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<<   作成日時 : 2007/12/30 21:33   >>

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AB Project: Get Real
Black Out BLACKOUT 12003

画像 80年代の終わりから90年代の頭にかけて、ウェストバムがプロデュースを手がけたヒップ・ハウス・ユニット、デスキー(Deskee)の“Dance, Dance”や“Let There Be House”などの大ヒット・シングルを次々と連発していたフランクフルトのレーベル、Black Outが、なぜか唐突に21世紀に入って復活しポロポロとリリースした数枚のシングルのうちの一枚。だがしかし、03年に発表されたABプロジェクトの“Get Real”は、ウェストバム絡みの作品ではないし、かつてのBlack Outに縁のある人たちの作品でもない。この、いかにも使い捨てっぽい匂いのする、深い意味は全く込められていなさそうな、ABプロジェクトなんていう名義で作品をリリースしているのは、フランク・エルティングとボリス・ポロンスキーのコンビである。たぶん、即座にこの両者の名前にピンとくる人は、そう多くはないだろう。でも、このコンビ、実はなかなかに面白い取り合わせの人々なのである。エルティングは、ステファン・リーブとのコンビでMRIやエルティング・リーブ、ブレイク・C.などの名義をコロコロと使い回し、Force Tracksや自ら主宰するフランクフルトのレーベル、Konvex | Konkavから数多くの作品をリリースし、現在はベルリンを拠点にResopal Schallwareのレーベル運営などにも携わっているミニマル・ダブ/テック・ハウス系のヴェテラン・プロデューサー。ポロンスキーは、旧ソ連出身でクラシックや現代音楽にも深く通じたエクスペリメンタル系エレクトロニック・ミュージックのアーティストである。また、カンのドラマーであったヤキ・リーベツァイトのプロジェクト、クラブ・オフ・カオスのメンバーとしても活動するなど、非常に真っ当でお堅い系の活動を行う傍らで、時々お遊び半分みたいな感じでアシッド・ハウスやトランスのトラック制作などにも手を出したりするチョット変わった横顔をもつ興味深い人物でもある。そんな、これ以前には、おそらくほとんどと言ってよいほど接点はなかったであろう(と思われる)両者が、何らかのルートを通じて出会い、結成してしまったユニットが、このABプロジェクトなのである。
 エルティングとポロンスキーがスタジオで共同プロデュースした“Get Real”は、88年にIsland傘下の4th & Broadwayより発表された、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのポール・ラザフォードによるFGTH活動停止後のファースト・ソロ・シングル曲のカヴァーである。オリジナルのラザフォード版“Get Real”は、元ABCのマーティン・フライとマーク・ホワイトがプロデュースを手がけた、カラフルなシンセ・ポップのサウンドの血を色濃く受け継ぐ歌物アシッド・ハウスであった。まだまだ街角のそこここにスマイル・マークが氾濫していた時代であったのだろう、12インチ・シングルに収録されていたメインのクラブ・ミックスには、そのものズバリなHappy House Mixという名称がつけられていた。冒頭から実に冷静なロボット声で「ハッピーですか?ハイになってますか?」という問いかけが繰り返され、いかにも多くの人々がハイになり浮き足だっていた時代の雰囲気を感じさせてくれる音が、やや軽薄にスカチャカと繰り広げられてゆく。思いきり斜に構えたラザフォードのヴォーカルは、目一杯にキザを気取ってクサいダンディズムからくるシリアスさを醸し出してはいるが、サビでの完璧にディーヴァなファルセットでの絶唱とムニュムニュムニュムニュとブレイク風のビートに絡みつくアシッドの享楽的なサウンドからくる相乗効果は、十二分に80年代後半のハッピー・ハウス的条件を満たすものであるといえる。そんな“Get Real”なる楽曲を、エルティングとポロンスキーのコンビは、かなり原曲に忠実にカヴァーしてみせる。オリジナル版の発表から15年の歳月がすぎ、もう誰も能天気にハッピー・ハウスで浮かれている時代ではないのだが、だからこそあえての“Get Real”なのであろうか。冷徹にしてヒリヒリとした感触の現実を喉元に突きつけられている、危うく脆い21世紀の毎日を綱渡りで生きる人々のリアルな日常に向けられた、パラドックスとしての“Get Real”ということか。冒頭からクニュクニュというアシッド・サウンドがヒタヒタと迫りくる気配が漂う中を、太くドッシリとした四つ打ちビートが反復され、ロボット声で「ハッピーですか?ハイになってますか?」という問いかけがなされる。ここでヴォーカルを担当しているのは、アラン・バーンズというシンガー。これが、非常に驚くべきことにラザフォードに負けず劣らずな、かなりのキザ声の持ち主であり、サビでのファルセット歌唱も難なく堂々とこなしてしまう。この妙に歌えるシンガーを起用した時点で、エルティングとポロンスキーの勝利は、ほぼ確定したといっても間違いではないだろう。バーンズの歌が、凄くいいのだ。ラザフォードの原曲にあったチャラさは完全に影をひそめており、本物の“Get Real”をバーンズがココで初めて歌いきったのではなかろうか?と思わず感じ入ってしまうほどの高い完成度を誇る仕上がりとなっているのだ。中盤以降はムニュムニュのアシッド音も全開となり、重くストレートに打ちつけられるオールドスクールなシカゴ・ハウスを模した四つ打ちトラックを根幹にすえたサウンドにもグッと厚みが増してゆく。名曲に名唱あり。ABプロジェクトの“Get Real”は、かなり素晴らしい。B面には、ABプロジェクトによるオリジナル曲“You Need Me”も収録されている。こちらにもバーンズのヴォーカルはフィーチュアされており、アシッド・ハウスとファンキー・ディスコとシンセ・ポップを混ぜ合わせて90年前後のザックリとしたラフなハウスのテイストでまとめあげたような楽曲となっている。狙おうとした路線そのものは面白いと思うのだが、どうもキッチリとそれが結果として前面に表れてきていないというか…。ずば抜けてインパクトの強い“Get Real”の出来と比較してしまうと、やや中途半端で凡庸な楽曲と感じてしまうのは、まあいたしかたないところなのであろうか…。
 03年の本盤以降にエルティングとポロンスキーがABプロジェクトの名義を使って作品を発表した形跡は全くない。おそらく、たった一度きりのコラボレーションであったのであろう。グレイトな03年版“Get Real”のみを残して、ABプロジェクトは伝説の存在になるつもりなのであろうか。しかし、伝説として語り継がれるほど本盤の存在が多くの人に知られているとは到底思えない。きっと、幻の名盤にも伝説の一枚にもならずにABプロジェクトの03年版“Get Real”は、エレクトリック・ダンス・ミュージックの歴史の奥底に埋没してゆくのであろう。また、ここで素晴らしい歌声を披露しているバーンズも、本盤以外に特に目立った活動はしていないようである。目立たぬところでヒッソリと活動をしているのかも知れないが、そんなような情報は杳として聞こえてこない。もしかすると、このABプロジェクトとは、アラン・バーンズ(Alan Barnes)の名前の頭文字をとったユニットであったのではないか、という気も微かにしてきた。これはバーンズが中心となったプロジェクトであり、バーンズが自らのヴォーカルを披露する楽曲のプロデューサー・ティームとしてエルティングとポロンスキーのコンビをリクルートしたということだったのかも知れない。となると、バーンズが、また新たに自らの歌唱のためのトラックを制作してくれるプロデューサーを連れてきて、新生ABプロジェクトの活動を開始する可能性も決してないとは言い切れない。再びエルティングとポロンスキーのコンビが起用される可能性もあるだろうか。まあいずれにせよ、バーンズのABプロジェクトが奇跡の復活を果たしたとしても、然して大きな話題にはならないと思われるけれど。

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