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<<   作成日時 : 2007/12/24 21:37   >>

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Pulse 8: Radio Morocco
4th & B'way 440 504-0

画像 Island傘下の4th & B'wayより89年にリリースされた、パルス8のシングル。パルス8は、80年代初頭よりRed Flameにおいてシンセ・ポップ界の歌姫、アン・クラークのプロデューサーとして活躍をしていたデイヴィッド・ハーロウ(自らの作品もリリースしアーティスト活動も並行して行っていた)のプロジェクトである。この“Radio Morocco”は、元々はUKのNationより89年に発表されたオムニバス・アルバム『Fuse - World Dance Music』に収録されていた楽曲であった。『Fuse - World Dance Music』は、その名の通りワールド・ミュージックとテクノやハウスなどのダンス・ミュージック、つまり伝統と先鋭のフューズ(融合)を果敢に試みたアルバムであり、パルス8以外にもハーロウの純然たるソロ曲“Yassassin”や、スクィーズやイングランズ・グローリーのベーシストであったハリー・カクーリとタブラ奏者のタルヴィン・シン(マハトマ・T)が絡んだ複数のユニット、そしてナターシャ・アトラスをヴォーカルに迎えたロカなどによるエキゾチックな作品が8曲ほど収められている。テクノやハウスなどの様々な音素材のミキシングによって成立するエレクトリック・ダンス・ミュージックは、あらゆる音楽要素をその中に取り込んで究極のハイブリッド・サウンドに発展させることが可能だ、という概念に突き動かされて、無邪気に無茶なチャレンジが試みられていた時代の最も初期の産物が、この『Fuse - World Dance Music』であった、といえるのではなかろうか。そして、このオムニバス盤から真っ先にシングルとしてリリースされたのが、パルス8の“Radio Morocco”であり、そのNation盤を速攻でライセンスしてUS盤化したのが4th & B'wayであった。“Radio Morocco”のNation版と4th & B'way版の内容は、基本的に全く同じものとなっている。
 そんな4th & B'way版の“Radio Morocco”において、オリジナルのNation版と最も大きく異なっている部分は、アーティスト名の表記の仕方である。Nation版では単純にパルス8のみであったのが、4th & B'way版ではパルス8と記されている下段に御丁寧にもフィーチュアリング・ジャー・ウーブル&ジャスティン・アダムスという追記がなされているのである。この点からは、4th & B'wayが“Radio Morocco”のライセンス契約に飛びついたという事象の、その裏側には80年代初頭から“How Much Are They?”や“Snake Charmer”などIslandからの複数の作品のリリースが存在する、浅からぬエニシで繋がっているウーブルの存在があった、ということがウッスラと見えてくる。このハーロウ、ウーブル、アダムスのトリオは、ちょうど80年代終わり頃からインヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートの中心メンバーとしても活動を共にするようになっていた。90年にBoy's Ownよりリリースされたジャー・ウーブルズ・インヴェイダーズ・オブ・ザ・ハート名義でのシングル“Bomba”では、ゲスト・ヴォーカルにナターシャ・アトラスが起用されていたりして、微妙に『Fuse - World Dance Music』からの流れとシンクロしているようで興味深い。この“Radio Morocco”で、A面のメイン・ミックスを手がけているのはOn-U Soundのエイドリアン・シャーウッド。80年代中期から度々ベーシストとしてOn-Uの作品に関わっているウーブルだけに、この繋がりに関しても納得できるものがある。ウーブルの口利きがあったのであろうか、ハーロウは、90年のマーク・スチュワートの『Metatron』やリー・ペリーの『From The Secret Laboratory』などシャーウッドがプロデュースを担当したアルバムの制作にチョコチョコと絡んでいたりもする。また、シャーウッドが関わったデペッシュ・モード“Enjoy The Silence”の大作リミックスにもハーロウはアシスタント・エンジニアとして参加している。これは、大変な重用ぶりである。それだけこのハーロウという男が、デキる人物であったのだろう。パルス8においても、一見すると実際に制作の現場で中心となっていたのは芸歴の長いウーブルなのではないかという気もするのだが、インヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートでの活動とは異なり、ここでの中心は、やはりシャーウッドも認めた男、ハーロウなのである。ここでのウーブルは、レーベルに表記されている通りベーシストとしてフィーチュアされているゲスト・ミュージシャンでしかないのだ。プロデューサーは、あくまでもハーロウ。そして、肝心カナメのその音の方はというと、ややインダストリアル・テイストのアシッディなハウス・ビートに、モロッコの民族音楽の伝統的な楽器の音やコブシのきいたヴォーカルを断片的にサンプリングして素材として付けあわせてゆく、高尚な理念に基づいたフューズ/融合というよりも無理矢理に横並びにしてアレコレ配置してみただけのような仕上がり。ハーロウによるヤケに明快な中近東風のキーボードのフレーズも、変に白々しいのだが、この雑然とした音の世界には妙にマッチしていたりする。シャーウッドのリミックスは、得意のダブ処理よりもエレクトリック・ビートや飛び交う様々なノイズ群のコマメなエディット作業に力点を置き、似非エスノ趣味のサウンドにさらにイカレた味わいをトッピングしてみせた作風。終盤での、かなりのクレイジーさを伴いながらジワジワと畳み掛けてくる展開には、なかなかに聴き応えがある。B面1曲目は、元キリング・ジョークのユースによるダブ・リミックス。オリジナルのNation版のシングルではYouth Dub Mixと表記されていたが、ここではただのYouth Mix。ダブとはいっても、ビートが少しだけハウス寄りな四つ打ちのエスノ・トライバル風になっている以外に特に大きな変更点は見あたらない、ような。B面2曲目は、ダブル・ディーによるテクノ・リミックス。オリジナルのNation版のシングルではDouble Dee Techno Mixと表記されていたが、ここではD.D. Mixと書かれているのみで、もはや誰がやっているのかさえも判然としない状態となっている。このダブル・ディーとは、90年に熱血ピアノ・ハウスの名曲“Found Love”を大ヒットさせたイタリアのプロデューサー・ティームと同一人物であるらしいのだが、ここではイタロ・ハウスではなくテクノなミックスを担当している。しかし、テクノとはいっても、より四つ打ちなエレクトロニック・ビートを重々しいものに差し替えて、頻繁にドラムやウネるウーブルのベースの抜き差しを繰り返しながら強引に永遠に続くようなグルーヴ感を醸し出してゆく、どちらかというとテクノではなくボディ・ミュージックやニュー・ビートに近い雰囲気。元々が少しインダストリアルな臭いのするビートであったので、このニュー・ビート風味の添付は決して食い合わせが悪い感じではない。だが、これが本当に“Found Love”のダブル・ディーによるリミックスであるのかは、少々ニワカには信じ難い気もしてしまうのである。
 ウーブルを中心とするインヴェイダーズ・オブ・ザ・ハートでの活動や、シャーウッド絡みのOn-U関連作への参加を足がかりに、アンドリュー・ウェザオール率いるSabres Of Paradiseでのテクノヴァ名義でのリリースなどを始めとして、90年代を通じてエレクトロ〜ブレイクス〜プログレッシヴ・ハウス〜トランス〜テクノ〜ドラムン・ベース〜ダブと相当に手広く手当り次第にエレクトリック・ダンス・ミュージックのプロダクションを手がけまくったハーロウ。特に、94年にWarner傘下のMagnetより発表され世界的な超ロング・ヒットとなった元エレクトライブ101のビリー・レイ・マーティンの名曲“Your Loving Arms”が、実はマーティンとハーロウの共作曲(プロデュースは、デイヴ・ボールとリチャード・ノリスのグリッド)であったということは、結構知られざる事実なのではなかろうか。もしかすると、この楽曲こそがハーロウが手がけた最も大きなセールスを記録した仕事であったかも知れない…。近年のハーロウは、ジェイムズ・ハードウェイ名義や新ユニットのLVXコレクティヴにおいて、よりオーセンティックなジャズやレゲエ・ダブなどのルーツ・ミュージックに焦点を絞った音楽活動を地道に行っている。

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