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zoom RSS 2011, Back To Black PS IV - ii

<<   作成日時 : 2011/09/20 05:00   >>

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2011, Back To Black

追記(四)

後編

07年7月、これまでBerryz工房と℃-uteの二手に分かれて活動をしていたハロプロ・キッズに、遂に第三のユニットが誕生する。それが、キッズ世代のスーパー・グループともいえるBuono!である。Buono!は、嗣永桃子、夏焼雅(ともにBerryz工房)、鈴木愛理(℃-ute)からなる三人組。元々は、テレビ東京系列で放送されていたアニメ・シリーズ「しゅごキャラ!」のテーマ曲を担当するために結成された、いわゆる企画物のプロジェクトであった。しかし、リリース作品を重ねる毎にグループとしての形やカラーが明確になり、際立つ個性を発揮するようになってくる。キッズ世代の中でも、ある意味ずば抜けたタレント性をもつ三人によるユニットであるのだから、遅かれ早かれ企画の枠を飛び越えて独り立ちしてゆけるアイドル・グループとなることは、最初から目に見えていたともいえるであろう。Buono!の三人は、個々のグループでの活動と並行して、次第にBuono!というグループならではの表現の世界をしっかりと確立してゆくことになる。
女性三人組のグループといえば、古くからザ・ロネッツ(The Ronettes)、ザ・シュープリームズ(The Supremes)、ザ・スリー・ディグリーズ(The Three Degrees)、日本ではキャンディーズ(Candies)など、歴史に名を残すグループも数多く、ポップ・ミュージックの世界においては、もはやひとつの定型となっていさえもする。そんな伝統的なガールズ・ポップの系譜に連なりそうなほど高度なパフォーマンスを見せるBuono!は、現在のハロプロにおいても完成度の面で少しばかり飛び抜けた存在だといってしまってもよいだろう。やはり、そこには、どうしてもバラつきが生じてしまう大所帯のグループには、なかなか出すことの出来ない、グッと凝縮されたハイ・クオリティなポップ音楽としてのきらめきがある。ポップスの世界には、三人組にしか生み出せぬ魔法の力のようなものが、きっとあるのであろう。
また、Buono!の作品に関しては、一貫してプロデュースをつんく♂が担当してないという点も、実は結構大きい。あの何でもこなしてしまうつんく♂が、作詞・作曲からプロデュース(Buono!のプロデューサーは滝川洋)までを、ほぼ自分以外の人間に託しているのが、Buono!なのである。それだけでも、ハロプロ内においては充分に異色の存在であり(ソロの真野恵里菜を除けば)、かなり実験的な側面ももつユニットだといえる。このあたりが、同じキッズ世代のグループであってもBerryz工房や℃-uteとは、また一味違ったアイドル・グループとしてのスタイルをBuono!が表出させることができている、ひとつの大きな要因なのだろう。これは、つんく♂の手によって生み出されたハロプロ流のガールズ・ポップが、これからの展開を考えた時に決して避けては通れぬ道でもある。ここに聴くことができるのは、ポストつんく♂様式の最も早い段階における一形態だと考えることもできるのかも知れない。
11年のBuono!は、まず2月2日に通算11作目の三曲入りシングル“雑草のうた”をリリースしている。これは、10年2月3日に発表されたシングル“Our Songs”以来となる、ちょうど1年ぶりの新作であった。この間にBuono!は、それまでの約2年半の活動をまとめたベスト盤“The Best Buono!”をリリースするとともに、デビュー時から在籍していたレコード会社、ポニーキャニオンを離れている。そして、しばらくの空白の期間を置いて発表されたのが、このBuono!の第二章の幕開けを飾るアップフロントワークス傘下zetimaへの移籍後の初シングルである。
シングル“雑草のうた”は、元々のBuono!の音の特徴であったバンド・スタイルのサウンドによるロックのテイストを、さらに強く高い純度で押し進めた作品となっている。また、そうしたややハードなサウンドと相見えることによって、三人のクリアでキレのある歌声も、イキイキとした魅力を放ちながら耳に勢いよく飛び込んでくる。レコード会社移籍に伴う休眠期間を経ての1年ぶりの新作ということもあって、全編にみなぎる気合いの入り具合も、ただならぬものがある。特に、タイトル曲の“雑草のうた”は、かなりパンチが効いた一曲だ。そのボブ・ディラン(Bob Dylan)からインスパイアされたと思わしき歌詞は、アイドル歌謡として歌われるにしては、あまりにも奥深いものを内包させた、ちょっとした衝撃をもたらすものでもあった。とりあえず、この“雑草のうた”は、11年に発表されたロックの作品としては、おそらくは洋の東西を問わず、間違いなくトップ・クラスに数え上げられるであろう一枚である。
そして、7月20日には通算12作目のシングル“夏ダカラ!”がリリースされた。これは、Buono!にしては珍しく夏らしい季節感のあるシングル曲であり、こんな部分からも、新たなスタートを切ったBuono!が、これまでとはちょっと違っていることを感じさせられる。また、スタイルとしては変わらずにロック調であるが、60年代のブリティッシュ・ビートやフィル・スペクター(Phil Spector)のウォール・オブ・サウンドをベースにした、気品溢れる上質のガールズ・ポップに仕上げられているが特徴的。これは、かねてよりつんく♂の十八番のスタイルのひとつであり、ある意味ではハロプロ流儀のシグネチャー・サウンドを継承した楽曲ともいえるであろうか。
この“夏ダカラ!”では、恋する女の子の募る思いが、押し寄せる波のように歌い込まれている。メイン・ヴォーカルは、変に癖のない声質や歌唱が、とても瑞々しい印象を与える鈴木愛理。また、間奏で鈴木が語る胸キュンな台詞は、この楽曲の最大の聴きどころでもある。激しくロックする楽曲ではない分だけに、鈴木を中心とする三人の声の質のバランスや相性のよさを、あらためて痛感させられる一曲でもある。少し大人になったBuono!をありのままに表現したような、しっとりと落ち着いた中にもさざめく女心を垣間見せる部分などは、かなり新鮮味があってよい。特に、鈴木が情感を込めて歌う「邪魔をしたくない気持ちと邪魔したい気持ち/戦ってた」というパートには、思いがけぬほどに突き刺さる鋭さがあり本当にドキリとさせられる。
画像さらに、その翌月の8月10日には、早くも新しい作品“partenza”がリリースされた。これは、Buono!にとって初のミニ・アルバムとなる作品である。おそらく、こうしたこれまでになかったリリース形態も、レコード会社移籍に伴う新たな試みのひとつなのであろう。シングルを二枚リリースした後に、ほぼ間を置かずにミニ・アルバムを立て続けに発表することで、再始動後のフレッシュな意気込みに満ちた勢いをそのままにパッケージし、Buono!の第二章の幕開けを強く印象づけようということであろうか。ちなみに、このミニ・アルバムのタイトルは、新たな旅立ちを意味するイタリア語である。
この“partenza”には、11年に発表されたシングル曲、それぞれのメンバーのソロ歌唱曲を含む新曲、そしてカヴァー曲など、非常にヴァラエティに富んだ全八曲が収録されている。まさに、ありそうでなかった様々な新たな試みがなされた、なかなか新鮮味のある作品に仕上がっているのだ。特に、各メンバーによるソロ楽曲は、やはりちょっとした聴きどころだ。スタイリッシュな夏焼によるスマートでキレ味のよいダンス・ポップ曲“フランキンセンスΨ”(11年4月17日に解散してしまったSI☆NAのオリジナル活動曲のカヴァー)、Google公認の世界一キュートな女の子である嗣永による正統派のアイドル・ポップ“キアオラ・グラシャス・ありがと”、生粋の清純派の鈴木による王道の青春バラード大作“My Alright Sky”と、それぞれの個性が際立つ楽曲が的確に割り振られており、実に興味深い。Buono!としての三人のヴォーカルの融合も、素晴らしく魅力的であるが、ここでは、三人が、それぞれにソロとしても充分な実力をもつ歌い手であることが、まざまざと証明されている。また、鈴木の歌う“My Alright Sky”は、楽曲自体かなりクオリティの高いものであり、鈴木の歌唱にスケール感や力強さが加わると、さらによいものになってゆくようにも思える。そんな、今後の成長や進化にも期待したくなる一曲だ。
そして、“partenza”のラストには、Siam Shadeの97年のヒット曲“1/3の純情な感情”のカヴァー曲が収録されている。ほぼ原曲に忠実なアレンジで、Buono!が真っ向から、この90年代の日本語ロックの名曲に相対す様をここに聴くことができる。ただし、オリジナルのハイ・トーンなヴォーカルと比較すると、全体的にかなり低めのキーでメロディが歌われており、楽曲の男前度という点では、このBuono!によるヴァージョンの方が断然高いか。中でも、嗣永の歌声は群を抜いて力強く、見事なまでに情感の抑え切れぬほどの高ぶりを表現している。表向きには可愛い系のキャラクターであるが、実際には嗣永が最もヴォーカリストとしてはロックの素養をもっているのである。また、この楽曲での、三人それぞれのコーラスの付け方などを聴いていると、このBuono!というグループが、もはやアイドル・グループでありながらアイドルという狭い枠組みを完全に超越したレヴェルにあることが、まざまざと見えてくる。
さらに言えば、このカヴァー曲の前の7曲目にはシングル“雑草のうた”のカップリング曲であった“JUICY HE@RT”が収録されている。これは、全く勝敗確率の見えてこない八方破れな恋愛に胸奥を痛める女の子の感情を、疾走感に溢れるワイルドなロック・サウンドにのせて一気呵成に歌い上げた楽曲だ。そんなほとばしるような歌の直後に“1/3の純情な感情”のカヴァーがくると、まるでこれが恋愛に不器用な男心を歌った“JUICY HE@RT”へのアンサー・ソングのように聴こえてきたりもするのである。このあたり、何ともいえない心憎い構成となっている。
これからのBuono!の活動としては、11年秋に公開されるホラー映画「ゴメンナサイ」でメンバーが三人揃って映画に初主演することが決定している。そして、この映画の公開にあわせてBuono!として担当する映画の主題歌がリリースされる予定である。次々と新たなことにチャレンジしてゆく再始動後のBuono!。全くもって頼もしい存在になりつつある。その三人のもつポテンシャルの高さを発揮して、より広いフィールドにアピールする活動をどしどしと繰り広げていってもらいたい。

こうして、ここ最近のキッズ世代の動きを、少しばかり詳細に追っていた最中に、さらなる大きな動きの一報が飛び込んできた。それが、Berryz工房と℃-uteの合同ユニット、Berryz工房×℃-ute(ベリキュー)が正式に活動を開始するという発表であった。これは、キッズ世代から派生した二大グループが遂に歴史的邂逅を遂げる、総勢十二名からなるハロプロ・キッズのスペシャル・ユニットである。来年の春であのハロプロ・キッズ・オーディションから早くも10年という、この時期に、かつては皆あどけない小学生であった十二人が、こうした特別な企画で顔を揃えるというのは、なかなかに感慨深いものがある。
オーディションに合格した十五名からは、脱退した者や卒業した者もいて、少しばかり人数は少なくなっているが、それでも十二名が、この約10年間をハロプロ・キッズとして、Berryz工房として、℃-uteとして、常に大きな向上心をもって活動を続けてきたということは、やはり普通に考えて生半可なことではない。そうした彼女たちのハロプロ・アイドル道に対する並々ならぬ真剣さが、ここ最近のBerryz工房や℃-uteの(さらにはBuono!の)作品の内容には如実に表れているし、その安定したテンションやポテンシャルの高さの奥底には、何ともいえぬ凄みのようなものが感じられたりもするのである。
ベリキューは、11月9日にスペシャル・シングル“甘酸っぱい春にサクラサク”をリリースする予定である。しかも、この楽曲はベリキューの全員が出演する今冬公開の映画「王様ゲーム」(主演は、Berryz工房の熊井友理奈と℃-uteの鈴木愛理)のエンディング・テーマでもあるようだ。どうやら、この合同ユニットは、シングルの発表だけでなく、いきなり映画の主演までも務めてしまうらしい。まるで、80年代のアイドル全盛期のような展開ではないか。今やBerryz工房も℃-uteも、あの頃のスーパー・アイドルたちと肩を並べるところまで近づきつつあるということ、なのかも知れない。素材としては、その可能性は十二分にあると思われるが…。
シングル“甘酸っぱい春にサクラサク”は、様々なキャリアを積み、ともに切磋琢磨してきたキッズ世代の十二名の、ハロプロ・アイドルとしてのひとつの到達点を示す作品となるであろう。現在のBerryz工房や℃-uteの作品のクオリティの高さを考えれば、嫌が応にも期待は高まるというものである。
来年の春、桜の蕾が膨らみ始める頃には、わたしたちは、あの大震災から1年という日を迎える。きっと、来年の3月にはとびきり美しい桜の花が咲くであろう。いつもの年よりも何倍も美しく儚く可憐な桜の花が。暗く沈んでしまった、わたしたちの心に明るい春の訪れを告げるように。この楽曲のタイトルには、そうした来たりくる春への願いや希望がこめられているようにも感じられる。

画像こうした11年に発表された非常に質の高いハロプロ関連の楽曲の中でも、ひとつの頂点を極めてしまったように思われたのが、8月3日にリリースされたスマイレージの“有頂天LOVE”である。これは、小川紗季の突然の卒業によって、オリジナル・メンバーのスマイレージが発表した最後のシングルとなった楽曲だ。そして、おそらく四人体制の第一期スマイレージの最高傑作でもある。高速ユーロビートが突っ走る、異様なまでにノリがよくハイ・テンションなダンス・ポップであり、鉄壁のユニゾンで可愛らしくメロディを捲し立てる四人の歌唱のバックでは、完全躁状態のつんく♂が「わっふー」と強烈な合いの手を入れまくる。ここまでくると、もはや完全にお祭り騒ぎである。ひとつの祝祭が絶頂に達したような高揚感が、そこには充満している。“有頂天LOVE”とは、そんなちょっとただならぬ域にまで突き抜けている一曲であった。
だがしかし、今年のつんく♂は、ここを頂点として打ち止めになる感じではないようなのだ。かなり“有頂天LOVE”で、出し切っている印象があったのだが。どうやら、まだまだその上がありそうなのである。8月以降のリリースでも、℃-uteの“世界一HAPPYな女の子”などで、その好調さはしっかりと持続されている。この安定した好調ぶりから察するに、もはやこれくらいの高いレヴェルが当たり前な状態になりつつあるのかも知れない。68年生まれのつんく♂は、現在42才である。おそらく、年齢的にも、最も作詞・作曲やプロデュースの能力に脂がのり始めてきている時期なのではなかろうか。そう考えると、ここ最近のハロプロ全体の勢いが一気にぶり返してきている動きにも、妙に頷けるものがある。この10年代初頭、ハロー!プロジェクトは再び黄金時代を迎えようとしている。まさにハロプロ・ルネサンスだ。
そうした動きに連動するかのように、ここ最近は、カップリング曲に良曲アリの法則が、まるであの最盛期の頃のように真しやかに囁かれ始めていたりもする。これは、このところのハロプロ関連のシングルには、併録されたカップリング曲にも決して侮ることのできない良質な楽曲が軒並み揃っているというものだ。確かに、カップリング曲に注目することは、ハロプロ所属のグループを総合的にプロデュースしているつんく♂の楽曲の質をチェックするには、最も手っ取り早い方法であるかも知れない。
Berryz工房では、シングル“ヒロインになろうか!”に収録されていた“ヒーロー現る!”、“愛の弾丸”に収録されていた“思い出”、そして“ああ、夜が明ける”に収録されていた“大人にはなりたくない 早く大人になりたい”と、いずれも最近の等身大の女の子の生き様をストレートに表現した路線の質の高い楽曲となっており、カップリング曲にしておくには勿体ないくらいである。そして、℃-uteでは、“Kiss me 愛してる”に収録されていた“二十歳前の女の子”、“桃色スパークリング”に収録されていた“Faraway”、“世界一HAPPYな女の子”に収録されていた“偉大な力を!”と、いずれも可愛らしく真っ直ぐに女の子の気持ちを歌ったアイドル・ポップスのど真ん中をゆく楽曲となっており、℃-uteというグループのコンセプト通りな世界がしっかりと表現されていた。さらに、スマイレージでは、“有頂天LOVE”のカップリング曲“自転車チリリン”が、学生時代の初々しい恋心を歌ったエヴァーグリーンなミッドテンポ・バラードとなっており、このシングルのタイトル曲にも劣らぬレヴェルのかなりの名曲であった。
このように、11年のつんく♂の手がけた作品は、ほぼ完全に例の法則通りとなっているのである。これはもう、思わず「わっふー」と叫びたくなってきてしまうくらいに絶好調ということの表れなのであろう。こんなにも総合プロデューサーがノリノリな状態にあるのだから、ハロプロ全体の勢いが上向きになり各グループの活動もグッと密度の濃いものになってきつつあるのも当然といえば当然か。ここ最近は、本当にどのグループのリリース作品も決して見逃せない内容のものばかりなのだ。

(追記)
画像9月14日、モーニング娘。の通算47作目のシングルにして、今秋の卒業を目前に控えた現リーダー、高橋愛の約10年間にも及ぶモーニング娘。での活動のラストを飾るシングルとなる“この地球の平和を本気で願ってるんだよ!”が発表された。しかしながら、これは、併録の“彼と一緒にお店がしたい!”とともに両A面扱いのシングルであるため、カップリング曲に良曲アリの法則に該当する作品とはならない(厳密には)。ただし、いずれの楽曲も、なかなかに興味深い良曲であることは、間違いないところである。
高橋の真っ直ぐで伸びのある歌唱をふんだんに盛り込んだ、モー娘。のお家芸的なスタイルとなるキラキラなファンキー・ラテン・ロック系の最新形態となる“この地球の〜”と、これからのモー娘。の主力組が中心となった、新様式の開花を感じさせるコミカルでキュートなロックンロールの“彼と一緒〜”が織り成すコントラストには、モーニング娘。というアイドル・グループの歴史と未来が、そのまま透けて見えるようでもある。ある種の黄金世代である6期の生んだ黄金コンビ、田中れいなと道重さゆみが引っぱり、そして新戦力の9期を含む総勢八名のメンバーが一丸となって、これらのモー娘。にとっての二本柱となるであろう両路線を、変わらずに継承し/新たに創出し展開してゆくことを高らかに宣言するかのような意味合いを、この両A面シングルからは感じ取れたりもする。
とにかく、このシングルに収録されている両曲は、ともに誰もが一度聞いたら忘れられなくなるようなインパクトのあるタイトルとなっている。やはり、この少し暑苦しいくらいのアクの強さこそが、伝統的なモー娘。らしさなのである。このあたりは、どちらかというとアイドルらしい雰囲気最優先で決して無茶はしないAKB48あたりの楽曲のタイトルとの対比が明確になされているようで、非常に興味深い。‡

そのハロプロにおけるキャリアの長さからいっても、その早くも約10年に及ぼうかというキャリアの過程で培われてきたものからいっても、このハロプロ・キッズを母体とする世代が、今やハロプロ全体の根幹をなしていることは疑いの余地のないところであろう。実際に、Berryz工房や℃-uteが、ハロプロエッグ組の後輩やモーニング娘。の新メンバー、そして多くのエッグ世代の研修生たちから、ハロプロ・アイドルとしての目標や手本とされていることは間違いないところである。そういった意味でも、このキッズ世代/ベリキューの十二名とは、未来のハロプロを築き上げてゆく現在進行形の牽引車の役割を担っているともいえる。
しかし、その卓抜した実力や個々に際立った個性などを考えれば、いずれはこのキッズ世代が、ハロプロだけではなく日本のポップ・ミュージックの中心に位置していたとしても、おかしくはない。そのデビューからの経歴を見れば、すでにアイドル歌謡の世界における大御所でもあるBerryz工房と℃-uteなのだ。だが、少しばかりデビュー時の年齢が低かったせいか、なかなかそのキャリアに見合っただけの貫禄がついてきていないのが、難点といえば難点だろうか。まあ、まだ全員が10代であるので、大御所の貫禄がつくには少し早いのかも知れないけれど。
ただ、そうしたこの二組のグループがともに抱えるディレンマのようなものを解消する、ひとつの突破口になりそうなのが、今回の合同ユニットのベリキューである。これは、もしかするとキッズ世代の十二名が、そのキッズなイメージから完全に脱皮して、実年齢に見合った等身大のハイ・ティーンの女性アイドル・グループへと一皮剥けるための、よいキッカケとなるのではなかろうか。特に、映画「王様ゲーム」での銀幕用の本格的な演技への取り組みなどは、必ずや彼女たちにとっても何かしらの新たな扉を開く経験になるに違いない。

最後に、再びBuono!のミニ・アルバム“partenza”に関して、少しだけ触れておきたい。この作品の1曲目を飾るタイトル曲“partenza 〜レッツゴー!!!〜”が、なかなかに興味深い一曲なのである。これは、ブラス・バンド風のビートにユルいラップ歌唱がのり、さらにはトランシーなエレクトロ調へと展開してゆく、ポップでユニークな楽曲である。まさに、そのタイトル通りに新たな旅立ちのためのテーマ曲のような楽曲だ。自分を信じて、未来へ、前へ進めと歌われるサビのリフレインが、とりあえず異様に耳に残る。これはBuono!の三人が、それを聴く者だけでなく、ほかならぬ自分たちに対して歌いかける言葉としても聴くことができそうだ。確かな再生・再起へのメッセージを散りばめつつも、しっかりと可愛らしさとコミカルさでコーティングされた、Buono!流の人生の応援歌なのである。
また、ここには最近のK-POPのサウンドからの影響のようなものも、確実に見受けられる。ブラス・バンドのビートとダンス・ポップの融合は、アフタースクール(Afterschool)が10年にヒット・シングルの“Bang!”で試みていたサウンドであった。Buono!の“partenza 〜レッツゴー!!!〜”は、このアフタースクールの“Bang!”のサウンドを、よりポップにアレンジし直して、ハロプロ・スタイルのアイドル歌謡へと発展させたような楽曲となっている。しかしながら、このアフタースクールにしてみても、元々はモーニング娘。の“LOVEマシーン”の韓国語カヴァー曲“Dream Girl”をリリースしていたグループであり、ハロプロやモーニング娘。の増員制度を取り入れてデビュー時の五人組から現在の八人組(11年6月に初のメンバーの卒業があった)へと弛まぬ進化を遂げてきたという経緯がある。つまり、これは、この十数年の間にハロプロとモーニング娘。が韓国のみならずアジアの歌謡文化に及ぼした影響が、巡り巡って現在のハロプロへと回帰してきているということでもあるのだろう。このように、お互いに影響を与え合い、切磋琢磨してゆくことで、総合エンターテインメントとしてのアジアのアイドル歌謡の新たな領域が、次々と開拓されてゆくのではなかろうか。そして、ハロプロやK-POPを中心にアジア全体のポップ文化のクオリティが押し上げられ、さらに高いレヴェルで広範囲に影響を及ぼし合う関係が、そこに築かれてゆくはずである。
そのような、広い視野と長いスパンにおいて眺めてみても、現在最も輝かしい時期を迎えつつあるキッズ世代は、まさしく大いなる可能性を秘めた存在だといえそうである。小学生時代からともに活動し、過酷なアイドル戦線の実戦の中で成長を遂げてきたベリキューの十二名が、今後どのようなミラクルを起こしてゆくのか、とても楽しみである。

そして、ここにきて、さらなる大きな動きがあった。Berryz工房と℃-uteのベリキューも参加する、ハロー!プロジェクト所属の全てのグループとソロ歌手による巨大ユニット、モベキマスが、本格的に活動を開始することが発表されたのである。11月16日に、この総勢二十九名(注)からなるモベキマスは、シングル“ブスにならない哲学”をリリースする予定だ。この11月には、9日にキッズ世代の十二名による合同ユニット、ベリキューとしてもシングル“甘酸っぱい春にサクラサク”がリリースされる予定であり、Berryz工房と℃-uteにとっては個別のグループでの活動とは一味違う形で、非常に重要な意味をもつ時期を迎えることになりそうである。ふたつのスペシャル・ユニットに主演映画の主題歌と、11年後半は様々な企画が立て続けに動き出す。まさに、ここがベリキューにとって、女性アイドル・グループとしてさらなるステップ・アップをしてゆくための、最初の正念場といえるであろう。
おそらく、こうした滅多にない特別企画を連発する動きは、AKB48とその系列グループ、ももいろクローバーZ、ぱすぽ☆などの新興の勢力に押され気味なハロプロが、ギリギリの瀬戸際で放つ起死回生策であるかのように、見ようによっては見えてしまうかも知れない。ハロプロのメンバーを総動員したプロジェクトとしては、過去にも04年にH.P. オールスターズでのシングル“All For One & One For All”のリリースがあったし、パーマネントなグループの枠を越えて集散するプロジェクトも、過去にはシャッフル・ユニットとして散々行われてきた企画である。そういう意味では、モベキマスもベリキューも、見方によっては特段目新しいものではないのだが。そんな、よく見れば見慣れた使い回しの企画で新たなイキのよい勢力に対抗しようとするなんて、いくらかつて一斉を風靡したモー娘。を擁するハロプロといえども少しばかり空しいものがありはしないであろうか。
実際のところ、これらのハロプロが打ち出している企画は、あれこれ騒がしいハロプロ外の動きに対応したものではあまりないようにも思えるのである。ここ最近の研修生制度の定着とともに進められたスムーズな世代交代によって、それだけの企画プロジェクトをこなせる全く新しい顔をもつ集団へと、現在のハロプロ全体が技術的にも能力的にも(再び)向上してきているというのが、本当のところの背景なのではないだろうか。そうした現在のハロプロの充実ぶりを象徴しているのが、総勢二十九名の集団の軸を担うだけの大きな存在へと成長を遂げた、キッズ世代/ベリキューに備わってきた揺るぎない安定感なのである。
このようにキッズ世代にハロプロを牽引してゆくだけの準備が整いつつあるということは、より大局的な動きの中で捉えれば、ティーン・アイドル中心のアイドル戦国時代を本格的に闘い抜く体制が、再生したハロプロに整いつつあるということでもあるのだろう。現在のアイドル戦国時代に参戦しているグループの多くは10代半ばから10代後半までのメンバーが中心であり、世代的にはハロプロ・キッズのメンバーとほぼ同年代なのである。また、ここにきて急速に進行しているモーニング娘。の世代交代も、約四年間に渡り新メンバーの追加がなかった反動であると同時に、ある種の時代の要請という面ももつといえるであろう。
11年後半に用意されている様々な仕掛けの連発は、今年に入りグッと勢いに満ち満ちてきているハロプロの純粋なる地力や熱量の放出の表れである。それが、それだけで戦国の世にひしめく他の勢力にとっての脅威となることは間違いない。やはり、ハロプロは押しも押されぬ老舗であり、この世界における名門中の名門であるのだから。力を溜めるだけ溜め、弓の弦を引き絞れるだけ引き絞り、ハロプロの逆襲が始まる。ここ最近の再興に至るまでの長い長い助走は、そのために絶対に必要な準備期間であったのだ。
また、モベキマスのようなお祭り要素の強い特別なビッグ・プロジェクトには、行き詰まった状況や暗い話題に沈みがちな日本を元気にしようという意図が込められているようにも思われる。昨今のアイドル戦国時代というどこか実体のない盛り上がりの様相を巧みに利用した、女性アイドル・グループによる華やかなエンターテインメントの応酬は、結果的に、これからの芸能文化を活性化させてゆくとともに、多くの人々の心に微かにでも明かりを灯すことになるに違いない。(11年9月)

(追記)
スマイレージのサブ・メンバー、小数賀芙由香が病気の治療のためにグループから離脱したことで、モベキマスは、総勢二十八名のユニットとして活動することとなった。‡

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