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<<   作成日時 : 2007/12/20 21:07   >>

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Ornamental: Crystal Nights
One Little Indian 18TP12

画像 88年にオーナメンタルがOne Little Indianよりリリースしたシングル。タイトルは、“Crystal Nights”。是が非でもクリスマス・シーズンに聴きたい一枚である。でも、これは別にバリバリのクリスマス・ソングではない。ただ何となく、冬の凍えそうなくらいに寒い夜が、もしかすると似合いそうかな?という感じなだけなのだが…。基本的に、ただそれだけの理由から、12月の終わり頃がピッタリな時期であろうと、独りよがりに思っている訳なのである。
 このオーナメンタルは、本盤以前にもシングルを一枚だけ発表している。その一枚とは、87年にアイスランドのインディ・レーベル、Grammよりリリースされた“No Pain”という作品である。Grammとは、当時はシュガーキューブスのメンバーであった元クークル(Kukl)のアイナー・オルンが、オスムンドゥール・ヨンソンと共同でレイキャヴィックにおいて設立したレーベル。この“No Pain”発表時点でのオーナメンタルの構成員は、プロデューサーのデイヴ・ボールとメル・ジェファーソンに、ヴォーカルのローズ・マクドウォールという布陣であった。そして、このシングルには、アイナーがゲスト・ヴォーカルとトランペットの演奏で参加していたりもする。デイヴ・ボールは、元々はマーク・アーモンドとのソフト・セルのメンバーとして80年代初頭に大活躍し、その後はヴァージン・プルーンズのプロデュースやサイキックTVへの参加を経て、90年代にはリチャード・ノリスとコンビを組みグリッドとしてダンス系のヒット作を次々と飛ばし、そして最終的にはカイリー・ミノーグのプロデューサーという位置にまで辿り着く、非常に息が長く実にしぶとく第一線で踏ん張り続けている人物。かつては、常にアチコチに顔を出しているボールの仕事ぶりの節操のなさを指摘して、少々口悪く揶揄する声もあったが、やはり厳しい業界の表舞台で生き残ってゆくには、そういったマメさは絶対に必要なものなのであろう。一方、メル・ジェファーソンは、パレス・シャンブルグやホルガー・ヒラーのソロ、クラス、クークル、ジャー・ウーブル、アンド・オールソー・ザ・トゥリーズなどの多くのアーティストの作品のプロデュースやミックス・エンジニアを地味にコツコツと務めあげてきた腕利きの裏方スタジオ職人。Crassでのクークル作品のエンジニアを担当して以来、アイスランド人脈との親交が生まれたのか、ジェファーソンはシュガーキューブスやビヨークの作品でも時々レコーディング・エンジニアとして起用されていたりする。ローズ・マクドウォールは、ポルカ・ドットなスコティッシュ・エレクトロニック・ポップで一世を風靡したストロベリー・スウィッチブレイドの元メンバーであり、80年代中期以降はサイキックTVやカレント93の周辺の夥しい数にのぼるグループやユニットの作品でヴォーカルやコーラスを担当してきた地下暗黒音楽シーンの頂点に君臨する永遠の歌姫。そんな妙に豪華で多彩な顔ぶれが顔を揃えた(UKでのライヴの際はクラスやサイキックTVとの共演が多かったというクークルのアイナー・オルンが媒介となって、ジェファーソンとボールを引き合わせ、そこにPTV周辺でフラフラしていたマクドウォールが自然な流れで合流するという形で、このユニットは始動したのではなかろうか)オーナメンタルであるが、この最初の3人のメンバーで制作された作品は、最初のシングル“No Pain”の一枚のみであった。
 “Crystal Nights”を発表した時点でのオーナメンタルは、87年の第一期オーナメンタルから少しだけ構成員をチェンジした、新生オーナメンタルとなっている。また、シングルのリリース元も、アイスランドのGrammからUKのOne Little Indianへと、ちゃっかり移り変わっていたりする。これは、おそらくアイナーの口利きと後押しによって、シュガーキューブスが所属していたOne Little Indianの片隅に、急遽オーナメンタルのための居場所が作られたということなのではなかろうか。88年は、ちょうどシュガーキューブスが“Birthday”や“Deus”を発表し、未曾有の大ブレイクを果たした年である。大ヒット曲の連発でガッポリとOne Little Indianを儲けさせていたのだから、アイスランドでアイナーが運営していたGramm所属のグループ、オーナメンタルを、サックリとOne Little Indianに抱えさせてしまうぐらいのことは、実は案外簡単なことだったのかも知れない。もしかすると、One Little Indian側としてもシュガーキューブス周辺のグループやユニットで二匹目のドジョウを狙おうという魂胆を抱きながら、積極的にGrammのオーナメンタルを引っ張り込んだ可能性も、なきにしもあらずなのではないかと思われる。だが、オーナメンタルが2作目の“Crystal Nights”の制作を開始する以前に、常に多忙で移り気であったデイヴ・ボールは、すでにグループを脱退してしまっていたのである。そして、実質的なユニットの中心人物であったボールの穴を埋める形で、新たにメル・ジェファーソンの共同プロデューサーとしてグループに加入したのが、アイナー・オルンの実の兄であるヒルマー・オルン・ヒルマッソンであった。このヒルマー・オルンもまた80年代中期からサイキックTVやカレント93の作品やその周辺ユニットの作品に度々参加していた地下の暗黒音楽シーンの住人であり、おそらくマクドウォールやジェファーソンとは旧知の間柄であったのではないかと思われる。しかしまあ、ヴァーサタイルなポップ感覚を持ち合わせていたボール在籍時よりも、この新生オーナメンタルは、さらに濃いメンツへと生まれ変わってしまったような気がしないでもない。マクドウォールとヒルマー・オルンが顔を揃えている時点で、もはやそれはサイキックTVやカレント93に深く関連する別動ユニットでしかないというか、あまりインディ・ポップ路線のド真ん中をゆくOne Little Indianには似つかわしくはないキナ臭い匂いがムンムンと漂ってきてしまっているようでもあるのだが…。しかし、郷に入れば郷に従うのが人の道。新生オーナメンタルは、ムンムンと漂うアングラの匂いをサラッとスパッと振り払って、地下の暗黒音楽とはかけ離れた、究極のミラクル・ポップ・ソングを何食わぬ顔でブチかましてくれているのである。
 A面に収録されている“Crystal Nights”のGratuitously Extended & Really Silly Mixは、のどかな小鳥たちの鳴き声で幕を開ける。そこに飛び込んでくる牧歌的な音色の笛が楽しげな旋律を奏でるのを合図に、60年代から延々と受け継がれるポップスの王道をゆく明快なドラムのビートが鮮烈に弾け、それを下からガッチリとヒルマー・オルンの堅実な太いベースが支えてゆく。マクドウォールのヴォーカルも、どこかストロベリー・スウィッチブレイド時代のそれを思わせる、実にポップでノリノリでイキイキとしたものとなっているのである。歌詞の内容も、「昼も夜も私はいつもいつもアナタのことを想っています」といったポップスの定番中の定番である永久普遍の可愛いラヴ・ソング。地下の暗黒音楽シーンの住人たちが、ここでは徹頭徹尾おそろしいまでにウルトラ・ポップな楽曲制作に取り組んでいる。陽気なドラムをメインにしたプチ・ブレイク部ではサビのヴォーカルの断片がソコに重なりダブ〜エディット的なお遊びに興じたり、突然キュッと音が途切れて曲が終わったように見せかけて再び冒頭ののどかな小鳥の鳴き声と牧歌的な笛に戻ったり、ビート部分をスッポリと抜いてマクドウォールの舌足らずな歌とシャラシャラとかき鳴らされるアコースティック・ギターだけのバートがあったりと、あれやこれやと手を尽くして“Crystal Nights”にポップな装飾を施しまくる。それは、まるで往年のストロベリー・スウィッチブレイドが12インチ・シングルのエクステンデッド・ヴァージョンで試みていた、様々なポップな仕掛けを、意識的に踏襲しているかのようでもある。そんな装飾や仕掛けが張り巡らされ、ピアノやホーンやストリングスも効果的に色を添え、ポップスの王道をズバッと貫き通す“Crystal Nights”は、幾つもの劇的な展開を経て異様な高揚感とともに印象的なサビが繰り返される大団円へといたる。しかし、ここまで真っすぐにポップだと、逆にマクドウォールが歌う歌詞のどこかにオカルト的な符号でも隠されているのではないかと変な勘繰りのひとつも入れたくなってきてしまうのだが…。まあ、ドコにも特に裏はないようだ。B面には、“Crystal Nights”のSeven Inches VersionとインストのSingalongahighchaperal Mixが収録されている。そして、この7インチ版とカラオケ版の2つの“Crystal Nights”の間に挟まれるようにして、ヒッソリと“Yonilingaphonics”という楽曲が存在している。この“Yonilingaphonics”には、元クークルでシュガーキューブスのメンバーでもあるシグトリギュール・バルドゥールソンがドラムで参加しており、80年代初頭のスコットランドのポエムス時代にはローズ・マクドウォールとバンド内結婚をしていた(後に離婚)、サイキックTVやコイルの周辺での活躍で知られるドリュー・マクドウォールがキーボードで参加している。そうした親しい身内の人々をゲストとして巻き込んで、オーナメンタルはさらに深く濃く混沌としたメンツのユニットと化している。この楽曲は、かなりハードでストレートなビートを軸としたインスト・ダンス・ナンバーであり、ここではマクドウォールのストロベリー・スウィッチブレイド調のポップなヴォーカルは一切顔を出さない。その代わりに大々的にフィーチュアされているのは、グンナ・シッカ嬢のアイスランディッシュなヒンヤリとした語りである。ダンスを強要する性急でパワフルなマシーナリー・ビートに、ジワジワと迫りくる地を這うベースとストリングス、瑞々しい電子音が煌めいて飛び交い、遥か上空から微かに降り注いでくるのは何かが憑依しているかのようなマクドウォールの浮世離れしたコーラス。そんな強烈でハチャメチャなダンス・サウンドとは対照的に、語り手のグンナ・シッカは、凄まじくクールに英語の例文を読み上げ、その直後にその例文のアイスランド語訳を読み上げる、完全に語学講座な世界を淡々と繰り広げてみせる。やはり表の“Crystal Nights”は、獣たちが羊の皮を被っていただけの仮の姿であったのだろうか。野放しにしておくと、地下の暗黒音楽シーンの住人たちは、途端に無闇なまでに実験的な方向へと向かってしまうようだ。そのあからさまな結果が、この“Yonilingaphonics”なのである。ヒンドゥーの世界では、ヨーニとは女陰の意であり、リンガは男根を意味する。ヨーニとリンガの像はシヴァ神の化身とされ、常に一対となり一体となった形で存在する。一体化したヨーニとリンガの音。その神聖なるシヴァの化身を、混沌としたダンス・サウンドと語学講座の結合という形で表現してみたということか。いやはや、何とも秘術的にして実験的な楽曲である。
 ヨーニとリンガを題材として扱った訳の分からぬダンス・トラックが、シヴァ神の逆鱗に触れてしまったのか、オーナメンタルは88年の“Crystal Nights”以降に一枚たりとも作品をリリースしてはいない。One Little Indianとしても暗黒音楽シーンの歌姫であるマクドウォールが歌うポップ・ソングに、それほど大した興味を抱くことはなかったのか、オーナメンタルの活動に対して激しく固執することも特にはなかった。やはり基本的な部分で制作陣のアングラ臭がキツすぎたのであろう。ヒルマー・オルンにしても、マクドウォールにしても。その後、90年代に入るとマクドウォールは新しい旦那のロバート・リーと夫婦ユニット、ソロウ(Sorrow)を結成し活動を開始する。しかし、02年にリーとマクドウォールは離婚をし、2枚のアルバムを残してソロウの活動にも事実上の終止符が打たれた。歌姫はバツ2(公になっているもののみをカウントして)。どうやら、歌姫は、あまり結婚生活には向いていないタイプのようである。もしくは、いまだにシヴァ神の怒りがおさまっていないのであろうか。もうすでに40代後半に突入しているマクドウォールが、もう一花咲かせることは果たして可能なのであろうか。是非とも、まだまだ現役でバリバリと頑張っていただきたいところである。

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