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zoom RSS VA: Freie Liebe

<<   作成日時 : 2008/01/27 05:28   >>

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VA: Freie Liebe
Mixotic Mixotic 082

画像 ベルリンを拠点に活動するDJ、Q-Manによって運営されるネットレーベル、Mixotic(その前身は05年に設立されたZerinnerungである)より07年5月に発表された82作目のミックス作品。このMixoticより発表されるミックス作品の原則とは、そこで使用される全ての音源が、ネット上で(ネットレーベルより)リリースされたフリーのMP3ファイル(クリエイティブ・コモンズでライセンスされた作品)であること。とりあえず、それのみ。まあ、こういった部分は、現在ネット上に数多く存在するミックス作品をフリーで配布/流通させているネットレーベルにとって基本的に共通する大原則となっている。そんなアマタのレーベル群の中でも、Mixoticが特にユニークな存在として際立っているのは、すでに2年以上に渡り非常に精力的にリリース活動を続けてきているネットレーベル界の重鎮さながらな重々しい風格とともに、来る者を拒まずに迎え入れるかのような世界各地のデジタルDJ(コントリビュータ)による力作を次々と紹介してゆく、非常にオープン・マインドで間口の広いレーベルの運営姿勢が、そこに大きく関与しているためではないかと思われる。本国のドイツはもとより、ロシアや東欧圏を含む欧州全土、そして北米から中南米まで、実に様々な国と地域で活動をしているDJによるミックス作品が、これまでにMixoticからはリリースされてきている。そして、そのDJたちがプレイする音楽のスタイルも、テクノやハウス、今やネットレーベル界における主流であるミニマル/テック・ハウスだけにとどまらず、アンビエント、ダブ・テクノ、エレクトロ、ブレイクス、ダウンテンポ、ニュー・ジャズ、エクスペリメンタルと、驚くほど多岐に渡ったものとなっているのである。Mixoticのサイトを訪れたリスナーは、その時々の気分に応じて様々なタイプのミックス作品の中から最もピッタリきそうなサウンドをチョイスして楽しむことができるのだ。勿論、ファイルは無料配布であるから、そのサウンドやミックスのスタイルが気に入らなければ、自由に途中で聴くのをやめて、次々に他のミックス作品に手をのばしてゆくことも可能である。すでに100作品以上を発表してきているMixoticでならば、きっと誰にでも絶対にバッチリと気に入る一本を見つけ出すことが可能なのではなかろうか。
 『Freie Liebe』は、ドイツ北東部のメックレンブルクを拠点に活動するDJ、Marvidによるミックス作品である。Marvidは、ドイツのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージック・シーンにおいては、かなり重要な鍵を握る存在となってきているNight Drive Musicに所属するDJである。90年代初頭から地元の小さなクラブで友人たちとパーティをオーガナイズするなどしてDJ活動そのものには深く携わっていたMarvidだが、テクノロジーの進歩とともにデジタル機器を使用したDJプレイへと次第に移行しゆくようになり、やがて04年に設立されたヴァイナル盤の制作からデジタル・リリースまでを幅広く手がける総合レーベル、Night Drive Musicの活動に合流することになっていったという。現在はNight Drive Musicが主催するクラブ・イヴェントを中心に地元でのFriendly FireやMarian's DaysといったこじんまりとしたパーティでもDJプレイを行っているらしいMarvidが、愛用のトラクターとフェイダーフォックスを駆使して、星の数ほどのネット上のMP3ファイルの中から選び抜いたグッド・トラックをミックスしたものが、この『Freie Liebe』となる。これは、Mixoticが取り扱うミックス作品の制限時間の上限である80分の長さを、ギリギリまで使った79分54秒の大作となっている。そして、ここでMarvidがプレイしているトラックの基本的なスタイルは、ミニマル〜テック・ハウス路線。始めから終わりまで、ずっとポコポコ&カチャカチャと一本調子でひた走り続けているようでいて、実は微かな起伏を効果的に各所に配置しながら、決して飽きさせることなく反復ビートの軌跡をビューティフルに描き出してゆく。また、その恐ろしくスムーズな流れを断ち切るかのような、過剰な自意識からくる余計な小細工を盛り込んで、ミニマルなグルーヴの奥底にズブズブと埋没してゆく意識を削がせるようなことも一切ない。そうした意味において、これは、かなりポイントの高いミックス作品といえる。しかし、このMarvidというDJは、間違いなく相当に高度なミックス・スキルを有するDJであるにも関わらず、ネットレーベルを通じて、そのミックス作品を発表した経歴というのは、今のところこのMixoticからの『Freie Liebe』のみであるようだ。基本的にネットの世界で活躍するデジタルDJとは、次々とネットレーベルから発表されるMP3のトラックを掻き集めるようにしてミックス作品を量産し、情報伝達の速さと強度こそが至上命題であるネットレーベルの世界でのステイタスを高めてゆく方向へと向かうのが常道。老舗のMixoticなどの著名なサイトからリリースされ注目を集めるミックス作品というのは、多くのネットレーベルにとって非常に重要なプロモーションの場としても機能しているのだ。MP3ファイルは、一人でも多くの人間に聴かれるために存在し、その存在は、ネット上の文字情報として一人でも多くの人間の目に触れやすい場所に露出されることで、着実に伝播されてゆくものなのである。Mixoticのサイトにおけるミックス作品のページにも、そこで使用された楽曲のオリジナルのリリース元となるネットレーベルへのハイパー・リンクがズラリと張り巡らされている。だが、このMarvidは、そうしたネット・ワールドで活躍するDJたちとは、少しばかり異なる立ち位置に立脚するDJであるようだ。本作『Freie Liebe』以外にもミックス作品を量産し、ネットの世界のアンダーグラウンド・ダンス・ミュージック・シーンをメインの活躍の場とするよりも、実際にクラブで催されるイヴェントやパーティなどのリアルなアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックの現場の方を、まだまだ主戦場として見定めているようなのである。そんなバリバリに現場主義派なDJであるMarvidによる、なかなかにレアな、ネットレーベルより発表されたミックス作品『Freie Liebe』。これは、90年代初頭から有機的で流動的なダンスフロアと真正面から対峙するブースの内部で培われてきた高度なDJミックスのスキルを基礎としながら、21世紀初頭の先端テクノロジーを駆使して制作された、非常にレヴェルの高いデジタル・ミックス作品である。そしてまた、キャリアのあるヴェテランDJならではの、落ち着いた渋く枯れた味わいのある一本にも仕上げられている。
 『Freie Liebe』は、06年にUnfoundsoundより発表されたオムニバス作品『Massalian Private Jokes』に収録されていたセイラ・ゴールドファーブ(ジャン・ヴィンセント・ルッシーニ)の“Forty Years Ago I Sold My Body”でスタートする。この、ややインダストリアルな香りのする導入部が面白い、ガシャガシャとシャッフルが渾然一体となったトラックから、緩やかにまったりとしたミニマル・ワールドをコツコツと築き上げてゆき、様々な色合いをもつトラックを絶妙に混ぜ合わせながら、聴く者をドップリとその世界の奥地へとグイグイと引きずり込んでゆく。自分では絶対に真っすぐに一本道を歩いている感覚でいながら、フッと気がつくと見知らぬ暗く狭い迷路のような路地裏で完全に道に迷ってしまっている、みたいな。そんな、ドコか感覚が麻痺してしまっている自分が、そこにいることをいやがおうにも満喫させられる、とてつもなくディープなミュージカル・ジャーニーだ。確実に意識が遠のくミニマルな音世界。ラストは、アイスランドを拠点に活動するトール(Thor)が、06年にカナダのStratagemよりリリースした“Blues For A Grey Planet”の、粉々に飛び散った惑星の破片が広大な宇宙空間を漂ってゆくかのようなサウンドで巧みに締める、全19曲。かなりスタイル的にも多様な楽曲をミックスしている気がするのだが、Marvidによる場面転換や音の持って行き方の演出仕法が非常に巧妙なせいか、そのスムーズな展開の流れに乗って、ドコまでもドコまでも流されてゆくような感覚に完全にひたりきることができる。そして、そこに完全に身を委ねることが最高に心地よいのである。約80分間に渡り、Marvidは一瞬たりとも聴く者を飽きさせない。ミニマル・サウンドとは、グイッと胸ぐらを鷲掴みにして極度の集中力の持続性を求めてくるものよりは、スルリスルリと自然に耳を通過して脳髄へと流れ込んでくるぐらいのものが、ちょうどいい。無意識のうちに能動的なリスニングへと向かってしまうことが可能となるタイプものが、絶対的にベストなのである。Marvidの『Freie Liebe』は、おそらくそれに限りなく近い(のではなかろうか)。頭と尻を飾るセイラ・ゴールドファーブやThorのほかに、全19曲の楽曲うちで広く名が知られているアーティストによる作品は、実はほんの一握りであったりする。ネットレーベル界では多作のうちに入るであろうスペインのプロデューサー、シニア・クリック(Sr. Click)と、フィラデルフィアにおいてFoundsoundを主宰するシール(Cyhl)によるプロジェクトであるフュージフォーム(Fusiphorm)ぐらいであろうか、ある程度の知名度がありそうな人たちは。ほぼ全体の七割五分ぐらいはネット・ワールドに生息する無名のプロデューサーたちによる無名の作品である訳なのだが、そのMarvidによる選曲には一点の曇りも見受けられない。名前や過去の実績に関わりなく、ただ純粋にトラックの善し悪しだけを基準に選曲を行い、画家が丁寧に絵筆で色を置いてゆくかのように的確なタイミングでデータ・ファイルをセット・アップし、細心の注意を払ってミックスを行ってゆく。彼は、実にDJらしいDJだ。そして、信頼にたる研ぎすまされた音楽センスの持ち主でもある。
 最後に、『Freie Liebe』に収録されているトラックで、個人的に気に入っているものをいくつか挙げてゆきたい。まずは、6曲目のSr. Clickの“Transmision”。これは、07年にInoquoより発表された4曲入りEP“Sentido”に収録されていた楽曲。男女の声ネタを巧みに使った軽くアシッディなミニマル・テック・ハウスである。そして、8曲目のパッパス(Pappas)による“Sugar”。これは、06年にPlexより発表された6組収録のオムニバス作品『Jackstrap』に収録されていた楽曲。こちらも男女の声ネタをふんだんにちりばめた、軽くグリッチィでシャッフルなファンキー・ミニマル・トラック。12曲目のコレクティヴ・タームシュトラッセ(Kollektiv Turmstrasse)による“Luftloch”は、本作において最もまばゆいハイライトとなる瞬間を演出してくれる一曲である。これは、06年にNo Responseより発表された10曲入りアルバム『Verruckte Welt』に収録されていた楽曲。恐ろしくシンプルだが凄まじいほどの疾走感をもつトラックを軸としながら、微かに揺らぐ男性ヴォーカルの断片がフワフワと浮遊する、異様にディープでダビーな音の情景がどこまでも広がってゆく、極上のミニマル・テック・ハウスである。また、14曲目のオム・ダーマント(Homme D'aimant)の“Matic”もミニマル・テック・ハウスとしては、かなり高品質なトラックである。これは、06年にEpsilonlabより発表されたEP“Track Place”に収録されていた楽曲。パツパツのストレートなトラックに安定感に乏しいブヨブヨのベースが絡み、周辺に漂う柔らかなウワモノが包み込むように奥深い音の世界へと聴く者をグイグイと引きずり込んでゆく。なかなかに強烈な一曲である。以上のものが、個人的にかなり好きな部類に入る楽曲たちである。中でもPappasとKollektiv Turmstrasseは、この『Freie Liebe』を通じて初めて知ったアーティストであり、ここで聴いた楽曲を足がかりにして、その他のリリース作品を密林のごときネットレーベルの世界から探り出してみたりして、未知なる領域へと踏み込んでゆく楽しみを味わうこともできた。そうした素晴らしい宝物のありかへのヒントを与えてくれたMarvidには、大いに感謝したい。特に、Plexからリリースされていた『Jackstrap』という作品の存在を知ったことによって、とんでもなく大きく豊かな鉱脈を掘り当てることができたのである。Marvidが、グレイトなミックス作品『Freie Liebe』を制作してくれたおかげで、間接的にではあるがアンビトロニック(Ambitronicは、故マーク=クリスチャン・ヴィットによるソロ・プロジェクトであり、『Jackstrap』に“Christa”という楽曲を提供している)の素晴らしい音の世界の存在を知ることができたのだ。そうした大いなるキッカケを与えてくれたという意味においても、Marvidの『Freie Liebe』というミックス作品は、本当にかけがえのないものとなった。これからも、それらの経験を足がかりとして、さらに鬱蒼と茂る密林の奥地へとガンガンと足を踏み入れてゆこうと考えている。

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