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zoom RSS Human Touch: Love Glove

<<   作成日時 : 2007/12/16 21:49   >>

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Human Touch: Love Glove
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画像 92年、NYのダンス・ミュージック専門レーベル、Activeが、そのレーベルの歴史の最末期にリリースしたシングル。ラリー・レヴァンとフランソワ・ケヴォーキアンがリミックスに参加したロリータ・ハロウェイの名曲“Strong Enough”も同じくActiveより92年にリリースされているが、このあたりの作品こそがレーベルの灯が消える直前の最後の輝きであったように思われる。
 ヒューマン・タッチは、おそらくグループやユニットとしての実体はない、スタジオ内にのみ存在したプロデューサー主導型のプロジェクトであったのではないかと思われる。本シングル以外にヒューマン・タッチのリリース作品は存在しない(たぶん)。そんなレコーディング・スタジオにおける複数の音楽制作者たちの共同作業から発生したワン・オフ・プロジェクトであるヒューマン・タッチ。ここには、きっと一度きりのプロジェクトであったからこそ実現したのであろう、かなり奇跡的に面白い取り合わせのタレントが顔を揃えている。作曲とプロデュースの担当者としてクレジットされているのは、ウィリアム・F・チャフィンとケントン・ニックス、そしてマーティ・タウの3名。チャフィンに関してのプロフィールの詳細は不明だが、たぶんこの“Love Glove”でヴォーカルを務めている人物ではないかと思われる。まあ、ヴォーカルとはいっても、ほとんど歌ではなくお喋りという感じのものなのだけれど。ケントン・ニックスは、ターナ・ガードナーやグウェン・マックレイのプロデューサーとして70年代終盤から“Work That Body”や“Heartbeat”、“Funky Sensation”といったヒット曲を連発し、NYのダンス・サウンドを最先端で牽引してきた超大御所。マーティ・タウは、クレイグ・レオンとのコンビで77年にスーサイドのデビュー・アルバムにして歴史的名盤である『Suicide』のプロデュースを手がけ、それ以外にもブロンディー、ラモーンズ、NYドールズなどの数々のレコーディング・セッションに携わったNYパンク〜オルタナティヴ界の影の超重要人物。こうした、ちょっと異色の組み合わせな3人組がスタジオに入り、ヒューマン・タッチとして制作した“Love Glove”。この楽曲は、何を思ってそういう方向へ進んでしまったのであろうか、ズブズブでヌメヌメなカナリ本気のSMソングとなっている。
 ゆったりとしていながらも力強くボッツンボッツンと打ちつけられる重いハウス・ビートに、不穏なベースライン、爪の先で撫で回してゆくようなカッティング・ギター、控えめに吹き鳴らされるトランペットのフレーズが絡みつき、そのサウンドの隙間からは男と女がナスティなトーンで囁きあう声がモレ聞こえてくる。そして、いきなり襲いかかってくる攻撃的なホーンのフレーズの連なりを合図として、段々と高揚してゆくグルーヴの展開に煽り立てられるかのように、次第に女の吐息はネットリした喘ぎに変わってゆき、中盤のクライマックスでは全ての音が瞬間的に止み、その喘ぎは静寂を切り裂くアゴニスティックな叫び声にまで達するのである。しかし、その後は完全に攻守交代して、女が主導権を握る展開をみせる。徐々に男の喋り声は興奮した吐息まじりのものとなり、遂には快楽と苦悶が入り交じった呻きへと変化してゆく。B面のBugged Dub Mixには、御丁寧にもリズミカルに打ちつけられる鞭の音が全編に渡ってタップリとフィーチュアされている。この完全にストリップド・ダウンされている剥き出しのダブ・ミックスは、かなり素晴らしい。聴いているだけで、チョットばかり頭の中が痺れてクラクラとしてくる。また、その後に収録されているMoanapellaでは、6分以上に渡って延々と男女の会話やSM行為での喘ぎや叫びや呻き声をアカペラで楽しむことができる。SM愛好家にとっては、この上なくたまらない一枚かも知れないが、そうでない人々にとっては完全にナンジャコリャな世界であろう。ヒューマン・タッチの“Love Glove”は、そういう意味でも、なかなかの珍盤なのである。
 本シングルでリミックスとアディショナル・プロダクションを担当しているのは、80年代のNYを代表するナイト・クラブであったDanceteriaのメインDJ、マーク・カミンズ。一棟のビルをクラブに改造し、常に各階ごとにコンセプトの異なる多目的なアート・イヴェントを開催して人気を博していたDanceteriaは、いち早く70年代のディスコ・ムーヴメントから脱却し、パンクやニュー・ウェイヴのエッセンスを取り入れた新しいスタイルのダンス・ミュージックやストリート・カルチャーを発信し提示していたナイト・クラブであった。また、カミンズは無名な歌手志望の女の子であったマドンナの才能を誰よりも早く見いだし、彼女の82年のデビュー・シングル“Everybody”の制作を手がけていたりもする。Factoryにおいてクアンド・クアンゴのプロデュースを全面的に担当したのを筆頭に、デイヴィッド・バーンからカレン・フィンレイ、シニード・オコナーにいたるまで、カミンズは80年代を通じてメイジャー/マイナーを問わずに夥しい数にのぼるプロデュース作品やリミックスを残した。この“Love Glove”のミックスでも、ドッシリとヘヴィなキック・ドラムや存在感のあるベースライン、的確にツボにハマっているヴォーカルの断片など細かなフレーズにまでこらされたダブやエフェクトの音処理などに、流石と思わせるポイントは多々存在する。特にBugged Dub Mixは、SMの世界を生々しく表現したグレイトなダブ・リミックスといえるだろう。
 はっきり言ってしまうと、この“Love Glove”は楽曲自体の出来はあまり大したことはない。基本的にノリノリの歌物ではないし、万人向けのポップさも微塵もない。だが、この一枚に結集した、ちょっと奇跡的なタレントの取り合わせに、やはり何か特別なものを感じてしまうのも確かなのである。その豪勢な寄せ鍋のような取り合わせは、様々なスタイルの音楽の坩堝であるNYを体現しているかのようだ。その街角では、ダンスとパンクが普通に出会い交錯し混じりあう。楽曲のテーマがSMという珍奇なものであるという点も、そのスペシャルさに拍車をかけているような気もする。ヒューマン・タッチの“Love Glove”からは、どこか80年代のNYのダウンタウンの街角に漂っていた猥雑な匂いが感じ取れるのだ。まあ、いずれにせよ、これはあまり健全な青少年向けの盤ではないのかも知れない。

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