davich)が、実に一年三ヶ月ぶりとなる新作の“Love Delight”をリリースしている。この通算三作目のミニ・アルバムからは、チョン・へソン(Jun Hye Sung)の書き下ろし曲となる極上のミディアム・バラード“Don’t Say Goodbye”が大ヒットを記録する。この楽曲は、優しいメロディのようでいて、歌いこなすにはかなりの技量が必要とされるの難曲である。だが、そのライヴ・パフォーマンスでイ・ヘリ(Lee Hae Ri)とカン・ミンギョン(Kang Min Kyung)は、あらためて二人の歌声の美しさと歌唱力の高さを強く印象づけることに成功している。

画像そして、9月9日には遂にKARAが騒動後の初のリリースとなる通算三作目のアルバム“Step”で華々しく復活を果たした。これは、本国韓国では10年11月の“Jumping”以来の約十ヶ月ぶりの新作となる。この空白期間に、日本では“ジェットコースターラブ”と“GO GO サマー!”の二枚のシングルがリリースされ、ともにヒットを記録している。まさに韓国のKARAファンにとっては、待ちに待ったカムバックであったのだ。アルバムからのシングル曲となったタイトル曲の“Step”は、非常にノリのよいアーバン・ファンクなダンス・ナンバーであり、大方の予想通りリリースとともに熱烈な反応で迎え入れられることになる。次の日本でのシングル“Winter Magic”の発表が間近に控えているため、韓国での活動はたった三週間のみであったが、この間に各音楽番組でチャートの一位を軒並み奪取し、復活したKARAの大物ぶりをアピールすることに成功している。契約騒動によってグループの存続が大きく揺らいだことにより、五人の結束力はより強まり、危機を乗り越えたことによって、グループとしてひと回りもふた回りも逞しくなったように感じられる。

画像さらに、9月23日にはブラウン・アイド・ガールズ(Brown Eyed Girls)が通算四作目のアルバム“Sixth Sense”をリリースしている。このK-POP界のロスジェネ世代に属する三名のヴェテラン・メンバーを擁する実力派カルテットが新作を発表するのは約二年ぶりのことである。その間には、ナルシャ(Narsha)とガイン(Ga In)のそれぞれのソロ活動や、日本やタイを始めとする海外での活動が主に行われていた。KARAに続いて、こちらもファン待望のカムバック作となったわけだが、やはりアルバムからのシングル曲となったタイトル曲は、異様な興奮とともに迎え入れられることになる。その歌唱の力強さをまざまざと見せつける、土着的なビートに唸りをあげるストリングスが絡む異色のファンク・ナンバーの“Sixth Sense”は、しっかりとKARAの大ヒットに割って入り各音楽番組のチャートにおいて栄冠を手にすることになる。

この9月から10月上旬にかけては、完全にダヴィチとKARA、そしてBEGによる、まさに三つ巴の一位争いという様相を呈すこととなった。これは、それだけこの三組がともに気合いの入った質の高いカムバック作で、この9月に勝負を賭けてきたことの証しでもあるだろう。それぞれに素晴らしい楽曲でしのぎを削り合う、K-POPシーンの大物同士のまさにヘヴィ級な激突が、この時期の各音楽番組では華麗に繰り広げられていた。

画像そして、10月に入ると、まずは12日に新人の五人組、C-REALがミニ・アルバム“Round 1”で鮮烈なデビューを飾っている。シングル曲の“No No No No No”は、このグループが今年の新人ガールズ・グループの中でも一二を争う実力をもっていることを、いきなり如実に示すような楽曲となっている。ミッド・テンポのモダンなR&Bナンバーを見事に歌いこなす五人の歌唱は、実に瑞々しく、新人とは思えぬほどに落ち着いた安定感を誇っている。やはり歌唱力は、非常に大きな武器だ。遂にエイ・ピンクとダル・シャーベットの最大の好敵手が登場したという感じであろうか。C-REALの今後の活躍に期待したい。

画像その翌日の13日には、アフタースクールのグループ内グループであるオレンジ・キャラメルが、新曲の“Shanghai Romance”をリリースしている。これは、今春にヒットした“Bangkok City”に続く、オレンジ・キャラメルが展開しているアジアの各都市をテーマにした楽曲を歌い継いでゆくOne Asia Projectの第二弾となる楽曲である。この中国風の旋律をアレンジしたポップ・ハウス曲では、スーパー・ジュニア(Super Junior)のキム・ヒチョル(Kim Heechul)が書き下ろした歌詞が、非常に大きな話題となっている。さらに、ヒチョルは、この楽曲の振り付けまでをも担当しているというのだから驚きである。かねてより、オレンジ・キャラメルのメタ・アイドル的なコンセプトに強い興味を示し、そこに積極的に絡んでいたヒチョルであったが、ここにきて遂にプロデュースまで手がけ始めてしまった。何という入れ込み具合であろう。しかし、それだけの面白さが、オレンジ・キャラメルというグループの存在には確かにある。この少し過剰なほどのアイドルっぽさには、ついついクセになる味があるのだ。個人的には、今回の楽曲では、ナナ(NANA)のラップ・パートが、非常に可愛らしくて気に入っている。

そして、その翌週も、やはりまた相次いで注目の新作がリリースされた。ただし、この週は、ちょっとこれまでとは様子が違っていたのである。全ては、少女時代が10月初旬であったアルバムのリリース予定を、全米デビューや全世界同時リリースのスケジュールと調整するために、しばらく延期させると発表したところから始まった。その今秋の目玉作品であるアルバムが、いきなりこの週にリリース日をずれ込ませてきたのである。この急な予定変更によって、さらに予期せぬ事態があちらこちらで引き起こされた。T-araの所属事務所は、少女時代のアルバムとの同時期のリリースを回避し、新作ミニ・アルバムのリリース予定日を遅らせることを即座に決定した。また、各音楽番組もアルバムのリリースに合わせて予定が組まれていた少女時代の出演が突然なくなり、いきなり生じてしまった穴を埋めるために、KARAの韓国でのプロモーション活動をスケジュールの許す限り延長したり、あたふたとその対応に追われた。

画像しかし、それでも敢えて当初のリリース予定日を頑として変更しなかったのがシークレットである。鳴かず飛ばずだったデビュー当初から雑草魂と反骨心をバネに着実に這い上がってきた、この四人組は、18日に遂に念願のファースト・アルバム“Moving in Secret”をリリースしている。ある意味では、この週のリリースを最初にセッティングした際には、少女時代との直接の対決を避けるために、約二週間ほど意図的に時期をずらしたという経緯もあったのであろう。しかし、その計画は、全て少女時代側の都合によって一方的に覆されてしまった。ただ、ヒットを狙うグループが、その動きに合わせてリリース計画を練り直す中で、なぜかシークレットだけは、そこを強行突破する姿勢を見せている。このところ連続して大ヒット曲を飛ばしており、グループとして安定した高い人気を誇っていることに対して、絶対の自信をもっているのだろうか。それとも、今回は最初からチャートの首位に立つことを諦めてしまっているのか。09年にデビューしてからしばらくの間は大きなヒットに恵まれなかったシークレットだけに、温かいファンの応援や声援に支えられて遂にこのファースト・アルバムを発表できるところまで辿り着けたことを、純粋に喜ばしく思っている部分もきっとあるのだろう。そんなシークレットの新曲を心待ちにしてくれている人たちの手に、一日も早くアルバムを届けたいという真摯な気持ちが、この週のリリース予定を決して曲げずに貫き通した頑固さの裏には強くあるような気もする。この四人組には、周囲が騒ぎ立てているような少女時代との直接対決などといった部分は、最初から完全に度外視してしまっているところがあるのではなかろうか。そんな常に我が道をゆく姿勢もまた、シークレットらしいといえばシークレットらしい。もしも、今回どこかの音楽番組でシークレットが多くのライヴァルたちを抑えて首位に立つようなことがあれば、それはそれで大事件となるだろう。だが、それも決して有り得ないことではないのではないかと思わせるだけの勢いが、実は今のシークレットにはあったりするのである。アルバムからの勝負曲は、またしても非常にノリのよいクラシック・ロック調のレトロ・ポップなダンス・ナンバー“Love is Move”である。

画像10月19日、遂に少女時代が通算三作目のアルバム“The Boys”をリリースした。元々は、10月4日もしくは7日のリリースとアナウンスされていたのだが、9月末に突然リリース日の延期が決定された。おそらくは全米デビューに関するSM EntertainmentとUniversal Music/Interscope Recordsとの間の契約の成立が、少しばかり遅れたことが、その原因だと思われるが、この約二週間の遅れは、K-POPシーン全体に様々な波紋を投げ掛けた。これだけ多くのガールズ・グループがひしめき合い、新作のリリースが立て込んでいる状況にあっては、ちょっとした遅れが、思いもかけぬほどに大きな影響を及ぼしてしまうことにもなりかねないのである。韓国国内での主なプロモーション活動の場となる音楽番組に出演できるグループの枠にしても、その数は限られている。そこでは、少女時代のスケジュールが急遽変更になったことで、予定されていた枠からはみ出してしまうことになるグループも当然出てくるだろう。かなりギリギリなパワー・バランスの上に成り立っている業界の暗黙の了解のようなものが、こうした事態から綻んでゆく可能性は非常に大きい。しっかりと先々まで予定が組まれ、やや予定調和的な趣きすらある韓国の歌謡界であるが、その根底が現段階で揺らぐことは、現在のK-POPの隆盛の勢いを削ぐことにもなりかねないのではなかろうか。ある種の保守的な側面は、これから大いに是正されてゆくべきであろうが、内部でのもめ事は、おそらく何も生み出さないに違いない。今回は最大手の事務所であるSM Entertainmentに所属する少女時代に関係することであるから、それほど大事にもならずに、すんなりと収まっているように見えている部分もあると思うのだが。
しかし、前段階ではあれこれと問題含みではあったものの、出るべきものは、しっかりと出た。そして、予想されていた通りに、アルバムからのシングル曲となる“The Boys”は、いきなり各音楽配信チャートで軒並みトップを独占してしまうのである。やはり、今の少女時代は、とんでもなく強い。アルバム“The Boys”は、本国韓国においては10年10月27日にリリースされた通算三作目のミニ・アルバム“Hoot”以来となる約一年ぶりの新作となる。そして、アルバムとしては、10年1月28日にリリースされた“Oh!”以来の約一年九ヶ月ぶりの一枚だ。この韓国歌謡界での空白の期間、やはり少女時代もまた日本での活動に、ある程度の重点を置いていたといえる。11年6月1日には初の日本語歌唱アルバム“Girls' Generation”がリリースされ、これに合わせる形で5月末から7月中旬にかけて7ヶ所全14公演をこなす初のアリーナ・ツアーも開催された。そして、こうした日本での新たな挑戦で、次々と大成功を収めていったのである。これが、少女時代というグループを、またひと回り大きくしたことは間違いない。この夏にも、新潟で開催されたK-POP All star Live in Niigataなど何度かステージに立ちメディアに登場する機会があったが、そこに現れた九人は、どことなくそれまでの少女時代とは全く違ったオーラを発しているようにも見えた。見るからに自信にみなぎり、まさに大物感をムンムンと漂わせている雰囲気だったのである。おそらく、この夏の時期に多くの人々が、全く新しい段階に突入した少女時代の出現を感じ取ったに違いない。アリーナ・ツアーにおいてライヴ・ステージの一発勝負な世界を経験したことが、元々質の高いものであった少女時代のパフォーマンスを、さらに実戦に強いものへと鍛え上げていったのであろう。そこへ来て、全米進出や全世界デビューということが現実のものとなる存在にまでなっているのだから、ちょっと格が違う雰囲気が濃厚に感じられるようになってきていたとしても、何らおかしくはない。明らかに、現在の少女時代は、韓国の歌謡界においてひしめき合っているK-POPのガールズ・グループの一群とは、ちょっと違う次元にある。
80年代後半にニュー・ジャック・スウィングで一世を風靡したテディ・ライリー(Teddy Tiley)をプロデューサーに迎えた“The Boys”は、かなり薹は立っているような気もするがさすがに御本家らしいジープでヘヴィなR&Bダンス曲となっていて、新境地に踏み出そうとする現在の少女時代に絶妙なほどにぴたりとマッチした楽曲だといえる。ズシリとくる重厚感とひたすらに前へグイグイと前進してゆく強靭さや勢いが、ここでは見事なまでに表現され尽くしている。11年版の少女時代のテーマ曲といっても決して過言ではなかろう。
ただし、勢いという点では、シークレットの“Love is Move”も決して大きく負けているわけではない。ある意味においては、これは実によい勝負だといえるかも知れない。まさに、現在のK-POPシーンにおけるレヴェルの高い競い合いを象徴するかのような二曲である。新韓流の立役者である少女時代と、それを追いかける09年デビュー組のシークレットが、これだけ見応えのある激突を繰り広げてくれているのだから、このK-POPシーンの層の厚みは、もはやただごとではないところまで到達していると考えてよいだろう。
シークレットが記念すべきファースト・アルバム“Moving in Secret”をリリースした10月18日と、少女時代が世界進出への狼煙を上げた“The Boys”をリリースした10月19日。間違いなくK-POPのガールズ・グループの歴史に残る名作アルバムが、何と二日連続でリリースされた10月の第四週は、本当にとんでもない一週間となった。きっと、この二日間のことは、長く人々の記憶の中に留められることであろう。韓国女性アイドルの戦国時代は、ますます激闘の色を濃くしてきている。

11月には、少女時代の騒動の余波を受けて10月27日のリリース予定を遅らせたT-araの新曲“Lovey Dovey”や“Cry Cry”を含む通算三作目のミニ・アルバム“Black Eyes”を筆頭に、若き実力派シンガー、IUの待望のセカンド・アルバム、米国でのプロモーション活動に勤しむワンダー・ガールズ(Wonder Girls)の韓国では約四年ぶりとなるアルバム、そして12月には、日本でのシングル“Ready Go”の発表も控えている4ミニッツの通算四作目のミニ・アルバムなどのリリースが予定されている。

追記
奇しくも、今回、KARAの日本でのシングルのリリース日と少女時代の韓国でのアルバムのリリース日が、同日ということとなった。重なる時は色々と重なるというが、これだけ様々な動きが日本と韓国で立て込んでいては、情報を追いかけるだけで本当にひと苦労であったりする。そして、この10月も半ばを過ぎる頃には、ひとつ前の月にリリースされた作品は、かなり前のものに思えてきてしまったりもするのである。やはり、あまりにも移り変わりのサイクルが早い。この流れの中で忘却を免れようとすることは、相当に至難のわざとなるであろう。K-POPのガールズ・グループの動きが、今後さらに加熱してゆくであろうことは、やはり目に見えているだけに、やや複雑な思いが交錯してしまう部分もある。‡

追記
さらに、KARAは、11月23日に日本での二作目のアルバム“Super Girl”をリリースする。9月に韓国でアルバム“Step”を出したばかりだというのに、今度は日本向けの日本語アルバムを出してくるというのだから、これはもう、凄まじいとしか言いようがない。いつの間にレコーディングしているのであろう。あれだけ忙しく日本と韓国を行き来して活動しているというのに。DSP Mediaは、KARAの四人を働かせすぎではなかろうか。またメンバーと事務所の間で揉めるようなことがなければよいのだが。ちょっと心配にもなってくる。‡

これだけ数多くのガールズ・グループが、それほど大きくはない市場規模の歌謡界にひしめき合っているのだから、ほぼ毎週のように誰かが新作を発表する慢性的なリリース・ラッシュの状況が出来上がってしまうのも、当然といえば当然のことである。そこでは、コンスタントにヒットを飛ばし、その存在を強く印象づけ(続け)るための、想像を絶する過酷な競争が日々繰り広げられることになる。アイドルとは、常に華々しくきらびやかな存在であり、ただ眺めているだけでも非常に心浮き立つものがある、はずのものである。しかしながら、当事者にしてみたら、今のこの状況は、あまり生きた心地がするものではないのかも知れない。本当に些細なことでも命取りになりかねない、張り詰めた空気が充満し続けているのだから。
これからもしばらくの間は、華々しくも激烈なK-POPシーン全体の拡大・膨張、混乱・混沌、そして淘汰へと向かう嵐は、激しく吹き荒れることであろう。今後は、サウンドやスタイルのトレンドの移り変わりのサイクルも、さらに加速してゆくに違いない。この激闘の季節を生き残ったトップ・アイドルたちを待ち構えているものとは、一体どのような高みであるのだろう。
おそらく、10年代の中盤あたりまでには、ほぼ00年代デビュー組と10年代デビュー組との間での世代交代も大方完了しているはずである。その時、K-POPシーンの覇権は、どのガールズ・グループが手にしているのか。ちょっと想像もつかない。現在ひしめき合っているガールズ・グループのほとんどは、すでに歴史の一部になってしまっているのかも知れない。そう考えると、これからの展開からは片時も目が離せなくなりそうだ。本当のサヴァイヴァルが、いよいよ幕を開けようとしている。

次々と新人グループがデビューする中で、現在10代中盤から後半にかけての全く新しい世代に属するアイドルたちが着実に力をつけ台頭してきている。だがしかし、そういった下からの突き上げなど物ともせずに、ヴェテランや大御所たちもコンスタントに良質な作品をリリースし、その健在ぶりを高らかにアピールする。今後も、このペースで新人のデビュー・ラッシュが続けば、韓国の歌謡界は、さらに混沌とし、その保守的な構造そのものまでも大きな変革の時を迎えることになるのではなかろうか。
そして、一時的には、知名度の低い新人グループがヒットを飛ばし、スポットライトの当たる場所へ出てゆくためには、これまで以上の努力が必要とされるようにもなってくるであろう。さらに、ヒット・チャートの常連組に名を連ねるためには、歌や踊りの技術を磨きに磨き、優れた楽曲を生み出す作曲家やプロデューサーの選択から、ステージ衣装やジャケット写真、MVでのイメージ作りまでを含めた、トータルなコンセプトの構築など、常に見るものを驚かせる超一流のレヴェルのものが要求されるようになる。これだけ多くの女性アイドル・グループがひしめき合っている中で、ほかのグループと異なる個性を際立たせることは並大抵のことではない。所属事務所の大きさやプロモーション能力の高さなどに関係なく、実際の作品の内容そのものが厳しく吟味される傾向も、次第に強まってゆくに違いない。すでに一定の評価と人気を獲得している大物でさえ、いつも同じことの繰り返しでは、飽きられてきてしまう恐れは多分にある。もはや、どんなに大物であっても、スターダムに居座り続けるためには血の滲むような必死の努力が欠かせなくなるだろう。ならば、まだ海のものとも山のものとも知れぬ無名の新人は、その何倍ものひたむきな努力をしなければ芽さえ出ずに終わってしまうこともあり得るのだ。
それでも、きっと、その深い混迷と混沌の奥底から、誰も予想だにしなかったような奇抜で斬新なアイドル歌謡のニュー・ブリードが、突然勢いよく飛び出してくるはずである。現在の華やかな舞台の裏側では、多くの明日のトップ・アイドルを目指す練習生たちが、日々血と汗と涙のにじむハードなレッスンに明け暮れているのだから。そうした革命的な進化への予感めいたものを大いに孕んでいるのが、このところのK-POPのシーンの全体的な活況であったりするのだ。いつどこで全く新しいものが暴発してくるかわからない。これはもう、決して気は抜くことができない状況である。全てが、ひたすらに真剣勝負な世界なのである。

ここ最近のアイドル歌謡を取り巻く状況を見ていると、女性アイドル・グループというものの在り方そのものが、以前とは大きく変わってきているようにも感じられる。それは、もはや男性ファンからのアイドルを見たい・聴きたいという欲望に応えるだけのものでは完全になくなってきているのである。だがしかし、そこに人間の抱く欲望が全く渦巻かなくなってしまったわけでは、決してない。角度を少し変えて見れば、以前よりもさらに様々な形の欲望が渦巻く世界になってきているようにも思われる。
そこでは、女性/少女たちのアイドルになりたい欲望が最大限に追求され、それが様々なチャネルを通じて具現化されているのだ。今では、日本各地の地方都市や観光地には、必ずといってよいほどご当地アイドル(ローカル・アイドル)が存在し、独自の地域に密着した幅広いアイドル活動を展開している。アイドルというものの様式が多様化してゆくことにより、アイドルというものが、演る側にとっても、見る側にとっても、限りなく身近な存在になってゆく。垣根はどこまでも低く、裾野はどこまでも広大なのである。それが、現在のアイドルを取り囲む現状であり、そこには、全く新しい21世紀型の女性アイドル・グループのスタイルや階層が形成されることになる。何とも興味深い動きを、そこに見出すことができるのである。
画像日本では、AKB48、パフューム(Perfume)、モー娘。やスマイレージ(S/mileage)などに憧れる少女たち(各地方都市に存在するタレント養成所の研修生なども当然含む)が、各種のオーディションに押し掛け、その中から自らもステージに立つ者が次々と現れてくる。韓国では、少女時代やKARAに憧れる少女たちが、幼いうちから芸能事務所のタレント・スクールに所属し、練習生として歌や踊りのトレーニングに勤しみ、いつの日か自分も眩いスポットライトの中に立つことを夢見ている。そして、現在のインターネット時代においては、そうした女性アイドル・グループが及ぼす影響は、その国内だけに止まらず、瞬く間に東アジアから全世界に伝播し、日々拡大していっている。

そして、現在の女性アイドル・グループのメンバーには、驚くほどにマニアックなアイドル通がいたりもする。これは、ある意味では00年代以降の女性アイドル像を象徴する、とても興味深い一形態といえるかも知れない。そうした傾向をもつアイドル・グループのメンバーは、基本的にアイドルに対する憧憬が極めて強く、その思いを遂げて自らアイドルとなってからも、アイドルという存在に対する思い入れは非常に強い。こうした全く新しい形の21世紀型アイドルたちの中では、理想とするアイドル像の純度が、急激に高められてゆくことにもなるであろう。そして、その延長でアイドルが自他ともにアイドルという存在を批判的に批評し、ステージに立つ度に、作品を発表する度に、絶えず発展的止揚が繰り返されてゆくことになる。

最近のアイドル・グループが表象する異様なまでに精度が上がり凝縮されつつあるアイドル歌謡の様式の裏側には、そういった背景なども関連しているようである。今や、アイドルとは、意識的にアイドルするアイドルへ大きく変貌を遂げつつある。実際、自らが突き進んでゆくべき進路が見定められていないアイドルは、もはや全くお話にならなくなっている雰囲気すらあるくらいなのだ。

このままゆくと、10年代の後半あたりには地球規模のアイドル戦国時代が出現しているというようなこともあり得るのかも知れない。現在の日本型や韓国型のアイドル・グループのスタイルが、世界的なスタンダードとなってゆく可能性は非常に高い。中国ではAK49が怪しく活動を開始し、そしてインドネシアのジャカルタを拠点とするJKT48や台湾の台北を拠点とするTPE48の結成が計画されていたりもする。おそらく、普通の女の子がアイドルへと成長してゆく過程を間近で見守り応援する、AKB48によって打ち出された「会いに行けるアイドル」というコンセプトは、そこそこの規模のある都市でならどこででも展開することは可能であろう。数年後には、急速に成長する東アジア/東南アジアの諸都市に幾つもの大所帯グループが乱立しているということも考えられる。そして、そこからハロプロ/モー娘。型や少女時代型といった細かな分派がなされて、さらに拡散してゆくことになる。今後、こうした21世紀型アイドルの様式を発展させたグローカルなアイドル・グループは、国内・国外に次々と登場してくるに違いない。
際限がないほどに極端に広い裾野から、次々と強烈な個性を放ちながらせり上がってくる、10年代以降の女性アイドル・グループは、どのような言葉で心情や感情を表現したアイドル歌謡を歌い、来るべき時代を彩ってゆくことになるのであろう。とても楽しみでもあり、少し恐ろしくもある。そこでは、きっとスカッと抜けきった空虚さと深すぎるほどに深い意味性が、今以上に複雑に入り混じっているのではなかろうか。歌謡曲は暗号化する。無意味なことにも意味があり、そこから意味をすくい取ろうとすれば無意味となる。アイドル歌謡の深淵を覗き込むことは、時代の皮相を裏側から眺めることと等しい。まさに、この21世紀とは(若き周縁に生きる)大衆の時代であり、(夥しい数のアイドルたちとアイドル歌謡を中心に回る)文字通りに少女時代であるのかも知れない。(11年)

追記
大ヒットしたドラマ「冬のソナタ」を制作したPan Entertainmentが、来年にも新人女性歌手とガールズ・グループをデビューさせる予定があることを発表した。Pan Entertainmentは、すでに約30人ほどの練習生を抱えており、レコーディングやダンス・レッスンを行える各種スタジオを備えた総合エンターテインメント施設を新たに建設中であるという。元々は音楽制作会社としてスタートしたが、ドラマや映画のサウンド・トラックを数多く手がけたことから映像制作の分野へと進んでいった、こういった会社が、再び音楽業界に足を踏み入れようとしていることは非常に興味深い事象であったりする。今や、海外への進出も十分に見込むことのできる、女性歌手やガールズ・グループなどのアイドル歌謡とは、ドラマ制作と比較しても決して見劣りしないほどに魅力的なマーケットになってきているということであろうか。ほんの少し前までは、韓国の芸能界のヒエラルヒーにおいて、ドラマや映画のフィールドと歌謡曲(大衆歌謡)のフィールドの間には、そう簡単には埋まらなそうなほどの歴然とした格差が存在していたのだが。おそらく、そうした部分も少しずつ(だが劇的に)変化しつつあるのかも知れない。‡

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