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zoom RSS Capullo: Informatica romantica para avanzados (3)

<<   作成日時 : 2010/07/11 03:00   >>

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III

Nueva musica electronica en Mexico.

 10年5月31日、カプーリョの“Informatica romantica para avanzados”がリリースされた日の前日に、実は、もうひとつの素晴らしいエレクトロニック・ポップ作品が、同じメキシコから登場していた。それが、ザ・モックス(The Mocks)の“M Is Adventure”である。
画像 ザ・モックスは、メキシコ北東部の都市、モンテレーを拠点に活動する男女二人組のユニットである。メンバーは、ヴォーカリストで作詞も担当するイーラ・ゴンザレス(Ela Gonzalez)と、プログラミング担当でベーシストでもある作曲家のマリオ・ブロド・デル・エンジェル(Mario “Blodo” del Angel)。このフューチャリスティックなニュー・ウェイヴ/シンセポップのサウンドの創造を標榜するプロダクション・ユニットは、05年に結成されており、おそらくは、この“M Is Adventure”が初の正式なリリース作品となるものと思われる。このアルバム“M Is Adventure”は、ザ・モックスの運営するTumblrのサイトを通じてセルフ・リリースされた。
 アルバムのタイトルは、謎めいていて、どこか暗号のようでもある。アドヴェンチャーであるところのMとは、ザ・モックスの頭文字でもあるし、より大きく捉えて音楽のことを指しているようにも受け取れる。それぞれに様々な読みができるタイトルだといえるだろう。ただし、そこには、カプーリョの“Informatica romantica para avanzados”にあったような底抜けの明るさからくるものと思われる微妙なおふざけ的要素は、殆どない。同じように謎めいてはいるのだが。そこには、ラテン的な緩いギャグ感覚は一切込められておらず、どこまでも真っ直ぐに謎めかしているだけなのである。そして、ザ・モックスのエレクトロ・サウンドからも、音楽に対する実にシリアスな姿勢が感じ取れる。そのシリアスさが、アルバムのタイトルにもにじみ出しているのだ。だからといって、カプーリョの音楽に対する姿勢に、シリアスさの欠片も感じ取れなかったといっているわけでは決してない。カプーリョはカプーリョで、どこまでもシリアスに伝統的なラテン・ダンス・サウンドのおふざけパーティ・グルーヴを追求しているのだから。
 そのタイトルの謎めきに感じられる対比と同様に、ザ・モックスの音楽的な側面においても、カプーリョのそれに濃密に漂っていたラテン的な要素は、全くといってよいほど大きく前面に出てくることはない。過去のエレクトロニック・ダンス・ミュージックのサウンド・スタイルに深く影響を及ぼしてきた、リズミックでグルーヴィなラテンのエッセンスを、根幹から掘り起こし逐一なぞってゆく作業を、カプーリョは、骨の髄まで染み込んだラテンの感覚に忠実に無意識のうちに行っているような節があった。しかし、ザ・モックスの場合は、これを意識的に退けて、ダンス・ミュージックの一大トラディションであるラテンの要素が放つ強烈な引力に、逆らい続けているようでもある。そこでは、複雑に絡みあうラテンの揺らぎよりも、より直線的な疾走感こそが重要視されている。こうした意識的で大真面目な音楽性の追求の姿勢もまた、ザ・モックスの存在そのものにもシリアスさをまとわせるに十二分だといえるかも知れない。ザ・モックスには、どこか仲間内の軽いノリとは程遠いものがある。
 ザ・モックスのエレクトロニック・ポップ・サウンドは、オールドスクールなエレクトロやラテン・フリースタイルではなく、完全にヤズー(Yazoo)やデペッシュ・モード(Depeche Mode)などが築き上げた伝統の方向を向いたものとなっている。それは、80年代初頭の黎明期から脈々と連なる硬質で硬派なエレポップの流れに属する音だといってよいであろう。いわゆる正統派のサウンドなのである。ザ・モックスは、このスタイルの流れを忠実に追っている。これは、ここ最近の実に本格的でピュアなエレポップ/シンセポップのリヴァイヴァルの動きと呼応するものだといっても間違いではなかろう。00年代に始まった80年代ニュー・ウェイヴの再発見や回帰のムーヴメントは、最新のエレクトロニック・ダンス・ミュージックのトレンドの動きともシンクロしながら、様々なスタイルの新たなエレクトロニック・ポップ・アクトを輩出し続けている。そして、この動きは、遂にレディ・ガガ(Lady Gaga)のような時代の寵児の如き突出した世界的スターをも生み出してしまったのだ。
 そうしたエレポップ・リヴァイヴァルの動きの中でも、音楽的な面においても特に注目に値する存在といえるのが、ラ・ルー(La Roux)ではなかろうか。ラ・ルーは、08年末にセンセーショナルなデビューを果たした、シンガーのエレノア・ジャクソン(Eleanor Jackson)と、プロデューサーのベン・ラングメイド(Ben Langmaid)からなるプロダクション・ユニット。シングル“Bulletproof”は、09年から10年にかけて英米で超ロング・ヒットを記録している。そのサウンドは、明らかに80年代のオリジナル・シンセポップからの強い影響を受けたものである。完全にヤズー(Yazoo)やデペッシュ・モード(Depeche Mode)の音を、モロに21世紀的なやり方でなぞっているといってよい。ただ、そのシンプルでストレートな歌と電子楽器とが一緒くたになって迫りくるサウンドは、驚くほどの斬新さをたたえたものであることは間違いない。ゴテゴテと過剰にプロデュースされた音楽がはびこる高度に発展した作り込む時代のど真ん中に、ラ・ルーの新世代シンセポップ“Bulletproof”が、まんまと風穴を開けてしまったのである。また、この大きな成功によって、エレクトロニック・ポップ・サウンドの今日的な有効性は大々的に証明されることにもなった。そして、世界中の無名の無数のエレクトロニック・ポップ・アクトの活動にも俄然拍車がかかっていったのである。
 そのような、本来は一過性のものであるはずのリヴァイヴァル現象が何かを突破してしまった、ちょっと抜き差しならぬ状況の中に登場したのが、このザ・モックスであり、アルバム“M Is Adventure”なのである。このアルバムには全10曲が収録されているが、どの楽曲もエレポップ/シンセポップの正統なる様式を今に継承する音として、とても完成度の高いものとなっている。ザ・モックスは、このエレクトロニックなサウンドに、極めてシリアスに取り組んでいるのである。その姿は、まるで歌と電子音だけで、広大なる世界と過酷な現実に挑みかかろうとしているかのようである。これには、どこかラ・ルーのそれと大いにダブるものがある。だた、それくらいの強い気概がなくては、二人組の音楽ユニットなど、猛烈にうねり狂う情報の大波にさらわれて、簡単に存在もろとも掻き消されてしまうのだ。ザ・モックスの脇目もふらずにストレートに突進するエレクトロニック・ポップ・サウンドは、まさに腹をくくった音でもあるのである。その完成度の高い音は、大いなる可能性を秘めた、眩しく光り輝く世界から紙一重のところまで確実に接近している。今や、明らかに時代の追い風は、もはや誰にも抗しきれぬほどに吹き続けている。ここで、一気にうまく風を掴むことができれば、ひょっとするとひょっとしてしまうかも知れない。

 ほぼ同時にデビューしたメキシコの二組のアーティスト。カプーリョとザ・モックス。音のタイプやスタイル、トラディショナルなラテン・ミュージック(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)との距離の取り方などには、微妙に異なる部分もあるが、いずれもエレクトロニック・ポップなサウンドを武器に世界に向けて斬り込んでゆこうとしているところはピタリと重なる。弾けたチープなパーティのノリだろうが、シリアスな正統派のシンセポップであろうが、問題は、楽曲として、音楽として、リスナーの耳に受け入れられるかどうかでしかない。一部のマニアに熱狂的に受け入れられるのも、世界的に成功し幅広いオーディエンスを獲得するのも、実際には、そう大して変わりはない。音楽は、純粋に音楽として楽しまれれば、それで一応は音楽としての全てが全うされたことになるのだから。どこに成功のレヴェルを設定するかによって、その成功の形は、様々に異なってくる。とりあえず、カプーリョとザ・モックスにとっては、まずはそのリリース作品を、ダウンロードやストリーミングという形で聴かれるということが、ひとつの成功となるのではなかろうか。もし、その先があるとしても、全てはここで聴かれるべき人に聴かれるという事象が実際に起こらなくては何も始まらないのだ。しかもまあ、その作品を聴く限り、どちらも非常に将来が有望であることには違いはない。カプーリョも、ザ・モックスも、これからが本当に楽しみな逸材なのである。
 ただ、メキシコという地から、とても質の高いエレクトロニック・ポップのニュー・アクトが、相次いで登場した、この事実には、ちょっとばかし驚かざるを得ない。打ち合わせをしたわけではないのだろうが、図らずも全く同じタイミングでのリリースとなっているのには、ただならぬものを感じてしまったりもする。はたして、時代の何が、そんなにも音楽の流れを(例え局所的にでも)エレポップ/シンセポップへと激しく駆り立てているのであろうか。いったい、メキシコで何が起きているのか。中南米の音楽に何が起きているのだろう。ラテン・ミュージックのビートは、どこへ向かってゆくのか。大きなうねりの発信地となっている南半球。かつて第三世界と呼ばれた、世界の外側で見捨てられ、見えざるものにされていた一切合切が、異様な唸りをあげて沸騰している。ヴヴゼラが鳴っている。躍動するビートが、エレクトロ・サウンドを丸呑みする。このうねりと沸騰の中で何かが大きく弾けて四方八方に飛び散るとき、もしかすると世界の流れは本当に大きな転換点を迎えることになるのかも知れない。(10年)

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