溝!

アクセスカウンタ

zoom RSS Part Rocket: In Limine

<<   作成日時 : 2009/06/25 21:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

Part Rocket: In Limine
Lost Children LostChildren052

画像 ロンドンを拠点に活動するエクスペリメンタル・ロック集団、パート・ロケット(Part Rocket)の新作“In Limine”。リリース元は、前作の“Kneel Before The Throne And Drink The Blood Of Your Own”に続いて、UKのポスト・ロック専門のネットレーベル、Lost Childrenである。リリース日は、08年7月10日。
 パート・ロケットは、ウェールズ南部のカーディフにおいて、ドラマーのガレス(Gareth)とベーシストのクリス(Kris)を中心に結成された。その後、ロンドンへ進出し、04年にオンライン上でセルフ・リリースした“Good Bye Morning Satellite”でデビュ−を果たした。基本的には、いわゆるロック・バンドというよりも、グループの中心人物であるガレスとクリスを軸とする音楽集団、もしくはユニット的な色合いの強いバンド・プロジェクトであるといえる。そんな先天的な性質があるためか、この2名の主軸メンバー以外の入れ替わりは、実に頻繁で激しい。このあたりの動きは、どうやら、ロンドンのアンダーグラウンド・シーンで活動している、メイヤーズ・オブ・ミヤザキ(Mayors of Miyazaki)、ザ・ドッグハウス・ライリー・バンド(The Doghouse Riley Band)、ルーテナント・ロキ(Lieutenant Loki)といった、様々な音楽スタイルのバンド間での親密な交流から生じる、やや近親相姦的に入り組んだメンバーの交代劇とも関連しているようだ。つい最近まで、こちらのバンドでギターを弾いていた人が、気がついたらあちらのバンドでベースを弾いている、とか。かと思えば、いきなりベーシストが、ほかのバンドに移籍して、後任が見つかるまでライヴ活動は休止、とか。非常に出入りと移り変わりが慌ただしい界隈なのである。(補足。ルーテナント・ロキは、ウッデン・フリート(Wooden Fleet)と改名したようである。)
 本作“In Limine”のレコーディング作業を開始した、約1年前のパート・ロケットは、5人組の音楽集団であった。だがしかし、その録音作品が、ようやく日の目を見た現時点でのメンバーは、もうすでに4人に減少してしまっている。紅一点であったギター兼ベースのクレア(Claire)とギタリストのポール(Paul)の、2人のメンバーが相次いで脱退し、新メンバーのギタリスト、ネイザン(Nathan)が新加入している模様だ(ただし、このネイザンは、“In Limine”の録音にもシンバルを叩くゲスト奏者として一部に参加していた形跡がある)。ちなみに、残りの3名、ドラマーでプロデュースも手がけるガレス、ベース兼ギターのクリス、そしてギター兼ベースのマット(Mat)という顔ぶれは、今のところ“In Limine”以降のパート・ロケットの不動のメンバーとなっている。
 パート・ロケットにとって通算3作目となる“In Limine”で展開されているのは、タイトにきまるリズミカルで躍動感のある複雑なアンサンブルを軸とした、緩急と強弱の両端を自在に行き来する、動的なダイナミズムを満載したマス・ロックである。全5曲が収録されているが、いずれの楽曲もよく練られている。変拍子のグルーヴの組み立てや、絶えず動き続け交錯するフレーズの構成や組み合わせなどが、マス・ロックの世界では、聴く者の耳をピッタリと離さずに惹きつけておくための大きな鍵となる。それらの重要なポイントを、パート・ロケットは、実に巧みに全体の流れを一瞬たりとも滞らせることなくクリアしてみせるのだ。本作のための楽曲制作が開始されたのは、今から約2年半も以前のことであるという。それだけの長い時間をかけただけのことは確実にある、細部にいたるまでキッチリと手の行き届いた、素晴らしい楽曲の数々に仕上げられている。しかしながら、これらの複雑で難解な構成と展開の楽曲を、実際のライヴでひとつのミスもなく披露するには、相当に過酷な練習を積み重ねる必要があるだろう。新たに4人体制となった、メンバー・チェンジを終えたばかりのパート・ロケットが、ライヴ演奏を行う予定は、現時点では全くないらしい。この“In Limine”の楽曲をライヴで演奏しようにも、録音時に在籍していたメンバーが2人も抜けてしまっているのだから、そう簡単に事が運ぶことはないということであろうか。しばらくは、単調で地道なリハーサルを重ねる日々が続くのかも知れない。(補足。09年6月26日、新生パート・ロケットは、4人編成となって初のライヴ・パフォーマンスを、ガレスとネイザンの住居でもあるハウス・スタジオで行う予定である。サポート・アクトは、前述のウッデン・フリート。)
 パート・ロケットの楽曲は、基本的に全てインストゥルメンタル曲である。そこには、ドラマティックな楽曲展開はあちこちに見受けられるが、メロドラマ的な湿っぽさや情感過多な重苦しさといったものは一切ない。カラカラに乾ききった、実にドライなポスト・ロックのサウンドが主体なのだ。土ぼこりが立ちのぼるような、荒涼として殺伐とした風景に、マス・ロックのアンサンブルによって描き出される、複雑に入り組み動き続けるフラクタルな幾何学模様が重なってゆく。奇妙な取り合わせだが、そのサウンドに耳が馴染んでくると、パート・ロケットの音に触発されて、脳内に次々と出現してくるヴィジュアルのイメージ(土ぼこりとフラクタル)が、無限に広がってゆくような感覚にとらわれてしまう。それは、まるで淀んでいた意識の流れを、一気にワサワサと活性化させられてしまうような、驚きのリスニング体験である。だが、その込み入った楽曲の構成や展開を、細部にいたるまで追いながら、つぶさに聴き込むと、おそろしいほどにグッタリとさせられる、ヘヴィな疲労感を味わわされることにもなるだろう。そこには、そうした隠れた罠もひそんでいるのだ。よって、まず最初のうちは、ある程度、細かな部分は受け流して、個々のパートごとのアンサンブルの妙を楽しみ、ザックリと大まかに味わうことをおすすめしたい。その後、ゆっくりとディテールを噛み砕いて聴き込んでゆくことによって、“In Limine”のサウンドを吟味し甘受する楽しみは、どんどんと深まってゆくはずである。
 今後、この新生パート・ロケットが、どのような音楽的な成果を表明してくれるのかという点も、とても気になるところではある。“In Limine”の制作に、約2年半もの歳月を費やしたということは、次の作品が完成するのは、早くとも再来年以降ということになるのであろうか。しかし、これだけガッチリと作り込まれた、粒ぞろいの楽曲ばかりで固めた質の高い作品をものにしてしまった後では、新たな楽曲の制作作業は、相当に険しい苦難の道のりとなるやも知れない。パート・ロケットが、この“In Limine”という高いハードルを乗り越えて、さらなるステップ・アップを遂げた、怪物級のエクスペリメンタル・ロック集団へと進化してゆくことを、大いに期待したい。より危険度の高い驚異的なマス・ロックの領域に、怯むことなく歩みを進めていってもらいたいところである。(08年)(09年 改)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
Part Rocket: In Limine 溝!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる