溝!

アクセスカウンタ

zoom RSS Jason And The Argonauts: While You Were Sleeping

<<   作成日時 : 2008/03/23 21:15   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

Jason And The Argonauts: While You Were Sleeping EP
Redevice rdv005

画像 07年1月に発表されたジェイソン&ザ・アルゴノウツのデビュー作。リリース元は、05年にオランダのアムステルダムで設立されたネットレーベル、Redevice。ここで使っているデビュー作という言葉は、ジェイソン&ザ・アルゴノウツにとってのネットレーベルの世界における初の単体名義でのリリース作品という意味のものである。よって、フィジカルな作品のリリースによるところの本格的なデビュー作というものとは、多少意味合いが異なるのかも知れない。いや、フィジカルであれデジタルであれ何らかの形式でプロダクツを音楽市場にリリースしなければアーティストにとっての正式なデビューとは見なされないのであろうか。ネットレーベルの世界とは、資本主義社会における音楽流通とは完全にかけ離れた存在なのか。ネットレーベル主義とは、はたして旧来の音楽業界の枠組みとは相対する方法論/方向性なのだろうか。これは少しばかり難しい問題である。だが、ただひとつだけ確かなのは、今後の音楽の在り方を考えるうえで、ネットレーベルやクリエイティヴ・コモンズでのライセンスというものが非常に重要な役割を担ってゆくであろうということ。これだけは、間違いない。
 ジェイソン&ザ・アルゴノウツは、04年6月にオランダで結成された、4人のサウンド・クリエイタからなるミニマル/マイクロハウスのモンスター・グループだ。そのメンバー構成は、その名の通りグループの中心人物となっているジェイソン・ソースマン(ジェイソン・シェイ)に、ニュートン・ダ・コスタ、ピート・バンディット(ピーター・リダー)、そしてウィリアム・コアム・ジョコ(William Kouam Djoko)といった3名のアルゴノウツの面々。おおよそダンス・ミュージックのプロデューサーというものは、個人およびソロや多くてもコンビで活動するケースがほとんどである中で、この4人組という集団的なユニットの編成には、非常に珍しいものがある。これは、元々の起源を辿れば、ジェイソン&ザ・アルゴノウツというグループがライヴ・パフォーマンスを主な活動目的として結成されたことに由来する。ジェイソン&ザ・アルゴノウツは、マイクロハウスを演奏するライヴ・バンドとして誕生したのだ。彼らは、3台のラップトップPCとシーケンサーやエフェクター類などの機材をズラリと並べ、4人が横一列に整列するフォーメーションで分厚くパワフルな電子音を放出する、あまり他に類をみないスタイルの濃密なパフォーマンスを繰り広げ、常にダンスフロアを熱く沸かせてきた。個々のサウンド・クリエイタが持ち寄るヴァラエティにとんだ音の素材をライヴでミックスしエフェクトを効かせ、キレのあるヒネリを加えてゆくことで、ジェイソン&ザ・アルゴノウツはプロデューサー集団ならではの展開を予測することすら不可能なスリルを内包した多彩にして圧倒的な迫力のライヴ・サウンドをものにすることに成功した。4人のメンバーは、02年から03年あたりにかけてオランダのアンダーグラウンド・クラブ・シーンにおけるパーティやイヴェントを通じて個別に知り合い、やがて共通の友人となり、次第に行動をともにするようになっていった。そして、03年頃から4人で共同してハーグを拠点にアンダーグラウンドなパーティをオーガナイズしてゆくようになる。この頃に彼らが主催するパーティでホスト役を務めていたのは、ダンサー崩れのファンキーなエンターテインナーであり、ライヴではマイクを握り主にMC兼ヴォーカリストを担当していたジョコであった。カメルーン人の父をもつジョコは、天性の優れたリズム感とよく通る大きな声をフル活用してミニマル・ハウスの反復グルーヴに動的な彩りを添え、常にライヴやパーティを大いに盛り上げた。そして、彼らは04年6月よりジェイソン&ザ・アルゴノウツというユニット名を掲げて本格的に活動を開始する。たちまちのうちに、この4人組による迫力のライヴ演奏はアンダーグラウンド・シーンにおいて話題となった。そして、05年以降はオランダ国内のみならず欧州各国のクラブやフェスティヴァルに度々招かれ、その独特のスタイルのパフォーマンスを武器にライヴ・ツアーを繰り返してゆくこととなる。ミニマル・ハウスの世界では非常に珍しい型破りなほどのワイルドさを漂わせる特異なライヴ・アクトとして、ジェイソン&ザ・アルゴノウツの名が欧州のアンダーグラウンド・シーンへと浸透してゆくにつれ、彼らはユニットの活動の第2のステップとなるジェイソン&ザ・アルゴノウツ名義での作品の制作に関しても本腰を入れて取り組んでゆくようになる。そして、07年に入りようやく解禁の時を迎えたかのように放たれたのが、この“While You Were Sleeping EP”だ。また、このEPの発表と前後して、堰を切ったかのごとくジェイソン&ザ・アルゴノウツの楽曲を収録したオムニバス作品やジェイソン&ザ・アルゴノウツによるリミックス曲を収録したシングルが幾つかリリースされてもいる。まさしく、ジェイソン&ザ・アルゴノウツは、07年の幕開けとともにその活動の第2期を迎えたのである。“While You Were Sleeping EP”は、彼らにとって記念すべき初作品であると同時に、活動第2期への突入の口火を切る象徴的な意味合いをもつ作品なのではなかろうか。このEPでは、そんなジェイソン&ザ・アルゴノウツの面々による入魂のサウンド・プロダクションを、我々はまざまざと目の当たりにさせられることとなる。
 “While You Were Sleeping EP”は、全6曲を収録したシングルというよりもミニ・アルバム的なヴォリュームをもつ作品となっている。きっと、この時点でのジェイソン&ザ・アルゴノウツの音楽的実力をほぼ全て出し切ったものとなっているのであろう。ただでさえデビュー作であるのだから、おのずと制作作業にもかなりの気合いが入ったはず。後々に変な悔いを残さぬようにと思いきり作業に没頭しているうちに、いつの間にか収録曲が徐々に膨れ上がっていってしまったのかも知れない。4人のプロデューサーによる共同作業ということであれば、アイディアや曲想が次々と浮かび、それを個別に具体化してゆくだけで、出来かけの曲の断片が山のように散乱してしまうであろうことも目に見えている。そんな作業の最中で生み出された膨大な量のトラック群から厳選に厳選を重ねられ、最終的に楽曲としての最終形態に漕ぎ着けることができたものが、ここに収録された作品ということになるだろうか。周囲の人間がまだ眠りこけているうちにジェイソン&ザ・アルゴノウツの面々はハードなプロダクション作業に黙々といそしみ、このデビュー作となる素晴らしい作品集を完成させた。今度は、そのデビュー作の“While You Were Sleeping EP”に込めた鬼のようにタイトなサウンドによって、いまだに寝ぼけている人々を驚愕させ目覚めさせるという算段であろうか。まず、EPの幕開けを飾る1曲目に飛び出してくるのは、極めてシンプルなミニマル・ハウスの“A Normal Life”。日常生活の中に潜む何気ない物音のようなスカチャカ&スコポコなトラックに、不安定な場所に置かれた物体が横滑りする様子を連想させる動きのあるフレーズがリズミカルに繰り返し絡みついてゆく。ややメタリックな手触りはするものの、緩やかに厚みを増してゆくフレーズの積み重ねによってもたらされるなだらかな展開に気をとられていると、すっかりとそのミニマルなグルーヴの深層へと意識を没入させられていたりして、ちょっぴりこわい。2曲目の“The Last Spirit (But Not Least)”もまた、同様の路線で迫りくるシャカポコなミニマル・ハウスだ。多少は前曲よりもファンク度が増量されているだろうか。物音系のパーカッシヴなシャッフル調のトラックに、単純な反復のフレーズが間断なく降りかかるパキパキのハウス・サウンドが、のったりのったりと前進を続けてゆく。往年のシカゴ・ハウスのスタイルを受け継いでるのであろうモッサリとした超低音声が、短いフレーズをトラックの隙間に塗り付けてゆき、何気ない日常の向こう側へと通ずる扉のありかを静かに指し示してくれる。3曲目の“Empty Day”は、強く打ちつけられるキックを軸として瑞々しく弾けるトラックが、淡々と強烈なファンク臭を発散させまくるマシーナリーなミニマル・ハウス。空虚な日常生活を打ち破るかのように、内面から止めどなく感情がドクドクとほとばしり続ける。先刻まではただの周辺に散らばる物音の積み重ねであったはずのサウンドは、いつしか力強いエレクトリック・ビートによる果てることなき反復へと変貌しており、もう何気ない日常の生活のすぐそばにまで迫りきている。4曲目は、激流のごとき日常のあれこれに押し流され深層心理に隠れ潜んでいたはずのファンクが、遂にその鎌首を大きくもたげはじめる“Lets Funk Tonight”。コンパクトな弾丸のように音の塊となったコツコツな反復トラックが、つぶてのごとく波状に押し寄せる。揺らめきながらスダレ状にポロポロと降り注いでくるヴィブラフォンのたどたどしいフレーズに導かれ、あからさまに妖しげな空気が、空虚であったはずの日常をじっとりと満たしてゆく。夜のとばりがおり、例の超低音声が「今夜はファンクしようぜ」と背後から繰り返し囁きかけてくる。もう後戻りすることはできない。果てることなく続くマイクロハウスに身を委ね、一晩中激しくファンクするのみだ。そして、5曲目は“Nothing In Common”。ノーマルであったはずの空っぽな日常は、内面から噴き出したファンクによって大きく変容し、もはや見る影すらない有り様へと成り果てた。細かくパーカッションの連打がまぶされたエレクトリックなシャカシャカと這い回る反復トラックには、どこかアフリカンな匂いが漂い、グルグルと旋回し続ける素朴なフレーズには民族音楽の要素が垣間みれたりもする。アフリカの血を半分受け継いでいるジョコのルーツが、こうしたサウンドの傾向には大きく関与しているのではなかろうか。繊細なエレクトロニック・サウンドをひねりにひねって、マイクロ・スタイルなアフロ・ファンクの世界を見事なまでに創出させている。この楽曲の構成は、なかなかに聴き応えがある。ここまでの5曲の流れの中では、物音系のミニマル・ハウスが、肉体と血を獲得してゆく過程を擬似的ながらもドラマティックに体感することができた。だが、この“Nothing In Common”の終盤では、ストレートに疾走するトラックを包み込むように柔らかにしてまろやかなシンセのフレーズ群がゆっくりゆっくりと満ちてゆく、さらにその先の世界へと通ずる扉が開かれそうな展開を聴くことができる。残念ながら、その扉はちょうど目の前に薄ぼんやりと現れて開きかけた瞬間に、パッと瞬時にして消え去ってしまうのである…。おそらく、その先へと足を踏み入れることは、相当な危険をともなうことであるのだろう。よって、そう易々と向こう側の世界に進むようなことがあってはならないのである。まだまだミニマル・ハウスでファンクする修行が足りていない者を前にして、扉は瞬時にして消え去ってしまったのかも知れない。ならば、扉がおのずと開かれるまで、こちら側に踏みとどまって昼となく夜となくファンクし続けるしかない。さあ、レッツ・ファンクだ。6曲目には、オランダのプロデューサー、Lauhaus(ローレンス・ランティング、Redeviceからのリリース作品もあるポールダーの片割れ)による“Nothing In Common”のリミックス・ヴァージョンが収録されている。ややエクスペリメンタルなメリハリがついていた原曲とは異なり、清々しいほどに直球勝負なミニマル・テックで押し通す、全く迷いのないリミックスだ。トラックの周辺にちりばめられたアフロなパーカッション群などがほどよいスパイスとなり、突っ走るサウンドを華麗に賑やかしている。これは、実際には“Nothing In Common”のリミックスであるはずなのに、その無機的でどこか閉ざされた雰囲気をももつグルーヴには、1曲目の“A Normal Life”に近しいものが感じ取れたりもする。これは実に妙なネジレた感覚である。Lauhausによるリミックスを介して、ラストの楽曲で再びふりだしの1曲目へと戻り、“While You Were Sleeping EP”は無限に続く円環の構造をなすということなのだろうか。何というか、よくよく考えてみると、この作品の根底には実に深いものがあるような気もする。反復するファンクには、決して終末がおとずれることはない。まさに、ファンク無限地獄だ。
 このEPのリリースの後、07年4月にはピート・バンディットとニュートン・ダ・コスタがコンビで結成した新ユニット、ル・シアン・ペルデュ(Le Chien Perdu)が、オランダのCupariよりデビュー・シングル“Greed EP”を発表している。そして、8月にはジェイソン&ザ・アルゴノウツとしての2作目となる“Let's Open Up Communication”が、ベルリンのProdukt Schallplattenよりデジタル・シングルとしてリリースされた。ここには3曲の新曲と、そのうちの1曲である“500eurodureschoenen”のピート・バンディットとヨハン・フォットマイヤー、そしてイオン・ルドヴィックによる3種類のリミックス・ヴァージョンが収録されている。さらに、12月にはイオン・ルドヴィックが運営するレーベル、Quagmireからのアーティスト・アンサンブル名義でのオムニバス・シングル“Prologue EP”において、ウィリアム・コアム・ジョコの初のソロ作品“Serialism Repetition”が発表された。この10分を越えるユニークなサウンドのミニマル・ハウス大作を聴く限り、ジョコは相当に将来が有望なプロデューサーであるように思われる。ジョコが本格的に音作りを始めたのは、ジェイソン&ザ・アルゴノウツに加入してからだといわれているが、もしもそれが本当であるならば、これは驚くほどに急激な成長ぶりである。元々、彼にはダンス・ミュージックのプロデューサーとしての資質が備わっていたのかも知れない。ただ、そこに辿り着くまでに、いろいろと寄り道をしてしまっただけなのだ。プロのダンサーを志しながらも挫折し、ライヴでは主にMCを担当していたジョコが、現時点ではジェイソン&ザ・アルゴノウツのメンバーの中でも飛び抜けて面白いサウンドをクリエイトしている。そんなジョコのミニマル・ハウスは、単調さを感じさせない多彩なリズム・プログラミングによる動的なトラックが、時には軽やかに時には太く重々しく様々な表情を見せながら目まぐるしく展開してゆく、非常にユニークなものとなっている。やはりジョコのパーソナリティの半分を形成しているアフリカの血がそうさせるのであろうか、そこには聴く者をいやおうなく踊りへと駆り立てるポリリズミカルなアフロ・ファンクのスピリットが音の奥底に息づいているかのような雰囲気がある。太古から続くアフリカン・ミュージックの記憶をマイクロハウスの繊細な電子サウンドの内部で活き活きと表現する術を、先天的にか後天的にか凄まじく高度なレヴェルで体得してしまっているジョコ。この才能には、まさしく注目すべきものがある。これはもう、今後のジョコのリリース作品から目が離せそうにはない。それは、ジョコの類いまれなる才能を育んだジェイソン&ザ・アルゴノウツのリリース作品についても同様である。そろそろジェイソン&ザ・アルゴノウツの新作が届くころではないだろうか。それとも、ジョコの2作目が先だろうか。なんとも待ち遠しいばかりである。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
Jason And The Argonauts: While You Were Sleeping 溝!/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる