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<<   作成日時 : 2008/08/21 22:41   >>

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Distel: Unsentimental
Amplified Music Pollution amp019

画像 メキシコ中西部のグアダラハラに拠点を置くネットレーベル、Amplified Music Pollution(A.M.P)より08年7月17日にリリースされた作品。ディステル(Distel)は、メキシコ・シティ(Distrito Federal)在住の新人アーティスト。そして、本作は、Distelにとって記念すべきデビュー作となる。
 “Unsentimental”は、5つのピースからなるエクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージック作品である。ここでのDistelは、幽玄なるビートレスのプロダクションを展開していることもあり、一聴したところ、そのサウンドの雰囲気は、緩やかに動き流れてゆく優しい耳触りのアンビエント・スタイルであるように感じられる。だがしかし、そのサウンドをつぶさに聴いてみると、Distelのクリエイトするサウンドは、基本的にアンビエント調ではあるものの、実は結構ストレンジな感触を有するものであることがわかってくる。こうしたストレンジな電子音楽という点においては、同じくメキシコを拠点に活動しているオマル・アレハンドロ(Omar Alejandro)のMozcorraあたりと妙に似通った匂いが嗅ぎ取れたりもする。メキシコという場所でアンビエントやエレクトロニカをやろうとすると、何か妙なものがそこに作用して、ちょっとストレンジな感触をもつ音に仕上がってしまうということなのであろうか。メキシコ人ならではの独特のひねりのきいたセンスが、もしくはラテン・アメリカ文化圏特有のハイブリッドなセンスが、サウンドの構造や響きにえも言われぬストレンジさを加味してしまうということなのか。このあたり実に興味深い。何ともストレンジだ。メキシコの地下電子音楽世界には、まだまだ知られざる大いなる秘密が眠っていそうな気がする。じっくり探索してみたいものである。
 Distelが“Unsentimental”において展開しているサウンドのストレンジな感触は、そこで素材として使用されている人の声や即興的なピアノの演奏の音に、全くといってよいほど生気が感じられないという部分に大きく由来しているように思われる。女性の鼻歌やハミング、囁き声、そして爪弾かれるピアノなどの音色は、ただただそこに音として存在しているだけなのである。そして、意識的に発声されたり奏でられた音であれば、必ずそこに付随しているはずである生々しい響きは、そこからは完全に欠落してしてしまっているようにも感じられる。いや、そうした部分を意識的に/意図的に作者が削り取っているといったほうが感覚的には近いのかも知れない。ここでDistelが取り組んだのは、徹底的に無機質で感情の欠如した荒涼たるサウンド・プロダクションであったということか。要するに、情感を排除した電子音響による“Unsentimental”な世界を、淡く透き通るようなタッチの色彩で描き出そうとしたのだろう。しかしながら、その静謐なる生気に乏しい電子音が美しく揺らめく5章立てのミニマルな短篇集に耳を傾けていると、どういうわけか郷愁に満ちた感傷的なムードにとらわれたような気分になってくるから不思議である。その生の彼岸から響いてくる冷ややかで脆さをたたえたサウンドに、何ともいえない物悲しさを抱かされてしまうのだ。このあたり実に奇妙である。今にも消え入りそうな侘しげなサウンドの揺らぎが発散する強烈な儚さ。波のある不確定な感情という要素を一切拒絶したはずの無機的な電子音響が呼び覚ます、人間の心のひだの奥底にひそむ朧げなノスタルジア。Distelが本作に冠した“Unsentimental”というタイトルには、もしかすると、実はそんなパラドキシカルな意味も多分に込められているのかも知れない。Distelとは、何ともストレンジでディープなサウンドをクリエイトする実に侮りがたい新人である。
 ただし、本来のDistelのサウンドとは、ブレイクビートを軸とした動的なエレクトロニカであるようだ。この“Unsentimental”において展開しているような、静かなアンビエント調の音響作品というのは、Distelのまた別の顔であるということらしい。次の作品では、どちら側のDistelが聴けるのであろうか。ちょっぴり楽しみではある。同郷メキシコの先輩アーティストであるMozcorraの後を追って、一風変わったストレンジな実験電子音響作品を次々と送り出していってもらいたいものだ。残念ながらMozcorraは、それほど多作なタイプではないようなので、Distelが多少気合いを入れて制作に打ち込めば、すぐにでも追いつき追い越してゆけるかも知れない。大いに期待したいところである。(08年)

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