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zoom RSS Junkie Sartre & Hexaquart: Ignorance

<<   作成日時 : 2007/12/12 21:41   >>

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Junkie Sartre & Hexaquart: Ignorance
Force Tracks FT19

画像 00年にForce Tracksより発表された、ジャンキー・サルトルとヘックスアクアートの連名によるシングル。ジャンキー・サルトルは、デニス・ケンジントンの変名であり、彼はこの名義以外にもリチャード・デイヴィスやポール・デイヴィスといった名前を使い分けてKitty-Yoなどから作品を発表していたりする。ヘックスアクアートは、耽美派ロックとアンビエントとエレクトロニカを合体させた唯一無二な作風で大ブレイクする以前、まだ無名だった時代のウルリッヒ・シュナウスが、ドラムン・ベースやテクノなど色々と作り散らかしていた際に使用していた変名のうちのひとつ。このチョットどこに接点があるのか判然としない2人が、何の因果か一枚のレコードに一緒に収まっている。しかし、実際には90年代の最末期に、この両者には意外なところで微かな接点が存在していた。ケンジントンとシュナウスは、ともにBasedaddyというレーベルからブレイクビーツ〜ドラムン・ベース系のアルバム作品をリリースしていたのである。シュナウスはエセリアル77名義での『Landscapes』、ケンジントンはポール・デイヴィス名義での『Stranger In The City』を、同じ99年にBasedaddyより発表している。ただし、この時点では両者のどちらかが相手の作品に参加したりコラボレーションを行ったりという事態は起こっていない。だが、そんなドラムン・ベース畑の片隅で微かな接点のあった両者が、当時の時代の最先端を走っていたクリック〜ミニマル・ハウス系の動きの中心的レーベル、Force Tracksで共演を果たしているというのは、なかなかに興味深い事象といえよう。ジャンキー・サルトルもヘックスアクアートも、Force Tracksにはこのシングルのみしか足跡を残していない。両者ともにForce Tracksにおいては単独で作品をリリースする機会には恵まれなかったのである。
 本盤には4曲が収録されているが、実際にジャンキー・サルトルとヘックスアクアートがコラボレーションを行った楽曲は、A面1曲目の“Ignorance”のみである。残りの3曲は、ヘックスアクアート(シュナウス)のソロでの作品となっている。そういう意味では、これは連名シングルというよりは、シュナウスのシングルに1曲だけケンジントンがお邪魔させてもらったという形のような気がしないでもない。両者の名義を並記する作品ということであれば、シングルの全曲でコラボレーションを行うとか、両者のオリジナル楽曲を各面でリミックスしあうなどといったタイプのものが普通であるはず。しかし、ここではジャンキー・サルトルは4曲中の1曲のみに絡んだだけ。それにもかかわらず、並記された名義の並び順ではヘックスアクアートよりも何故か先にきているのである。実に摩訶不思議な一枚だ。
 A面1曲目“Ignorance”は、かなり素晴らしい出来映えのミニマル・テック・ハウスである。疾走感のあるシンプルなハウス・トラックと、絹のように柔らかなフレーズが折り重なる浮遊感のあるウワモノ、重く這いずるベースライン、ピプノティックに反復を繰り返す声サンプルの絶妙な抜き差し。全ての音要素が、これ以上ないくらいにバランスよく配合されている。結構ディープな名曲である。残りのヘックスアクアートによる3曲は、いずれもミニマル系のトラック。A面2曲目“Leponx”とB面2曲目“Phragmadia”は、ペチペチ/カチカチ系のパーカッシヴなサウンドが特徴の、ほとんど大きな展開は存在しない楽曲となっている。おそらく、この2曲はDJツールとしては末永く使えるものに仕上がっているのではなかろうか。B面1曲目“Prozac”だけは、ややエクペリメンタル色の強いミニマル作品。デトロイト・テクノの様式を、ビート感が薄めの空間的広がりのあるアンビエンスで調理してみたようなサウンド、といったところだろうか。後にシュナウスがウルリッヒ・シュナウス名義で展開してしてゆく幽玄なる音のスタイルの萌芽をここに聴き取ることができるような気もする。
 Force Tracksからの何とも摩訶不思議な一枚。全く名前の浸透していない若手プロデューサーたち(おそらく両者ともに本作がジャンキー・サルトルとヘックスアクアートという名義を使って発表した初の作品であるはず)による、なかなかに地味なミニマル作品。当時、物凄い勢いでシングルをリリースしまくっていたForce Tracksからのおびただしい量の作品群の中にあっては、本盤のような取っ掛かりに乏しいシングルがズルズルと埋もれていってしまったとしても決して不思議ではない。というか、実際に完全に埋もれてしまったのである。結果的に彼らにForce Tracksから2作目の制作の依頼の声が掛かることはなかったようであるから。
 現在はIndependienteとDominoに在籍し、着実にアーティストとしてのキャリアを積み重ね、もはや大物ぶりすら発揮しはじめているウルリッヒ・シュナウス。それに比べて、デニス・ケンジントンはいまだに地味なままだ。たぶん、その辺の行き方の違いというのは本当に紙一重の差なのだろうけれど…。世間とは実にシヴィアなものである。

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