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zoom RSS 2011, Back To Black PS II - i

<<   作成日時 : 2011/08/25 03:30   >>

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2011, Back To Black

追記(二)

前編

あの日以来、果たして世界は本当に大きく変わってしまったのだろうか。ここでは、少しばかり今現在の音楽について、あれこれと考えてみたい。特に、ここ最近の歌謡曲について。
なぜ、歌謡曲なのか。これは、今現在の世の中において、突出して歌謡曲というものが重要な意味をもっているということでは決してない。しかし、ある意味では、最も世の中の動きに対する反応を(無)条件反射的に早く示し、そうした動きに対し良くも悪くも最も影響を受けやすい位置にあるのが、歌謡曲であるともいえるのではなかろうか。
社会の動きや世間の動きに対して意識的なシンガー・ソングライターやロック・ミュージシャンが、様々な出来事に対するストレートな反応として、自ら曲を作り自らの言葉でメッセージや意見を表明する歌を歌う。そうした直接的で強い反応とは、少しばかり異なった世の中の様々な出来事に対する反応が、かなり素早くあからさまに(しかも構造的に客観的かつ間接的な形で)現れ出てくるのが歌謡曲というものであったりする。
常にポップであることが宿命づけられている歌謡曲とは、意識的にであれ無意識的にであれ、何らかの形で時代の空気を吸い込み、それをどこかに宿したものとならざるを得ない。だが、世相をそのまま写し込み逆照射までするものとして存在していた、かつての歌謡曲と、今現在の歌謡曲とでは、かなり異なるタイプの歌謡曲となっていることも言うまでもない。
歌謡曲が、世の中の至る所に溢れかえり、人々の生活の隅々にまで浸透していた時代は、すでに遠く過ぎ去ってしまっている。今や、大半の歌謡曲は、かなり能動的に聴こうと思わない限り、なかなか聴くことのできないものとなりつつある。多くのロック音楽や演歌やダンス・ミュージックなどと同じように。
TVやラジオから流れてきて、知らぬ間に耳に入り聴いてしまうことになる(昔ながらのタイプに近い)歌謡曲は、ほんの僅かな一握りのものだけとなり、それ以外の大半のものは普通にそれを聴きたいと意志する人に選択され初めて聴取される音楽となってきている。つまり、かつての感覚でいうと、あまり歌謡曲的ではない歌謡曲こそが、今現在の歌謡曲の大半なのである。ある意味、今現在の歌謡曲とは、かなり普通に音楽の一形態として伝統的な大衆歌謡の境界をゆらゆらと漂うものとなりつつあるのだ。
では、今わたしたちが生きている、この3月11日以降の世界において、果たして歌謡曲は何を歌うことができるのだろう。常にポップであることを宿命づけられた、現実世界の出来事と微妙な距離感で対峙する歌謡曲は、今のこの全くポップではない状況において、果たして何を歌うことができるというのだろう。
突如、わたしたちの日常に降りかかってきた想定のレヴェルを越えた大災害を前にして。数百年、いや千年に一度といわれるほどの、凄惨な大津波による被害の有り様を前にして。水素爆発で建屋が吹き飛び、不気味な白煙とともに大量の放射性物質を飛散させた、史上最悪の原子力発電所の事故を前にして。そして、剥き出しになった貯蔵プールや原子炉の格納容器などからは、今も放射性物質は漏れ出るままとなっている、というのに。

まず、大震災以降にちらほらと見受けられたのが、誰かを励まし勇気づけ支え応援するような、深く傷つき俯き気味になっている人に向けた印象的な言葉を盛り込んだ歌である。そして、そうした傾向をもつ、3月11日よりも後の世界において録音されたと思われる楽曲が、ようやく震災から約三ヶ月ほど経った頃から本格的に登場し始めた。
あくまでも歌謡曲として在ることを第一に求められ、歌謡曲として取り扱われて流通され、歌謡曲として聴かれるべきものであるために、そこでは明確に災害や被災の内容について具体的な事柄が歌われることはない。現実の世界において起きていることとはかけ離れた、やや無関係そうなテーマの楽曲の中に、聴き様によっては明確な意味性やメッセージ性をもち得るかも知れない言葉が忍ばされているところに、今のこの時期の歌謡曲らしい性質を感じ取ることができる。
そんな今現在の歌謡曲とは、迫りくる巨大な恐怖と不安に押しつぶされそうになる3月11日以降の世界の現実を前にして、人々の生活の中で半ば忘れかけられそうになっている日常の何気ない喜怒哀楽や恋愛の感情を必死になって歌い、何かを繋ぎ止めようと喘ぎもがいているようにも見える。ゆえに、その楽曲においては、微かに現実世界へと通ずるものを匂わせるにとどめた、励ましや勇気づけの言葉を散りばめておくというのが、おそらくは精一杯のところであるのかも知れない。
だがしかし、どこの誰が、今のこの現実について直接言及し、それをポップな歌謡曲にして歌うことができるであろう。よっぽどの大きな間違いが起こらない限り、そんな歌が、そう簡単に歌えるとは思えない(しかし、今回の震災は、皮肉にも、そんなよっぽどの大間違いが、この社会のあちこちに蔓延しきっていたことを詳らかにする、ひとつのキッカケでもあったわけなのだが)。
逆にいうならば、そういった仕事は、根本的に歌謡曲が担う役割ではないのである。大地震について、津波について、原子力発電所の事故について、そのまま歌って、それが歌謡曲となるであろうか。何も確かなことがわからない状況で、全くこの先の見通しがつかない状況で、それをポップに歌えるであろうか。そういった歌を歌うのは、古くからフォーク歌手などのプロテスト・シンガーの領分であった。
もしも、それを、直接的にでも、遠回しにでも、歌謡曲が歌えるとしたら、それこそ、今現在のとても深い闇のような社会的混乱が収束し、全く予断を許さぬ状況に、一定のメドがたってからであろう。爆発事故が起きた福島第一原子力発電所の原子炉から核燃料を取り出す作業が開始されるのが、全ての作業のプロセスがスムースに運んだとして、今から10年後のことだという。しかし、原子炉内部から溶け落ちてしまった核燃料を、いかにして全て回収することができるのだろう。計画そのものはあるものの、そうした細かい部分は、全くもって不透明だったりする。こんな現実を目の当たりにすると、一体いつになったら一定のメドがたつことになるのか、皆目見当がつかないのであるが。
とりあえず、まずは、この現実に起きた出来事に対して途切れ途切れにでも時代の空気を反映した言葉を発する、今のこの段階を経た後に、本当の意味での3月11日以降の歌謡曲のカタチをもった歌謡曲が、徐々に登場してくるのではなかろうか。それがいかなるものになるのかは、今はまだ全くわからない。
より完全に個に埋没した歌となるのか。全体に個が埋没しきった歌となるのか。それとも、何事もなかったかのように歌謡曲は歌謡曲のままであり続けるのだろうか。

この紛れもない今という時に漂っているものを、歌謡曲なりに精一杯に映じさせた楽曲を、幾つかここで見てゆきたいと思う。これらは、今現在の歌謡曲という枠の内側において、現時点で最も傑出している作品だともいえる。また、ある意味においては、歌謡曲でありながら、あまり歌謡曲的ではない作品だともいえるかも知れない。いや、歌謡曲でありながら、あまり歌謡曲的ではない聴き取りも可能な歌謡曲といった方がよいだろうか。3月11日以降の世界において、歌謡曲というものの枠組みは、かなり微妙なものとなりつつある。

画像まずは、モーニング娘。の通算46枚目のシングルとして発表された“Only You”。これは、6月15日にリリースされた、激しくもクールに恋する女の子の感情を歌う、いかにもモーニング娘。らしいタイプの一曲である。その内容は、普通に聴けば、情熱的に恋愛の感情を歌った楽曲として捉えられるものである。
しかしながら、そうそう普通に聴いてばかりいられなくさせるものが、今現在の全く普通とは言い難い社会全体をすっぽりと包み込んでいる状況にはある。この“Only You”という楽曲においても、その歌詞の端々に、かなり引っ掛かる言葉が散りばめられている。つまり、クールかつ情熱的な恋愛の歌でありながら、ただの恋愛の歌としてだけではない聴き取りが可能な歌なのである。
特に印象的なのが、サビに突入する直前の、最も感情的に昂ったパートで歌われる、「だけど今は君がこの世界/きっと変えてくれること祈って/素晴らしい星に変えてください」という歌詞だ。ここで歌われている世界は、今すぐにでも変わらなくてはならない(変えられなくてはならない)状態にある。そして、それゆえに、この星全体もまた、今すぐにでも素晴らしい星に生まれ変わらなくてはならない。この世界も、その世界を内包しているこの星も、素晴らしいというには程遠い最悪の状態に、今まさにあるということなのである。
その最悪さとは、今現在わたしたちが暮らす、この世界の、水素爆発を起こした原子力発電所から漏れ出た放射能によって汚染された大気や水や食物や土壌に日々暗澹たる気分にさせられ、風にのって運ばれ雨とともに降ってくる目に見えない放射性物質や放射線に怯えながら日常を生きなければならない状態と、どうしても重なって見えてきてしまうものがある。我欲に塗れた愚かな人類の手で放射能塗れにされてしまった、この星は、やはり元通りの素晴らしい星に戻されなくてはならない。
しかし、ここで、この世界をその手で変えることを請われ祈られている君とは、一体誰のことなのであろう。その手で、この最悪な世界を、汚れてしまった星を、全て変えてしまえる人物など、どこにいるのであろう。これまで半ば強引なまでに原子力政策をすすめてきた国のトップに立つ内閣総理大臣こそが、その重責を負うべきなのであろうか。
しかし、このどうしようもない状況を前にしては、いくら内閣総理大臣といえども、個人の力だけでは、少しも何かを打開することができないということを、すでにわたしたちは3月11日以降の経験から強烈に思い知ってしまっている。それは、きっと誰が内閣総理大臣であったとしても同じことであろう。実際の汚染水の除染や放射能除去の作業を内閣総理大臣に任せたとしよう。だがしかし、そこで何人の内閣総理大臣の政治生命が必要となってくるのかは、現時点ではまだ見当もつきやしないのだ。
では、ここで歌われている君とは、一体誰なのか。この星のことを、この星の外側から眺めている誰かということか。高度に発達した文明をもつ宇宙人か、はたまた、この星を創造した神であろうか。だとしたら、これは、近年稀にみる相当にイリュージョンな楽曲ということになるのだが。
おそらく、君というのは、この楽曲を聴く者ひとりひとりのことなのであろう。実際、これは“Only You”に向けて歌いかけられる楽曲なのだから。そして、その君とは、たったひとりの特別な人物なのである。しかしながら、この楽曲を今現在の最悪の状況と重ね合わせて聴く場合には、そこではこれを聴く者全てが、特別な君となる。
この世界とこの星の再生に向けた願いと祈りは、たったひとりの特別な君である、ここでこの楽曲を聴いている多くの君たちの胸へと託される。これは、わたしたちが、この特別な状況を特別なものとして意識し、わたしたち自身の手で少しずつでも変えてゆかねばならないということなのだろう。実にベタな帰結であるが、そもそもこの楽曲はタイトルから“Only You”と思いきりベタなものであったことを思い起こそう。とにかく、この最悪な状況と向き合うには、どんなにベタだとしても先ずはどこまでも人間臭く構えるしかないのである。
ひとりひとりの小さな力も、確かな意識をもってまとまれば、この最悪な状況を変えてゆくことができるかも知れない。そんな沢山の“Only You”を結集させた、これまでにはなかったような大きな力が、今この世界では必要とされているのである。この歌には、そうした力を生み出そうとする祈りや願いが込められている。実に今現在の歌謡曲らしい二重のメッセージ伝達の形式を駆使することによって。だが、きっと最初から歌謡曲が恋愛ソングの片手間に歌っている絵空事だと決めつけて、まともには取り合ってくれない頭の固い人も少なからずいるに違いない。
楽曲の冒頭から繰り返し歌われるサビのパートには、「大丈夫/君なら出来るよ」や、「あきらめないでね」という励ましの言葉のリフレインを聴くことができる。しかしながら、果たしてどうすれば、この世界とこの星を素晴らしい場所に変えることができるのかという、その具合的な方法に関する疑問は残ったままである。いくら歌で励まされ勇気づけられようとも、そう簡単には、今現在の最悪の状態になる以前の世界を取り戻せはしないであろうから。少しずつとはいっても、どこから手をつけていってよいのかすらわからない。
そうだとしても、やはり、この“Only You”のような楽曲が歌われるということは、とても重要なことなのだと思われる。その歌詞の端々に散りばめられた聴く者の胸に突き刺さるような言葉によって、この最悪な時代のただ中で僅かにでも意識が喚起されることは、おそらく先々において少なからず何らかの意味をもってくるはずだ。この最悪さを真っ向から意識するかしないかが、いずれきっとこの世界における生き方の大きな違いとなって表れてくるであろう。

現在、結成から14年目を迎えているモーニング娘。は、5期メンバーの高橋愛と新垣里沙を中心とする九人組グループとして活動している。昨年の12月に6期メンバーの亀井絵里を始めとする三名が卒業し、そしてそれと入れ替わるように11年の1月に新たに四名の9期メンバーがグループに加入した。ここにきて、そのメンバー構成が大きく若返るとともに、グループの存在自体がガラリとリフレッシュされつつある。
さらに、現在のリーダーである高橋もまた今秋の活動をもってグループから卒業をすることが、すでに発表されている。今後は、次期リーダーである新垣とともに6期メンバーの道重さゆみと田中れいなが、新たなモーニング娘。を牽引してゆくことになるのであろう。こうした、ここ最近の幾つかの変化は、遂にモーニング娘。が天賦の才能に恵まれた田中を中心とするグループへと近づきつつあるということにほかならず、これには妙な胸の高鳴りを覚えずにはいられなかったりもする。
田中れいなは、間違いなくモーニング娘。史上でも最もレヴェルの高い部類に属すタレントである。元々、最初から煌めくものは少なからずもってはいた。だが、すでに約8年にも及ぼうかというモーニング娘。のメンバーとしての活動が、その歌やダンスにさらなる磨きをかけていることは言うまでもない。
そんな希代の天然モノの逸材である田中が輝き、9期の新メンバーたちがフレッシュな風を吹き込んだ、現在のモーニング娘。は、かつての活動初期の頃の雰囲気にも似た、何ともいえない野武士集団的な勢いを取り戻しつつある。要するに、全盛期に中心的な役割を果たしていたメンバーたちが次々に卒業していった00年代中期から後期にかけての俗に言う衰退期を乗り越えて、着実に新たなモーニング娘。として盛り返してきているのである。
しかし、こうした再興の傾向は、現在のモーニング娘。だけでなく、モーニング娘。が所属するハロー!プロジェクト全体にとっても当てはまるように思える。00年代の前半からキッズやエッグなどの第一線で活躍するグループの下部組織的な練習生・研修生の制度を設け、次世代のタレントの育成活動に取り組んできたことにより、確実に組織全体の底上げがなされてきているのである。その成果が、ここ数年のハロプロの動きに徐々に表れ始めている。その最たる存在が、キッズから派生したBerryz工房と℃-uteであり、エッグ出身で10年の第52回日本レコード大賞において最優秀新人賞を受賞したスマイレージ(Smileage)や、現在はソロ歌手として活躍している真野恵里菜、そして9期メンバーとして新たにモーニング娘。に加入した譜久村聖などである。
こうしたキッズやエッグの存在は、幼い頃から芸能事務所の練習生として歌や踊りや演技などの様々なトレーニングを積み、非常に長い時間をかけて一流のタレントとして育成され、その多くの練習生の中から選抜された、ほんの一握りの者だけがデビューへの切符を掴むことができる、韓国の芸能/歌謡界の広い裾野をもった仕組みを思わせるものがある。現在のK-POPのシーンの充実ぶりや成功を見れば、ここにきて徐々にハロプロが勢いを盛り返しつつあることも、ある種の必然だと思えてきたりしないであろうか。
やはり、表舞台の華やかさを下から支えているのは、多くの裏方のスタッフや研修生・練習生の存在なのである。そんな、着々と成長し下から這い上がってくる者たちによる突き上げがあってこそ、組織全体のボトム・アップがなされてゆくようにもなる。そのような意味において、K-POPと近年のハロプロには、なかなかに興味深い類似性を確認することができる。
だが、そうした育成のシステムとは全く別に、モーニング娘。の場合には、頻繁に催される新メンバー募集オーディションによって、いきなり強烈な個性が登用されるという伝統もある(さらには、こうした新人発掘オーディションの最終選考者の中から、新たなエッグの研修生がリクルートされてゆくという側面もある)。古くは福田明日香、10年に1人の逸材と言われた後藤真希、そして今や押しも押されぬエースとなりつつある田中れいななどが、中学生時代に大抜擢されてモーニング娘。に加入し、グループに大きなインパクトを与えてきた。
今回、合宿形式のオーディションを経てモーニング娘。のメンバーとなった三名もまた、なかなかの逸材揃いであり、すでにそれぞれの強烈な個性を光らせてもいる。エッグのメンバーとして数年間の研修期間を過ごしてきた譜久村聖が、異様に初々しく見えてきてしまうほどハッキリとしたキャラクターを最初から備えているところなど、かなりの雑草的な強さや大器ぶりを漂わせているようにも見える。
おそらく、譜久村聖(フクちゃん)、生田衣梨奈(えりぽん)、鞘師里保(ヤッシー)、鈴木香音(ズッキ)からなる9期の四名の成長が、これからのモーニング娘。を、さらに面白いものにしてゆくに違いない。これには、かなり楽しみなものがある。特に、歴代の正統派の流れに属する他の三名とは明らかに毛色が異なる、最年少のズッキには是非とも注目してゆきたい。もしかしたら今しか見れないかも知れない、虫のモノマネ(形態模写)は、とりあえず必見である。

画像“Only You”は、9期メンバー加入後の第二弾シングルである。四人の9期メンバーが初めて参加したシングルは、モーニング娘。にとって通算45作目のシングル“マジですかスカ!”であった。この作品は、11年4月6日にリリースされている。当初は、3月23日のリリース予定であったが、3月11日の大震災の影響で約二週間程リリースが延期されたのだ。
今年の頭に新加入した9期のメンバーは、これまでに誰も経験したことのないような状況に、いきなりデビュー時から直面させられたといえる。ただ、このタイミングでグループに加入することとなったのも、やはり多くのオーディション参加者の中から選ばれた四人が、最初から背負っていた運命なのであろう。別の言い方をすれば、この選び抜かれた四人こそ、3月11日以降の世界でモーニング娘。のメンバーとして活動することを、何らかの見えざる力によって宿命づけられていたのである。そこは、9期以前のメンバーとは、ある種決定的に違うところであるのかも知れない。
また、彼女たちのデビュー曲であった“マジですかスカ!”が、11年の1月に起きたマジでスカスカな通販おせちの問題を連想させるタイトルの楽曲であったことも、実に象徴的なことであるように思えてきたりする。9期のメンバーは、デビュー時から常に時事的な問題と切っても切れない関係にあったのである。しかしながら、実際に詐欺おせちの被害に遭われた方には本当に申し訳ないが、このタイトルは、本当に痛快というしかない。
そして、大震災の約三ヶ月後には、新曲の“Only You”において、切実な祈りや未来への願いを託した(と思われる)勇気づけの言葉を歌っている。まさに、これもまた3月11日以降の世界におけるモーニング娘。にしか歌えないタイプの楽曲であり、ここにもまた9期のメンバーの宿命を垣間見ることができる。
さらに、この作品から約三ヶ月後の9月14日に発表される予定なのが、9期メンバー加入後の第三弾であり、現リーダーの高橋愛が参加する最後の作品となる、モーニング娘。にとっての通算47枚目のシングル“この地球の平和を本気で願ってるんだよ!”だ。またしても、かなり強烈なインパクトを放つ、すさまじいタイトルの楽曲である。思いきりメッセージ性丸出しというか、完全に言い放っている感じが、シャレにならなそうな空気をムンムンと発散している。
だが、運命を背負った9期の四人が新たに加入してからの作品は、相当にクオリティもテンションも高めなところをキープしたものとなっているので、この作品にも大いに期待したいところではある。これだけ大上段に構えたタイトルの楽曲なのだから、平成の歌謡史にその名を残すような名曲を期待したくもなってくる。ここにきて、グッと勢いを盛り返してきているモーニング娘。であるから、きっと何かをやらかしてくれるのではなかろうか。実に楽しみである。
また、この作品が、チャートでトップ10入りを果たすと、モーニング娘。はデビュー曲から47作連続でトップ10入りというグループのアーティストとしての記録を更新することとなる。現在、この連続記録でモーニング娘。を上回っているのは、浜崎あゆみのみである。最近の浜崎のシングルのリリースのペースを考えると、モーニング娘。が、この記録の保持者となることは、もはや時間の問題であろう。結成以来、メンバーは激しく入れ替わっているが、モーニング娘。というひとつの女性アイドル・グループの歩んできた軌跡が、日本の歌謡史・大衆音楽史に永遠に残る域にまで達していることは疑いの余地がない。

画像続いては、カラ(KARA)の日本での四枚目のシングル“GO GO サマー!”である。これは、6月29日にリリースされた、所属事務所との契約問題解決後の初のシングルだ。一時は、事務所を提訴したメンバー三名の芸能活動からの引退にまで発展しそうな勢いであっただけに、思っていたよりも早い時期に和解に至り、騒動発生から半年も経たぬうちに再び五人揃ったカラの新曲を聴くことができたというだけでも一種の奇跡に近いことであるように感じられる。
“GO GO サマー!”は、そんなカラの五人にとって特別な意味をもったシングルというだけでなく、3月11日の大震災以降に制作されたカラにとっての初のシングルという特別な作品でもある。契約問題で所属事務所との間で係争となっていた間、韓国でのグループとしての芸能活動は完全に停止状態にあった。そんなカラにとって、その当時、五人で活動を行う場は国外の日本のみに限られていたのである。そして、ちょうどこの時期に行われていたのが、テレビ東京系列で11年1月から4月の間に放映された主演ドラマ「URAKARA」の撮影であった。だが、その撮影や放映のスケジュールのただ中で、あの東日本大震災が発生する。
ニュース映像などで流れる震災と津波の被害の甚大さを伝える映像には、カラの五人も相当に胸を痛めたようである。何しろ、当時の彼女たちにとって、日本はグループとしての活動ができる大変に貴重な場所であったのだから。そんな大切な場所である日本が巨大な災害によって深く傷ついている状況は、カラの五人にとっても非常にショックな出来事であったに違いない。
後に、メンバーのク・ハラ(Koo HaRa)が、震災直後に被災地と被災者の支援のために一億ウォンの寄付を個人的に行っていたことが明らかになっている。二十歳のアイドル歌手のお嬢さんが、所属事務所との関係も決して良好ではなく、今後の芸能活動の先行きも全く見通せない状態にある中で、日本円で七百万円以上もの金額を寄付できてしまうという事実には、少しばかり驚かされたとともに心から敬意を表したい気持ちにさせられた。もはや国籍や年齢などは関係なく、ひとりの人間として限りなく美しく限りなく尊敬に値する人物だとしか言いようがない。

画像今回の大震災は、カラのシングルのリリースにも少なからず影響を及ぼした。日本での三枚目のシングルであった“ジェットコースターラブ”は、当初は3月23日にリリースされる予定であった。だが、震災のために発売が延期となり、約二週間遅れで4月6日に、ようやくリリースされている。これは、奇しくもモーニング娘。の“マジですかスカ!”と発売日も延期期間も全く同じタイム・スケジュールという巡り合わせとなっている。
また、このシングル“ジェットコースターラブ”に関しては、売上げ収益のうち所属事務所とカラに支払われる印税の全額が、被災地と被災者の支援のため義援金として寄付されることが急遽決定された。そのようなチャリティ盤として発表された効果か、事務所との契約問題で日本の芸能ニュースやワイドショー番組などでもカラの存在が大きな話題となったことが逆にプラスに働いたのか、“ジェットコースターラブ”はリリースと同時に大ヒットを記録し、デイリーと週間の両シングル・チャートで第一位を獲得することとなる。この大ヒットには、海外の女性グループによる初登場第一位が、史上初の快挙となったというオマケまでがついた。ちなみに、モーニング娘。の“マジですかスカ!”は、デイリー・ランキングでは三位、週間チャートでは五位という結果であった。
いずれにしても、この時にはまだカラのメンバー三人と所属事務所は契約問題の縺れで対立関係にあり、いくら“ジェットコースターラブ”が大ヒットしていても、グループとしての表立ったプロモーション活動がなされることは殆どなかった。十分なプロモーション活動がなかったにも拘らず、震災から一ヶ月後のいまだ混乱がおさまらぬ中で“ジェットコースターラブ”がチャートの一位を獲得したことは、まさに快挙と呼ぶに相応しいのかも知れない。この三枚目のシングルによって、カラと日本の結びつきが、より太く深く強固なものになったことは間違いないところであろう。

そんな契約騒動の渦中にあってグループの存亡が大きく揺れ動く中でも、震災後の日本に対する支援の姿勢を示し続けたカラ。そんな彼女たちの放った日本での新曲が、この“GO GO サマー!”である。そして、やはりこの楽曲においても、その歌詞の端々には幾つかの印象に残る言葉を聴き取ることができる。
“GO GO サマー!”は、そのタイトルからも察せられる通り、夏をテーマにした楽曲である。ジャケットに写るカラのメンバーたちも、全員が爽やかなマリン・ルックに身を包んでおり、今にも真っ青に晴れ渡った空と夏の海の光景が目に浮かんできそうだ。ギラギラしたギター・ソロがフィーチュアされる疾走感のある曲調もまた、いかにも夏の海が似合いそうな雰囲気である。
その歌詞の内容は、基本的にはホットな恋の季節の流れに乗り遅れないようにと若い男女の背中を押すようなイケイケな恋愛奨励ソングとなっている。だが、その歌詞に注目して具に聴いてゆくと、決して単なる真夏の恋愛についてだけ歌った歌ではないように思われる瞬間が、度々訪れたりもするのだ。
まず、サビのパートの歌詞の一部として何度も繰り返し歌われる「ギリギリまで/ネヴァー・ギヴ・アップ!」や「あきらめちゃダメよ」という言葉が、次々と耳に飛び込んでくる。これだけを切り取れば、これはもう完全に聴く者を励まし勇気づける言葉として機能するであろう。巨大な不安と恐怖が渦巻く極めて困難な状況にあっても、決して諦めてはいけないと、ギラギラと照りつける真夏の太陽のように力強く疾走する楽曲にのせて歌いかけられるのである。
さらに、これが所属事務所と契約問題でもめて半ば分裂か解散の危機に直面していたカラの五人が、決して諦めずに困難な状況を乗り越えて、再びひとつのグループとして集結し歌っていることを思うと、その言葉に何ともいえない強烈な説得力がこもっているようにも感じられてくる。
そうした流れの極めつけとなるのが、間奏の後の疾走するビートが緩やかにブレイクするパートで歌われる「ひとりじゃないから/未来を信じてる/しあわせ求めて/歩いてゆこう」という歌詞であろう。どんなに辛い困難な状況に直面していても、決してひとりではない。今現在のこの最悪な世界にも、必ずや明るい未来があると信じる気持ちを決して忘れてはいけない。幸せの追求の確信を得るために、今のこの状況を変えるために、この場所から少しずつでも勇気を出して歩き出してゆかなくてはならない。
このあたりの歌詞にはもう、聴き様によっては、大震災で深く傷ついた日本人の心をそっと癒す、優しさに満ちあふれたエールのようにしか受け取れないものがある。このパートには、もはや夏という季節も恋愛の感情も、全く顔を出していない。ここにあるのは、純粋にカラの五人からの真摯なメッセージであり、かなりストレートな今の日本に対する気持ちの表れであるようにも思えてくるのである。
もう二度と五人のカラが見られなくなるかも知れないという瀬戸際の状況で、シングル“ジェットコースターラブ”をチャートの一位に送り込むことで精一杯のエールを送り、困難な状況を乗り越えて五人での活動を再開するための力強い後押しをしたのが日本のファンであった。おそらく、カラの五人は、今回の騒動を通じて、未来を信じることの大切さを知ったのではなかろうか。そして、その思いを、今度は“GO GO サマー!”の歌詞に託して、それを聴く日本の人々のハートへ送り返してくれている。そんな風に感じられてならないのである。
この“GO GO サマー!”という楽曲は、タイトルこそ夏を前面に出し、イケイケな夏の恋愛を後押しする歌となっているが、気分的には半ば「ゴー!ゴー!日本!」という励まし勇気づけ無限のエールを送る歌として聴くことが可能なのである。ここでのメッセージは、こっそりと歌詞の流れの中に忍ばされているというよりも、かなり分かりやすく全体の流れの中から少し浮き出るように歌われている。そうした真っ直ぐな分かりやすい表現とならざるを得ないところも、母国語ではない日本語で歌唱しているカラらしいといえばカラらしいのかも知れない。

現在カラのメンバーは、日本での芸能活動と並行して、韓国での通算三作目のアルバムの録音を行っている。この新作アルバム“STEP”は、9月にリリースされる予定である。そして、このアルバムのタイトル曲“STEP”が、所属事務所との和解後の韓国でのカラの本格的な活動再開曲となる。再び五人組グループとしての結束を確認し、その間に日本でも大きな成功を収めたカラが、どのようなスタイルの楽曲で韓国の歌謡界に凱旋し、いかなる熱狂をもって迎えられるのか、今からとても楽しみである。
ただ、危機的状況を乗り越えて真っ先に母国韓国での五人での活動を再開するのではなく、震災・津波・原発事故と度重なった悲劇に深く沈み込み危機的状況の真っただ中にあった日本のファンのために、強力な“GO GO サマー!”のような新曲を素早くリリースしたということに、実によくカラというグループがもつ庶民的な人間臭さが滲み出しているようにも思える。やはり、歌謡曲とは、それを切実に必要としている人のためにあるのである。そして、“GO GO サマー!”とは、今現在のこの世界で、最も切実に必要とされているタイプの歌謡曲なのである。どんなに世界が最悪で危機的な状況であろうとも、やはり決して「あきらめちゃダメ」なのだ。
わたしたちは、また再び、明るい未来を取り戻すことができるだろうか。「マダマダ間に合う」のならば、本当によいのだけれど。

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