溝!

アクセスカウンタ

zoom RSS Rainbow: 2nd Mini Album SO女

<<   作成日時 : 2011/04/20 03:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

Rainbow: 2nd Mini Album SO女

 2011年春、韓国の歌謡界における女性アイドル・グループの動きが、にわかに大変騒がしくなってきている。ここ数年、異様なまでの盛り上がりぶりを見せているK-POPのシーンであるが、その中でも特にガールズ・グループに関しては、止まるところを知らぬデビュー・ラッシュが続き、幾つものグループがヒット・チャートにひしめき合う状態が、もはや当たり前なことになりつつある。そんな古豪や新鋭が入り乱れ、群雄割拠の様相を呈している女性アイドル・グループ戦線に、この春、とんでもなく巨大な嵐が吹き荒れている。とうとう飽和状態を通り越して、次の段階に進んでしまいそうな予感に満ちているのである。
 もしも、とあるグループが大きなヒットを狙おうとしているのであれば、なるべく他所のグループの動きとかち合わないようにリリース時期を調整するのが、これまでは業界の暗黙の了解となっていた。圧倒的な人気を誇る大物グループとリリースのタイミングが重なってしまっては、駆け出しの新人や若手たちには、どう考えても勝ち目はない。そこには目には見えないが歴然と存在する業界内の古い柵に満ちた力関係が、まざまざと作用してもいる。TVやラジオの音楽番組などへの出演回数を稼ぎ、少しでもメディアにおいて、よい扱いを受けようとするならば、できる限り他の女性アイドル・グループと同時期のプロモーション活動期間とならないように配慮し、周到な戦略を前もって練っておかなくてはならない。
 しかしながら、もはや、そんな悠長なことを言っていられる状況ではなくなりつつあることも事実なのである。延々とリリース・ラッシュが継続している中にあっては、他所に気を遣って、ちょうどいいタイミングを見計らっていては、いつまでも新作をリリースすることができなくなるという事態にもなりかねない。次々とヒットを飛ばし、チャートにおける不在の期間を可能な限り短くして、順調なペースで活動を行ってゆくには、練りに練った過剰な戦略が徒となってしまうことも大いにあり得るのだ。こうした、先の見えない混戦を上手に切り抜ける秘策は、実は最もシンプルに先手必勝であったりもする。

 まずは、現在の春の陣の詳細に移る前に、これまでの動きを少しばかりおさらいしておきたい。11年の初頭まで、約三ヶ月ほど時間を遡ることにする。次から次へと新曲がリリースされ、目まぐるしくチャートが動き続ける、昨今の韓国の歌謡界にあっては、ほんの三ヶ月前のことであっても、かなり以前のことのように感じてしまうのが、実際のところである。そこでは、新しさというものは、日々絶え間なく更新されている。まさに究極ともいえるポピュラー音楽のサイクルが、まざまざと過酷なまでに繰り広げられているのである。

画像 11年1月、いきなり年明け早々に動き出したのは、昨年の“Magic”と“Madonna”での大成功によって一躍ヒット常連組への昇格を果たした観のあるシークレット(Secret)であった。この歌える四人組は、新年のスタート・ダッシュを逸早く図るべく、1月6日にシングル“Shy Boy”を発表したのだ。これが、昨年の勢いを、そのままフォロー・アップする形で、目論み通りに大ヒットを記録する。こうしてシークレットは、誰よりも一足早いタイミングでのリリースによって、混戦に巻き込まれることなく、文字通り一歩先んじることになったのである。また、“Shy Boy”のヒットの直後の3月3日には、メンバーのソン・ジウン(Song Ji Eun)がソロ歌手として“Going Crazy”を発表。ヘヴィなロック・バラード曲で新たな一面を開拓した、この楽曲もスマッシュ・ヒットを記録し、現在のシークレットの人気の高さと絶好調ぶりを強く印象づけた。

画像 一方、シークレットと同様の先行逃切り型の戦略を採用して、一足早く1月中に作品をリリースしたものの、予期せぬ不運にも見舞われて、その戦略を十二分に活かしきれなかったのがJQTである。JQTは、元祖お子様アイドル集団として活躍したi-13の元メンバーが中心となって、09年に結成された四人組。09年の“I Fell For You”と、10年の“No Need To Know”という配信のみによってリリースされた楽曲を地道にヒットさせる、いわゆる下積みの期間を経て、1月20日に発表する初のミニ・アルバム“Peekaboo”で、女性アイドル・グループ戦線の最前線に華々しく名乗りをあげる手筈であった。その準備は、じっくりと時間をかけて周到に整えられてはいたのである。しかし、その大事なリリースの直前に、JQTに誰も予想だにしなかった大きなアクシデントが降りかかってしまう。
 前身のi-13時代からグループの中心的な役割を担ってきた、パク・ミンジョン(Park Min Jung)が、深夜にまで及んだリハーサルからの帰宅途中に、寒い1月の凍結した道で足を滑らせ転倒、アイドルの命でもある顔面を強打してしまったのだ。このアクシデントによってミンジョンの左目付近には大きな痣ができ、血流や視神経にも異常を来したという。一時は左目が見えなくなるほどの大怪我であり、普通ならば入院し安静にしておくべきところであった。しかし、新グループの結成以来、牽引役となって頑張ってきたミンジョンであるから、簡単にここで引き下がるようなわけがない。患部の左目付近を前髪とアイ・パッチで隠して、怪我をおしてTVの音楽番組に出演し、新曲のパフォーマンスを行ったのである。だが、その痛々しい姿からは、ひた向きさや健気さはヒシヒシと伝わってきたものの、グループとしては、やはり出ばなを挫かれて完全に失速してしまっていた。どう見ても、そこでは、JQTが本来もつ力を100%発揮できているようには到底思えなかったのだ。このグループがもっているポテンシャルは、相当に高い。だからこそ、万全な状態でのパフォーマンスが見てみたかった。できるだけ早い時期に、ミンジョンとJQTによる巻き返しが果たされることを期待したい。

 また、どこか映画『アメリカン・グラフィティ』の世界を彷彿とさせる曲調のシークレット“Shy Boy”が大ヒットしたことを受けて、60年代ポップスの様式をリヴァイヴァルさせたレトロ調のポップ・サウンドに一躍脚光があたったのも、この時期のひとつの音的な傾向であった。そして、この動きに実にタイムリーにシンクロしたのが、1月にデビューした新人女性ソロ・シンガー、ハン・グル(Han Groo)であった。デビュー前からダンサーとして知る人ぞ知る存在であったハン・グルは、そのヒップホップやジャズなどで鳴らしたダンサーとしての卓越したスキルを封印してまでも、レトロ・ポップス路線の楽曲“Witch Girl”と“My Boy”で連続ヒットを飛ばすことに成功する。間違いなく、このレトロ調ポップスは、11年初頭のコリアン・ポップのトレンドとなりつつある。この路線の楽曲は、これからも幾つか続いて登場することが予想される。

 ここで、この時期の大物グループたちの動向を、ひとまずまとめておくことにする。

 カラ(KARA)は、1月19日の突然の分裂騒動に端を発する所属事務所DSP mediaとの間の契約問題が拗れ、その後訴訟にまで発展する事態となっている。これによって、事実上、韓国での芸能活動は現在停止の状態にある。ただし、日本においては4月6日に三作目のシングル“ジェットコースターラブ”が発表されており、日本のヒット・チャートにおいて海外の女性グループとしては史上初の初登場一位を獲得するなど、その高い人気ぶりに今のところ全く翳りが見える気配はない。これは、本当にたくさんの人々が、五人のカラが戻ってくるのを待っている動かぬ証拠である。一刻も早い事態の終息が望まれる。また、カラは、新曲“ジェットコースターラブ”の売上げの全額を、東日本大震災の被災地と被災者への義援金として寄付することを表明している。

 少女時代(SNSD/Girls' Generation)は、日本やアジア各国などの海外での活動との兼ね合いから、この時期に本国では殆どまとまった活動を行っていない。現在は、4月27日に発表される予定の日本での三作目のシングル“Mr. Taxi / Run Devil Run”のプロモーション活動の準備に、ほぼ掛かり切りになっていると考えてよいだろう。昨年の10月27日に、韓国での三作目のミニ・アルバム“Hoot”が発表されたばかりであり、通例からいっても次のリリースは早くとも今年の夏以降になるものと思われる。
※追記 その後、少女時代は11年9月にニュー・アルバム(三作目)を発表する予定であることが、所属事務所のS.M. Entertainmentによって公表された。

 また、昨年12月1日に二作目のミニ・アルバム“Temptastic”を発表したティアラ(T-ara)や、11月29日に三作目のシングル“How Dare You”を発表したシスター(Sistar)も、しばらくはリリースの予定がなさそうだ。おそらく、無理して急造した新曲で、この春のシビアな戦線に急遽参戦してくるようなことはないと思われる。ただし、実はティアラに関しては、早くも5月に新たなアルバム(二作目)を発表するという噂が、ここにきて急浮上してきている。ここで一気に攻勢をかけて、もうワン・ランク上に躍り出ようという策略であろうか。その動向が、大いに注目される。

 このところ個別の活動が活発であったアフター・スクール(After School)は、昨年末に新メンバーが加入し九人組となったものの、今のところまだグループとしてのまとまった活動はできていない。2月14日には満を持してリーダーのカヒ(Kahi)が“The First Mini Album”で念願のソロ・デビューを飾り、昨年からアジア各国で大ブレイクしているグループ内グループのオレンジ・キャラメル(Orange Caramel)は、3月31日に新曲“Bangkok City”を突如発表し、いずれもヒットを記録している。そして、この勢いを受けて、いよいよ本体のアフター・スクールが動き出す予定であるらしい。デビューから約二年、遂にファースト・アルバムが4月22日に発表されるのである。この作品は、今年の春の女性アイドル・グループ戦線の大きな目玉となるであろう。

画像 また、昨年9月にデビューから二ヶ月足らずにも拘らず突然のメンバー交代劇があり、ちょっとゴタゴタとしていたのは、質の高いヴォーカルとダンスでデビュー前から話題となっていた五人組のガールズ・デイ(Girl's Day)。しかし、ここにきて、ようやく新メンバー加入後の新体制が馴染みだし、徐々に勢いを盛り返しつつある。3月17日に発表された三作目の配信シングルからの新曲“Twinkle Twinkle”は、底抜けに明るくノリのよいダンス・ポップとなっており、本格的なブレイクの兆しを予感させるスマッシュ・ヒットとなった。かなり潜在的に高いポテンシャルを秘めているグループではあるので、何かのキッカケで一気に大化けしそうな可能性は大いにある。今後のガールズ・デイは、要マークである。


 そして、この時期には、有望な新人グループも幾つかデビューしている。
画像 まずは、少女時代の大ヒット曲“Gee”を手がけたことで名を挙げたE-Tribeがプロデュースする六人組、ダル・シャーベット(Dal★shabet)が、年明け早々の1月3日にミニ・アルバム“Supa Dupa Diva”で鮮烈にデビューした。そして、早くも4月14日には二作目のミニ・アルバム“Pink Rocket”がリリースされている。まさに、一気に勝負を賭けている感じである。ヒット・メイカーのE-Tribeによるグループだけに、やはり楽曲のクオリティはかなり高い。
※追記 ダル・シャーベットの二作目“Pink Rocket”は、非常に出来のよい作品となっている。ほんの三ヶ月前の前作よりも、見違えるほどにグループの個性が明確になり格段に進歩しているのだ。すさまじい成長ぶりである。このままのペースで順調にゆくと、いつの日か、このダル・シャーベットが、あの“Gee”を凌ぐほどの歴史的な名曲を大ヒットさせてしまうかも知れない。期待大である。
 また、この動きに対抗するかのように、これまでビッグバン(Bigbang)、アフター・スクール、ソン・ダムビ(Son Dam Bi)、シスターなどのヒット曲を手がけてきたBrave Brothersが、秘蔵ッ子の五人組、ブレイヴ・ガールズ(Brave Girls)をデビューさせている。 4月8日に発表されたデビュー・シングル“Brave Girls The Difference”では、十八番のブレイヴ印なサウンドで一味違うコリアン・ポップを展開している。
画像 そして、一味違うといえば、極めてセンセーショナルなガールズ・トリオ、INYを、ここで取り上げぬわけにはゆかないだろう。3月18日にシングル“Do You Have A Dream”でデビューしたINYは、その蓮っ葉なルックスが醸し出すイメージと、シングルのリード曲“Shake It! Shake It!”でのラフなヒップホップ・ソウル・サウンドにマッチした攻撃的な歌唱で、ひと際異彩を放っている。韓国歌謡界のグループにしては珍しく、どこかストリートの香りが濃厚にする佇まいが、何とも特異だ。かなりアクの強い三人組なのだが、その健闘を心より祈りたい。

 このように、大物や中堅、若手が入り乱れて大混戦を繰り広げている中にも、次々と初陣を飾る新たな世代が登場し、互いにしのぎを削り合いながら、諸先輩の背を猛烈に追いかけているのが、この春の女性アイドル・グループ戦線の現状である。

 さらに、09年にデビューしたf(x)や、昨年の新人王、ミスA(miss A)といったところも、この激戦の最中に新作のリリースを予定しているようである。
画像 韓中台米混合のグローバルな五人組、f(x)は、4月20日にファースト・アルバム“Pinocchio”をリリースする。これは、昨年7月に足を負傷したアンバー(Amber)の故郷米国ロスアンゼルスでの怪我の快復を待って実質的に活動休止状態にあったグループの、約一年ぶりの新作にして復帰作となる。ちょっとしたブランク空けの久々のf(x)であるだけに、これには嫌が応にも期待が高まる。一時は、誰もが帰国したままのアンバーの復帰を半ば諦めかけていたであろうから。
 そして、韓中混合の四人組、ミスAは、5月中にファースト・アルバムを発表する予定であることが芸能紙によって報じられている。昨年7月1日にリリースされた“Bad Girl Good Girl”で華々しいデビューを飾り、早くも9月27日に発表された第二弾シングルからは“Breathe”をチャート上位に送り込むなど、新人とは思えぬ圧巻の大活躍ぶりを見せたパク・ジニョン(Park Jin Young)の秘蔵ッ子グループが、二年目のジンクスを撥ね除け、どれほどまでに成長した姿を見せてくれるのか。ミスAの初アルバムに対する期待と注目度は、極めて高い。

 こうしてザッと眺めてゆくと、カラと少女時代の二大巨頭、そしてちょうどリリースとリリースの狭間の時期にあたる2NE1、シークレット、シスターあたりを除いた、ほぼ全てのグループが、この春の異常な混迷ぶりを呈する戦線に、ズラリと顔を揃えていることがわかる。突き詰めて考えてゆくと、この状況には、これまでカラが占めていた枠をめぐる、ある種のパイの争奪戦という側面もあるように思われる。ひとつの椅子が空位になっただけで、女性アイドル・グループ戦線は、にわかにこれほどまでの活況を見せることになるのである。とてもシビアな話ではある。しかし、これこそが資本主義経済のシステムにおいて累々と積み重ねられてきたポップ・ミュージックのサイクルの有り様、そのものなのである。古くなった商品が陳列棚から片付けられれば、そこにすぐさま新しい商品が次々とディスプレイされる。このようにして、全ては巡り巡ってゆくのである。

 そんな過酷な状況の中で、4月上旬の同日に揃って新作をリリースし、真っ向から激突することとなってしまったのが、4ミニッツ(4Minute)とレインボー(Rainbow)である。

画像 スタイリッシュでダンサブルなエレクトロ・ヒップホップ曲で日本でも人気を博す五人組、4ミニッツは、遂に韓国におけるファースト・アルバム“4minute Left”を4月6日にリリースした。09年7月のデビューから数えて約二年越しの初アルバムである。ただし、このところ精力的なリリースが続いている日本においては、すでに昨年の12月15日にファースト・アルバム“Diamond”が、一足早くリリースされていた。おそらく、こうした経緯も、韓国にファンにとっては、さらに待たされている感を強めていたのではなかろうか。まさしく、この“4minute Left”はファン待望の一作なのだ。これが、ひとかたならぬ熱狂をもって迎え入れられないわけがない。そして、その熱狂を見越していたかのように、アルバム発表の直前の3月29日にアルバム収録曲から5曲を配信で先行リリースしたミニ・アルバムからの“Heart To Heart”と、アルバムのリード曲である“Mirror Mirror”の2曲を、同時にチャートに送り込むという、実に強かな活動戦略が展開されていたりもする。特に“Heart To Heart”は、これまであまり前面に出ていなかった4ミニッツ流のキュートさを存分なまでに炸裂させた、春らしく爽快にポップな楽曲であり、このグループの新たな等身大の女の子的な魅力を垣間見せることに見事に成功している。

 そして、ようやく、ここで本稿の主役であるレインボーの登場となる。かなり前置きが長くなってしまったが、それだけ、この春の女性アイドル・グループ戦線が大変なことになっているのだから致し方ないだろう。こうした大きくうねりまくる韓国歌謡界の動きの中で、まるで清水の舞台から飛び降りるように放たれたのが、レインボーの新作“SO女”だ。この大混戦の中で勝負に出るのは、殆ど賭けのようなものである。それなりの入念な準備をし、納得のゆくクオリティのものを作り上げてからでしか、流れの中に歩み出せないに違いない。そうした準備を整えても、このレインボーのように、同じ09年デビュー組のライヴァル、4ミニッツと新作のリリース日がかち合ってしまったりするのである。これだけ参戦者が多くては、直接対決も止む無しといったところなのであろう。だが、そうなると、ヒット・チャートの順位だけで結果を判断されてしまう世界というのも、何やら機械的で味気ないものにしか思えなくなってくる。まあ、そのあたりは、いつの世も変わることのないアイドル・グループの宿命であるのかも知れないが。しかし、結論からいってしまえば、レインボーは、しっかりと全ての要素をクリアし、どんな相手とも互角に張り合えるだけの、かなりクオリティの高い傑作を携えてカムバックしてくれた。個人的には、もうそのことだけで十分満足であったりもする。ただ、この“SO女”が、11年のコリアン・ポップ・シーンを代表する作品のひとつとなることは、今からすでに約束されているも同然であろう。それを予感させるに十分な輝きが、この作品にはある。

画像 眉目秀麗な七人組、レインボーは4月6日に二作目のミニ・アルバム“SO女”をリリースした。ここには5曲の楽曲が収録されており、そこにメイン・トラック“To Me”のインスト・ヴァージョンを加えた全6曲を収録した作品となっている。これは、レインボーにとって、09年11月17日に発表されたデビュー作のミニ・アルバム“Gossip Girl”以来の、約一年五ヶ月ぶりのリリース作品となる。引きつけるだけ引きつけておいて、全力を挙げて思いきり振り抜いて放った、会心の一撃といった感じだろうか。まさに、豪快な放物線を描いて外野の頭上を越えてゆく、虹色のアーチといったところである。
 レインボーというグループの持ち味は、デビュー作“Gossip Girl”の頃から、若い女性がもつ様々な表情を外連味なくストレートに歌いこなせる部分にあった。これを、またしてもグループの名に準えていうならば、七色の心の色を歌で表現できるという感じであろうか。そういった部分が、この久々の新作では、よりハッキリと鮮明に描き出せるようになってきているように感じられる。その歌唱に、どこか懐の深さや幅の広がりが見受けられるのである。また、そこに、レインボーならではの爽やかな色気や嫌味のないセクシーさが濃密に漂っているのも、大きな魅力だ。この新作における表現力の深化・進化には、グループのデビューから約一年五ヶ月の間の確かな成長ぶりが、まざまざと示されているように思われる。七人のメンバーがそれぞれにもつハイ・レヴェルな資質と、迷いのない直球のダンス・ポップ路線が、絶妙にマッチし、グループとしてひとつにまとまった時に放出されるエネルギー量は、格段にアップしている。すでに、どこか大物の雰囲気すら漂わせているのだ。メンバーそれぞれの個性が際だち、魅せるグループとしての地力が、確実に備わりつつある。
 そして、DSP media所属のアーティストならではの、圧倒的なまでの楽曲のよさも、レインボーというグループを語るうえで外すことのできない強みである。先にデビューしたカラもそうであったが、この事務所は伝統的に優れた楽曲を所属アーティストのために用意する能力に、本当に長けている。平たく言えば、A&Rが抜群なのだ。そこにDSP mediaの最大の特徴があるといってもよい。よって、レインボーも、非常に楽曲には恵まれている。ただし、初期の頃にはカラが選ばなかった曲のお下がりが回ってきているような雰囲気も、何となくあったりもしたのだけれど。
 今回の作品“SO女”は、ハウス・ミュージックのDJ兼プロデューサーとして活躍するDaishi Danceが、日本から作曲と制作で参加していることも話題である。そのDaishi Danceが手がけた本作のメイン・トラック“To Me”では、これまでよりもよりダンス・ミュージックという部分に焦点をあて磨きをかけた、本格派のダンス・ポップ曲としてのクオリティを高めたサウンドが展開される。そして、そうしたサウンドのレヴェル・アップとともに、レインボーの歌唱や存在感そのものも、それに対応するように、一段とステップ・アップしていることも確かなのである。この二作目のミニ・アルバムにおいて、確固たるレインボーらしいスタイルの歌の世界や音の世界が築き上げられたようにも思われる。間違いなく、この“SO女”はレインボーの歴史において、ひとつのエポック・メイキングとなるであろう一作である。
 また、非常に喜ばしいことには、ここには新曲だけでなく昨年の大ヒット曲も併せて収録されているのだ。10年の夏から秋にかけて、配信のみでリリースされた“A”と“Mach”の2曲の音源が、遂にCD化されたのである。これらの楽曲は、デビュー作の“Gossip Girl”は発表したものの、どうしても先輩のカラの陰に隠れてしまい、いまいちパッとしていなかったレインボーが、ようやくブレイクのキッカケを掴むことができた、記念すべきヒット曲なのだ。ある意味では、真のレインボーの時代は、この“A”と“Mach”の2曲から幕を開けたといってもよい。そんな重要曲であるだけに、この初CD化には、とてつもなく大きな意味がある。

 ミニ・アルバム“SO女”の幕開けを飾るのは、“So Cool”。今やレインボーの楽曲のトレードマークとなりつつある小気味よいカッティング・ギターに導かれて走り出す、ロッキンなエレクトロ・ダンス・ポップ曲である。クールに畳み掛けるラップ・パートで煽るだけ煽り、そこから一気に清々しくもメロディアスなサビになだれ込む流れも、まさにレインボーらしいスタイルだ。エキゾティックなシンセのフレーズによるエレポップ風味のスパイスも、とてもよく効いている。

 そして、これに続くのが、本作のメイン・トラック“To Me”である。もう、イントロの流麗なピアノとストリングスからして、ただならぬ空気がムンムンと漂っている。やはり、これまでのコリアン・ポップの世界にはあまりなかったタイプの楽曲である。全体的にライト・タッチながらも、グイグイと聴く者をその世界に引き込んでゆく、不思議な魔力がある。絶妙な匙加減の押し引きが要求されるダンス・ミュージックのヴォーカル・ワークに、レインボーの七人がキッチリと対応し、素晴らしいまでの音と歌との整合感を醸し出す。本当にレインボーのヴォーカルは、ダンス・サウンドとの相性が、すこぶるよい。雑味やアクが全くなく、決して清涼感を失うこともない。そうした中庸の美こそが、持続するグルーヴ感を求められるダンス曲においては、絶対的な強さを発揮するのだ。何の脈絡もなくトライバルなオエオエ・コーラスから、綾瀬はるか似のリーダー、キム・ジェギョン(Kim Jae Kyung)による一声(「ナルブロヴァ」、「ナルブッチャバ」)を挟んで、ハンド・クラップが弾ける「カム・カム・カム・トゥ・ミー」の決めフレーズへの一連の流れ。このパートを耳にするだけで、何故か異様なほどの高揚感が止めどなく湧き出てくる。すさまじい。とてつもない一曲である。
 個人的には、オエオエ・コーラスからのサビの部分のリフレインを活かしたハウス・リミックスのピアノ・ダブ・ヴァージョンを、是非とも聴いてみたい。できれば、テリー・ブルス(Terry Burrus)やポール・シャピロ(Paul Shapiro)、富家哲などの錚々たる面々が参加した、フランキー・ナックルズ(Frankie Knuckles)による往年のDef Mix Productionsのリミックスで。
 また、この楽曲のパフォーマンスでは、中盤でレインボーの過去のヒット曲のタイトルを歌い込んだキレのよいラップを披露するコ・ウリ(Koh Woo Ri)の活躍ぶりが、特に目立つ。このあたりにも、これまでのジェギョンがひとりでグループを引っ張ってきた形からの、確実な成長の跡が窺える。成長の跡といえば、末っ子のチョ・ヒョニョン (Cho Hyun Young)の堂々たる歌いっぷりも素晴らしい。レインボーが、本当に、今まさに物凄いグループになりつつある途上にあるということを、この“To Me”のパフォーマンスの映像を見るたびに強く実感させられる。

 3曲目は、“I Said You're The One”。こちらは、しっとりと爽やかな旋律が吹き抜けてゆくミディアム・テンポのナンバーである。清楚でフェミニンな雰囲気のコーラスが、とても印象的だ。これまでは、ほぼ少女時代の独壇場であった領域に、遂に新勢力のレインボーが名乗りを挙げてきたという感じもなきにしもあらず。確かに、もはやレインボーは、同じ事務所のカラの妹分というよりは、少女時代の対抗馬といった扱いのほうが、正しい彼女たちに対する評価となるのではないかと思えてくる部分もある。グングンと急成長しているレインボーを、決して侮ったり見くびったりしてはいけない。

 4曲目には、遂にあの名曲“Mach”が登場する。“Mach”は、10年10月20日に配信でリリースされた、昨年秋のスマッシュ・ヒット曲である。ドッシリとしたミッド・テンポの四つ打ちトラックにのせて展開される、ヘヴィ・ファンクなダンス・ナンバーだ。この、どこか90年代初頭っぽい、メイン・ストリームのR&Bとクロスオーヴァーしていた時期のハウス・ミュージックを思わせる、何ともいえないギトギト感やキラキラ感のある曲調には、やはりどうしてもグッときてしまうものがある。思いきり、あの頃の感覚に満ちている、ブラスとギターのアレンジが、本当に心憎い。まさに、これを聴いていると、土曜日の深夜に芝浦のGoldへと繰り出す時の揚々たる気分が、約20年の月日を越えてアリアリと蘇ってくるような感じもする。個人的には、10年のコリアン・ポップのうちでも余裕でベスト3に入る一曲。この楽曲のもつ琴線をダイレクトにヒットする魅力には、おそらくいつまでも決して抗うことはできないだろう。

 そして、この作品の締めくくりとなる5曲目に収録されているのが、泣く子も黙る大名曲の“A”である。“A”は、10年8月12日に配信でリリースされた、昨年の夏の大ヒット曲だ。猛烈な暑さに見舞われた10年8月のヒット・チャートは、シークレットの“Madonna”とレインボーの“A”の2曲によって、ほぼ席巻されていたといっても過言ではないだろう。今や、この楽曲は、押しも押されもせぬレインボーの代表曲となっている。また、レインボーが成功への階段に足をかけた歴史的な一曲でもある。あの当時、もしも、この“A”という楽曲が、カラのレパートリーとなっていたら、現在のレインボーの姿は、全く違っていたものになっていたであろう。もしかすると、いまだにブレイクのキッカケを掴めずに、燻り続けている可能性だってある。そういう意味でも、この“A”の存在は、本当に大きい。やはり、全ての流れは、この曲から大きく変化していったのである。レインボーの代名詞ともなっている、小気味よいサーフ・ロック的なギターがリズミカルに跳ねる、エレクトロ・ロック・スタイルのダンス曲。この曲のイントロを聴く度に、あの夏の日の過酷なまでの暑さがぶり返してくる。
 この“A”といえば、TVの音楽番組におけるパフォーマンスでの、コーラス部分のブリッジ・パートで見せた、まるで曲中で脱衣するかのようにシャツの裾を身体の前でクロスした両手で持ち上げる振り付けが、当初はとても大きな話題となった。しかし、すぐに、このセクシーな振り付けが、TVの音楽番組で放送するには扇情的で刺激的すぎるという理由で、倫理規定のチェックの対象となり、結局はシャツの裾に手をかけない非常に大人しめの振り付けへと(放送局によっては)変更することを余儀なくされる事態へと至った。最終的には、この振り付けの問題とは殆ど関係なく、純粋に楽曲のよさで大ヒットを記録することとなっていったのだが、脱ぎそうで実はただシャツの裾を少しめくるだけという完全に主導権を女性が掌握している強かな雰囲気や、レインボーらしい爽やかな色気を感じさせる、華麗なパフォーマンスを見ることができなくなってしまったことは、非常に残念であったというしかない。
 また、TVの音楽番組でのパーフォーマンスという点では、この曲を歌う際のレインボーのメンバーのコスチュームにも、かなり特徴的なものがあった。七人全員が、シンプルなノー・スリーヴのシャツにショート・パンツという揃いの衣装に身を包み、髪は後ろで結わいたポニーテイルにセットして、まるで七つ子のような佇まいで溌剌と歌い踊ったのである。これは、実に印象的な光景であった。パッと見ただけでは、誰が誰だか全く見分けがつかない感じであった。それは、多くの女性アイドル・グループが、各メンバーの個性を強く押し出してゆくことで、他との差異化を図ろうとする中で、そうした傾向を完全に逆手にとった戦略が、バッチリと功を奏している感じでもあった。これも、ある意味では、初期の少女時代とよく似通ったグループとしての色やキャラクターの打ち出し方であったのかも知れない。やはり、玉石が入り乱れた混戦の中では、少しでも敢えて他とは異なることを行う勇気が必要であり、実際に、それが最も効果的な戦略となったりもするのである。この“A”でのパフォーマンスの場合は、各メンバーの没個性が、ひとつのグループ全体としての個性を光らせる形となって表出されていた。ややアイロニカルな方法論ではあるけれど。とにかく、何か違うことを仕掛けて、何かしらの結果を導き出したものの勝ちなのだ。その点だけは、本当にどこまでもシンプルにそこにある。
 この“A”という名曲の誉れ高い素晴らしい楽曲に恵まれ、ブレイクのキッカケを掴んだのは、やはりレインボーというグループが元々もっていた運命によるものであったのだろう。そして、このまたとない素材と好機を生かして、この楽曲をシッカリと大ヒットさせ、何かをガラリと変える一曲にすることができたのは、やはりレインボーというグループに元々備わっていた実力ゆえであったに違いない。雨上がりの空に大きく弧を描く七色に虹は、この10年の8月に、その全てを一気に自らの手で掴み取ったのである。

 最後に、多くの女性アイドル・グループと同様に、このレインボーにも、日本進出に関する噂は、やはり真しやかにある。所属事務所としても、カラの日本デビューが一定の成功を収めているだけに、これに続きたいという思いは当然のようにあるだろう。しかし、現在のコリアン・ポップであれば、何でもかんでもブームに乗じて日本で受け入れられるであろうという考え方が、もしそこに少しでもあるとしたら、あまりにも浅慮というしかない。カラも少女時代も、その日本での成功の裏には、ある程度の確固たる説得力があったということを忘れてはならない。誰だって、眉唾ものの韓国トップ・アイドルを積極的に応援しようという気にはならないであろうから。
 今や、国際的な人気を博し、高い評価を得ているコリアン・ポップのアーティストには、とにかくハイ・レヴェルなエンターテインメント性が期待されている。そして、それを魅せるためには、あらゆる面でのシッカリとした説得力が備わっていなくてはならないことも確かなのである。現在のレインボーが、そうした域にまで達しているかどうかは、まだ少しばかり疑問である。ただ、この“SO女”で、そこに肉薄する大きな一歩を踏み出したことは間違いないところであるだろうし、選ばれたものしか立つことのできぬトップを目指す着実な成長の跡をいやというほど見せてくれてもいる。きっと、そう遠くない将来には、韓国を代表する女性アイドル・グループとしての堂々たる七人によるパフォーマンスを、日本でも堪能することができるだろう。その日のためにレインボーも、すでに着々と準備を進めている。多忙なスケジュールの合間をぬって、全員で日本語を習得するための勉学に励んでいるというのだ。実に健気である。いまからすでに、ジェギョンとタモリが並んで座って日本語で会話する場面が目に浮かぶようだ。タモリ「やっぱり、似てるって、よく言われるんじゃない」、ジェギョン「はい」みたいな感じで。とても楽しみだ。(11年)

Rainbow: 2nd Mini Album SO女(追記)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
Rainbow: 2nd Mini Album SO女 溝!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる