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zoom RSS The Harmony Ambulance: Nature's Way

<<   作成日時 : 2008/01/12 23:35   >>

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The Harmony Ambulance: Nature's Way
Rough Trade 45rev17

画像 93年4月、Rough Tradeがインディ・シーンで活躍する様々なアーティストによる7インチ・シングルをシリーズで毎月リリースしていた、ラフ・トレード・シングルス・クラブの第17弾として発表された一枚。ハーモニー・アンビュランスは、元オール・アバウト・イヴのジュリアンヌ・リーガンと元ドリーム・アカデミーのギルバート・ガブリエルを中心とするユニットである。
 初期のトラッド〜フォーク調のゴシック・ヒッピー・ロックから重く歪んだギターを引きずりながらメロディアスに低空飛行するサイケデリック・ロックへと大きく音のスタイル変貌させていったオール・アバウト・イヴと、フォークやトラッドにクラッシックの要素も感じさせるドリーミーで唯一無二の有機的サイケデリック・ポップの世界を創出させていたドリーム・アカデミーの、中心メンバー同士によるコラボレーション。コレが相性悪いワケがない、と考えるのが(両グループの音楽性に耳馴染みがあれば)普通であろう(たぶん)。また、この両者を結ぶサイケデリックという重要なキーワードを辿ってゆくと、なかなかに面白い共通点も浮かび上がってくる。ドリーム・アカデミーの歴史的名盤であるデビュー作『The Dream Academy』(85年)と3枚目の『A Different Kind Of Weather』(90年)に、プロデューサーとしてピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアが関わっていることは、よく知られた話であるが、実はギルモアはオール・アバウト・イヴの91年の3作目『Touched By Jesus』にもゲスト・ギタリストとして参加し、収録曲中の2曲で貫禄の重厚なプレイを披露してしていたりもする。ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモア繋がり、まあ何となく頷ける話であるような気がしないでもない。ネオ・サイケデリック世代に属する両者にとって、ギルモアのギターはその音楽性を形成する初期の過程において繰り返し耳に染み込ませたであろう重要なアイコンであるはずだから。実際に、このハーモニー・アンビュランスの作品でも、どこからかギルモアのギターが響いてきそうな気配が漂う、マッタリとトロけそうなサイケデリック・サウンドが展開されている。
 A面の“Nature's Way”は、70年にランディ・カリフォルニアが率いるサイケデリック・ロック・バンド、スピリットが発表した名作アルバム『Twelve Dreams Of Dr. Sardonicus』(プロデューサーは、ニール・ヤングの傑作を数多く手がけているデイヴィッド・ブリッグス)に収録されていた名曲のカヴァー。柔らかかつ荘厳なアンビエンスを表出させるガブリエルによるキーボードの演奏のレイヤードをバックに、情感を抑えながらもダイレクトに耳許で囁きかけてくるようなリーガンによる多重録音の美しいヴォーカル・ワークが抜群の冴えをみせる、かなり素晴らしい出来映えの作品に仕上がっている。本シングルの制作のために結成された(のであろう)即席ユニットとは到底思えない、シックリとした両者の個性のハマり具合には、チョットびっくりさせられる。そして、さらに高まる期待を胸にレコードを引っくり返して、B面のオリジナル曲“All This And Heaven”へと針を落としてみる。これは、多方面から失敗作と叩かれまくったオール・アバウト・イヴの92年の4作目にしてラスト・アルバム『Ultraviolet』で聴かれた、ウネウネなギター中心とする厚くモヤがかかったサイケデリック・サウンドから、モヤモヤの部分を取り払い、各パートの整合感をアップさせて仕切り直しを試みたような楽曲である。作曲者はガブリエルであるが、当時のリーガンの平坦で情感を安易に表に出さないクールに囁くスタイルの歌唱法にあわせる形で書き下ろされたのではないかと、変な邪推をしたくなるような印象の曲調となっている。すでにオール・アバウト・イヴは解散し、過去のものとなっていたのだから、もっと音楽的に冒険を試みてもよかったような気がするのだが(95年にリーガンが新たに結成したバンド、マイス(Mice)では、伝統的なブリティッシュ・ポップの系譜に連なる音楽的資質を現代風に咀嚼した、カラフルで小気味よいポップ・ロック・サウンドが積もり積もった鬱憤を晴らすように思いきり炸裂することになる)、これはどうしたことなのであろう。この“All This And Heaven”のレコーディング・セッションには、ザ・ザの前身であったガジェッツの作品などに参加していたティム・ブロウトン(ドラム等)やアマズルのクレア・ケニー(ベース)といった、かなり面白いメンバーが関わっていたりする。これらの折角揃った様々なバックグラウンドをもつ豪華な顔ぶれの個性を活かして、斬新な音で聴く者をアッと驚愕させ、練り込まれた楽曲で聴く者を深く納得させるような作品を、何とかして作り上げることができなかったのだろうか。それもこれも全て、ガブリエルのプロデューサーとしての力量が決定的に不足していた結果ということなのか…。ハーモニー・アンビュランスのシングルは、オール・アバウト・イヴの解散後にポロリとこぼれ落ちた、オール・アバウト・イヴの亡霊による最後のダメ押し的な一枚となっている。もしくは、オール・アバウト・イヴの残り香だろうか。本当に、ぼんやりと亡霊のように漂っている印象しかもたらしてくれない実に惜しい一枚なのだ。
 豚の顔写真のジャケットといい、ジャケット裏に記された「全ての救急車の運転手に感謝」というフレーズといい、この一枚からは、かなり意味不明で謎めいた雰囲気がアチコチから漂いだしている。リーガンとガブリエルのコラボレーションは、本作以降の新たな作品へと発展してゆくことは決してなかった。たぶん、これは両者が、それまで在籍していたバンドで探求を繰り返し、相当に奥地にまで足を踏み入れてしまっていたサイケデリック・サウンドの迷宮で道に迷い、進みゆくべき本来の方向性を見失ってしまっていた時期のコラボレーションだったのであろう。ともに深刻に悩んでいる最中だったのではなかろうか。ハーモニー・アンビュランスをキッパリと1作品のみで葬り去り、無理に深入りをしなかったのは、リーガンにとってもガブリエルにとっても、冷静で賢明な選択であったのかも知れない。
 現在、ガブリエルはポーランドを拠点にMelt21というフォーキーなサイケデリック・ポップ・バンドを率いて活動し、リーガンは99年に再結成したオール・アバウト・イヴのヴォーカリストとして地道にのんびりとした音楽活動を続けている。ハーモニー・アンビュランスの2人の歩む道が再び交わるようなことは、こらからもきっと滅多なことがないかぎり訪れることはないであろう。

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