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<<   作成日時 : 2008/02/14 21:29   >>

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MissB: No Stress Operator
Sweet Smelling Surfaces sss051

画像 天才は、ある日突然なんの前触れもなく我々の目の前に現れる。だが、困ったことに、大抵の場合は、その一番最初の遭遇の時点で天才とクズを見分けるのは非常に難しい作業であったりする。天才とクズは、思いもよらないほどに紙一重なのである。そして、さらに困ったことには、本物の天才というのは一番最初に出現した時点から、その本性を完全には露にしていないケースが往々にしてあったりするのだ。例えば、天才は、ある日突然なんの前触れもなく目一杯にクズを身にまとって我々の目の前に現れたりすることもあるのである。クズでフル装備をした天才の本性を、一発で見抜くのは相当に至難の業であるというしかない。表面を覆いつくすクズの隙間から天才だけがもつ原石のきらめきを瞬時にして見いだし、それを本物のきらめきであると的確に見極めなくてはならないからだ。そして、時として人間の曖昧な判断をしがちな目には、ただのクズが殊更にきらめいて見えてしまうこともあったりする。天才とクズとは、思いもよらないほどに紙一重であるがゆえに。
 これは、Tampopo(フィリップ・バートランド)とSupakajiによって04年に設立された、極めてユニークな音楽性で異彩を放ち続けるフランスのネットレーベル、Sweet Smelling Surfacesより発表された、51番目の作品(07年12月リリース)である。実験的なエレクトリック・ミュージックを中心に、停滞することなく矢継ぎ早にネット・ワールドへと作品を送り出しまくっているSweet Smelling Surfacesのカタログの中でも、これはかなり上位にランクされるユニークなサウンドをもつ作品となるのではなかろうか。はっきり言って、ここに収められている楽曲の音そのものは、どのジャンルに属するものであるのか、全く判然としないものばかりである。非常にユニークすぎて、既存の音楽ジャンルの区分では、どうにもこうにも捉えきれそうにない。いや、これは根本的に既存の音楽ジャンルの系譜とは断絶され完全に隔絶された地点で構築された音として捉えるべきものであるのも知れない。音楽というよりも、ただの一定の法則に従って連なり積み重ねられたカオス状の電子音の集合体。その集合した電子音が、整然と鳴らされる時に、それがたまたま人間の曖昧な耳には音楽のように聴こえるというだけのことなのではなかろうか。
 MissBとは、パリ在住の女性アーティスト、ブラン・マリー(Brune Marie)によるソロ・プロジェクト。ブラン・マリーは、これまでにデザインや写真や映画などの映像関係のアートを主に手がけていたアーティストであるようで、MissBとしての音楽制作活動を本格的に開始したのは、ほんのつい最近の07年5月からであるらしい。このMissBというプロジェクトの始動より以前に、ブラン・マリーがDJやDTMなどの音楽に関係する創作活動を行っていたかについては、あまり明確な情報はない。その周辺を軽く探ってみたのだが特に何も掴めなかった。ということは、おそらくMissBがブラン・マリーにとって初めての音楽関係のアートを手がけるプロジェクトとなるのであろう。その可能性は非常に高い。MissBは、ライヴ・パフォーマンスの際にラップトップPCをWiimote(Wiiリモコン)で操作して演奏を行うという。こういったあたりにも、実に新感覚な雰囲気が濃厚に漂っている。革命的なWiiの登場が、アーティストのブラン・マリーの感性を刺激して、MissBとしての音楽制作に向かわせたということなのかも知れない。MissBは、Wii第1世代のサウンド・クリエイタとなる。そんな斬新すぎるほどに斬新な音楽との接し方からも、MissBには前時代的な古臭さや頭の固いなんとか主義とかとは全くもって無縁の自由で真新しい香りが嗅ぎ取れたりもする。白い紙にデザインのラインをひくように、カメラで写真や映像をフィルムにおさめるように、ラップトップPCのハードディスク上に音のデータを積み木やレゴ・ブロックのように配置し積み重ねてゆくことで構築されてゆく音楽。MissBがWiimoteを使用して描き出した音楽は、凄まじく斬新なテクスチュアをもつ非常に興味深く面白いサウンドのものに仕上がっている。
 “No Stress Operator”は、3曲入りのシングルである。ここに収録されている楽曲は、リリース元のSweet Smelling Surfacesのサイト上に掲載されているクレジットによれば、全て07年9月27日のたった1日のうちに作曲からプロダクションの作業までが完遂されたものであるという。なんと、5月にMissBとして音楽活動を開始して、わずか約4ヶ月目の成果が、この“No Stress Operator”なのである。しかし、音作りを本格的に始めて半年も経たないうちにデビューとは、何とも早い成長ぶりではないだろうか。ブラン・マリーは、非常に大胆不敵な人物のようである。きっと、天性のアーティスト気質が備わっている女性なのであろう。この、MissBがWiimoteでゲームを楽しむのと同じような感覚でラップトップPCと戯れながら作り上げた音楽は、たった約4ヶ月の音楽活動歴のみしか有していないことを逆に利点としたかのような、あまりにも怖い物知らずで実に大胆極まりない音のパートの構築がなされた、笑ってしまいそうなほどに異様でユニークなサウンドの楽曲として思いきりノビノビと表出している。確かに、素人臭い部分は多々存在する。だが、それを補ってあまりある、瑞々しくほとばしるアーティストとしての感性やぶっ飛んだ美的感覚が、音の前面へと勢いよく噴き出しているために、その素人臭くぎこちない部分すらもが味のある間やアクセントとして機能していたりするのだ。Wiimoteの画期的な操作性がそうさせるのであろうか、ズブの素人であるはずのMissBが、これまでに聴いたことのないような斬新な音を、実にあっけらかんとものにして、一風変わったセンスが光る音楽へと見事に組み立てて鳴り響かせてしまっているのである。この事実にはもう、驚愕というか、ただただ唖然とするしかない。いま、音楽は凄まじいほどの勢いで急速に変革の時期へと突入し、そのただ中でこれまでにはなかったような急激な変容を日々繰り返している。おそらく、このフランスの女性映像アーティストが制作した音楽もまた、その急激な変容の一部というか一種なのであろう。もはや、音楽というものは、特定の特化した才能や技術のみによって前進するものではなく、感覚や感性こそが全てという時代を本格的に迎えようとしているのかも知れない。Wiimoteでドローイングをするように音楽を制作したり、センサーを内装したグローヴを装着して粘土を捏ねて造形をするように作曲を行うのが、至極当たり前のことになる日も近い。もはや、そう思わざるをえない。テクノロジーの進歩とともに、音楽は本当の意味での多様化の季節を迎えようとしている。音楽をめぐる環境も、今後とんでもない勢いで変容してゆくであろう。その一部に、ネットレーベル主義というものが確固たるものとして存在している。このMissBの音楽に対しても、過去の音楽概念とはスッパリと決別した、進歩的で頭の内部をフニュフニュに柔らかくした状態で接する必要がありそうだ。
 1曲目の“Indi Trance”は、そのタイトル通りにインディアンなムードを漂わせた似非エスニック・トランスの世界を巧妙に築き上げた楽曲。単純ながらも微妙にナリキリ度の高い民族音楽調のトラックに、タブラのようなパーカッションが軽快に絡み、そこに動きのある電子音がヒュルヒュルとやや控えめに飛び交いまくる。中盤以降はミニマルに連打されるポコポコなパーカションが、そこに静かに浮上してきてエスノな混沌を増長させてゆく。その後、鬱蒼と茂る森がひらけるように唐突なブレイク部が訪れ、お次はウニェウニェな線の細いアシッド音が似非エスニック・トランスの世界に妖しい揺らぎを与える。このゴタ混ぜ状に様々な音要素が交錯する密度の高いグルーヴのウネリを最高到達点として“Indi Trance”は、緩やかに下降してゆき2分40秒でサクッと終了する。厳密に考えると、それほどインドでもトランスでもないようなガチャガチャとしたエレクトリック・ミュージックなのであるが、その短く簡潔な音工作曲を繰り返し聴いていると、なんとなくそこに“Indi Trance”らしき感覚が、ぼんやりと蜃気楼のように立ち上がり、明らかに見えてくるような気がしてくるから不思議だ。2曲目は、“La Baronne”。こちらは、ストンピンなカントリーとサーフ寄りなガレージ・サウンドが入り混じった、ちょっと埃っぽい手触りのするガシャガシャと躓きながら駆け抜けてゆくチープなロッキン・エレクトロな楽曲。やけに単純で安直で何のヒネリもない子供じみたストレートさで迫ってくる音であるのだが、あれよあれよという間に、その軽妙なノリに意識が高揚させられてしまう。この訳の分からぬ楽しさは、何なのであろう。サイコなウエスタン調のドラムと邪悪な匂いのする無愛想なベースラインが疾走する、そんなささくれ立った空間で、表裏がひっくり返りそうな音色が奇妙なギターを模したものであろう歪んだ電子音がヒニュヒニュと自由気ままにソロ演奏を繰り広げる。ここに収録されている“La Baronne”は、たった1分40秒足らずの簡潔なインストゥルメンタル・ヴァージョンであるのだが、MissBが開設しているMyspaceのページに掲載されているブログの記事では“La Baronne”の歌詞が公表されている。これは、ライヴでのパフォーマンス時などにブラン・マリーによって歌われるものなのであろうか。すれっからしで奔放なレズビアンのバロンヌを主人公とした、シンプルな8つのヴァースによって構成される、かなりエグい内容の歌詞である。この歌詞のヴォリュームからすると、実際はもっと長い尺の楽曲なのだと思われる。いつか歌入りヴァージョンの“La Baronne”も聴いてみたいものだ。ラストとなる3曲目の“Sweet”もまた、カントリーとガレージがエレクトリック・サウンドの土俵上で奇妙に融合してしまった新感覚な楽曲となっている。ここでソロの演奏を歪んだ湿っぽい電子音のギターとともに担当しているのは、乾いた大地をガラガラ蛇のように低く這いずり回る不穏な音色のオルガン。金属的なベルの音が遠くで打ち鳴らされ、背後から迫りくる不吉なベースラインがグネグネとトグロを巻く。どこにも甘い要素など見あたらないのに、タイトルが“Sweet”とは、これいかに。全3曲中で最も長い作品となっている3分30秒のこの楽曲は、例によってインストゥルメンタル曲であるのだが、どこか映画のサウンド・トラックを思わせる雰囲気のようなものも含有している。どう考えても、ここにあるのは凄まじいほどにシンプルでザックリとしたサウンドなのである。しかし、それがひとたび耳を通過して脳内に滑り込んでくると、ビックリするほど克明にして鮮明に映像を喚起してくる。音そのものから劇的な情景がアリアリと見えてくるのだ。このあたりは、やはり映像畑のアーティストによって制作された音楽であるからなのであろうか。それにしても、約4ヶ月足らずの音楽活動で、ここまで見事な表現力を身につけるとは、このブラン・マリーという女性、ちょっとただ者ではないような気もしてくる。なんとも末恐ろしい。
 ジャケットは、おそらくカメラマンのブラン・マリーが撮影したものであろう、両方の乳首にピアスをつけた凄まじく豊満でダイナマイトなボディをした女性の裸体写真。美しい小麦色の肌から推測すると、きっとラテン系の若い美女なのではなかろうか。ジャケットに使用されている写真は、首から上の部分が写っていないので、実際には若い美女であるかどうかはわからない(残念ながら!)。しかし、その肉体そのものは、驚くほどに素晴らしい。グレイトだ。ベッドの上に仰向けに横たわった女性の裸体の胸の谷間から股間にかけて、色鮮やかなビーズ(らしきもの?)が並べられ、ちょうど下腹部のあたりでキレイな矢印マークを形成している。まあ、このへんのセンスも洒落ているといえば洒落ている。なかなかよいジャケット写真である。
 MissBのMyspaceのページでは、ここに収録されている3曲以外の楽曲をいくつか聴くことができる。個人的には、その中の“Not So Easy”が特に気に入っている。これは、少しも抑えることなくヒステリックな感情を噴き出してゆくがままに暴発させた、かなりエキセントリックな電子ノイズ作品。こうした狂気スレスレの深みのある音表現がシッカリとできる点も、MissB(ブラン・マリー)がただ者ではないと感じるひとつの大きな要因であったりする。“No Stress Operator”を聴いていると、78年9月のある夜に、当時はまだズブの素人であったスティーヴン・ステイプルトンがレコーディング・エンジニアのニッキー・ロジャースの手引きによって数人の全く音楽経験のない友達をともないロンドンのBMSスタジオを勝手に占拠し、そのへんにある楽器や機材と持ち込んだ玩具を手当り次第に鳴らして即興演奏を試み、一夜にして完成させてしまったナース・ウィズ・ウーンド(Nurse With Wound)の記念すべきデビュー盤にして歴史的怪作“Chance Meeting On A Dissecting Table Of A Sewing Machine And An Umbrella”(79年)を、ちょっぴりだけ連想してしまう瞬間が不意に訪れたりする。なんとなく作品の佇まいや音が発散する空気感に似通ったものを感じてしまうのだ。ズブの素人の初期衝動というものは、時としてものすごいモンスターを生み出してしまうことがある。ステイプルトンとMissBの、ある種の奇跡的なデビュー作は、それが事実であることをまざまざと証明してくれている。まだまだMissBは厳しく険しい音楽活動の旅路を歩み始めたばかりである。きっと、今後より幅広くヴァラエティにとんだ奇抜な音楽を展開させた作品が、続々とMissBから届けられることであろう。新世代のエクスペリメンタル・エレクトロ・サウンドの超新星、MissBのこれからの活動にも大いに期待してゆきたいところである。

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